各姿勢の特徴と分析の視点【立位】

立位姿勢

1)力学的特徴
   支持基底面が狭く、重心の位置が高いため他の姿勢より不安定であるが、移動には有利である。


   ベースを広くするほど左右への安定性は高まるが、移動には不利になる。


2)構造学的特徴
   立位姿勢は、両下肢で支えられた骨盤の上に体幹が連結している。

 

   下肢は、大腿・下腿・足部で構成され、システムとして支持する関係(荷重連鎖)にある。

 

   直立位で膝関節は骨性支持となり大きな筋活動は要求されない。

 

   骨盤は両股関節で支持されているため前後に傾きやすいが、股関節の強靭な靭帯と筋活動で制御される。

 

   両足支持では、前後に比較して側方への安定性は高いが、片足支持では側方に不安定になる。

 

   側方の安定性に関与する骨盤の運動制御は筋活動が中心で、膝や足部では靭帯の支持が重要となる。

 

   脊柱アライメントは、足部に対する骨盤の位置と傾斜によって決定される。


3)運動学的特徴
   理想的な立位アライメントでは、重心線は次のランドマークを通る。

 

   左右方向では、 ①後頭隆起②椎骨練突起③殿裂④両膝関節内側の中心⑤両内果の中心であり、前後方向では、①乳様突起(耳垂のやや後方)②肩峰③大転子④膝関節前方⑤外果前方である。

 

   このアライメントを保持する胸椎の伸展活動と骨盤傾斜を制御する筋活動は、座位姿勢と基本的には変わらない。

 

   骨盤傾斜と股関節の受動的関係は、側方傾斜が内転・外転に、水平回旋が内旋・外旋に変化する。

 


   直立位で重心線は下肢の各関節の近位部を通過するため、支持のために大きな筋活動は必要ない。


   しかし、体幹のアライメントが崩れると、重心が移動して受動的な運動負荷が変化する。

 

   これに伴い下肢のアライメントも変化する。

 

   また、長時間の立位保持では、筋活動から骨や筋腱作用に依存する支持に移行して、外乱に対処することを困難にする。


   足部は支持基底面に接する唯一の身体部位で、その働きは重要である。

 

   とりわけ床反力を利用して重心の前方移動を制動する作用が大きい。

 

   後方移動では踵骨支持となり、床反力を能動的に制御できないため不安定になる。

 

   また、側方移動では、足部の回内と回外による制御が必要であるが、これには股関節の回旋運動との相互作用(図12)が欠かせない。

 

   足部の支持性低下は、前方制動を困難にするため重心は後方へ変位する。


4)姿勢観察のボイントと分析の進め方
   基準となる理想的アライメントから各ランドマークの変位を把握するのが一般的であるが、重心線を想定することが容易ではない。

 

   足部の反応は、重心の位置を大まかに把握する手がかりとなる。

 

   足指が届曲位にあれば前方へ、伸展活動が観察されれば後方に変位していることを示唆する。


   骨盤は脊柱アライメントを決定する重要な身体部位であるため、その傾斜と重心線からの変位を確認する。

 

   骨盤傾斜は両上前腸骨練と恥骨を結んだ面でとらえる (垂直位がニュートラル)。

 

 

   分析で重要なことは、 アライメントが示す運動学的な意味を解釈することである。

 

   ケンダル(Kendall)らは、姿勢のタイプを4型に分類して、それぞれの姿勢に特有な筋の不均衡が存在することを著した(図13)"。

 

   分析では、 姿勢タイプに分類することが目的ではなく、このような考え方で各身体体節の運動機能を確認することが重要である。