各姿勢の特徴と分析の視点【座位】

座位姿勢

1)力学的特徴
   足部と殿部に囲まれた広い支持基底面に対し、座面より突き出た体幹の重心が後方に偏倚しているため、座位は後方へ不安定な姿勢といえる。

 

   前方へは支持基底面が広く安定しているため、上肢のアクティビデティーに適している。


2)構造学的特徴
   支持基底面に接する骨盤は、坐骨の2点支持であるため左右方向へは安定しているが、その形状は丸みをおびているため前後へ回転しやすい。

 

   尾骨を含めた3点支持で安定する。

 

   骨盤の側方傾斜では、坐骨1点支持に移行したとき不安定になるが、股関節と大腿部での支持へ移行して安定する。

 


   脊柱の構造は、垂直抗力を高めるため頚椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯の3つのカーブを有する。


   座位では骨盤が後傾して、腰椎前弯は立位より小さくなっている(図11)4。

 

   胸椎は常に重力により屈曲する作用を受けている。

 

   脊柱起立筋の活動が低下すると脊柱は屈曲して、骨盤は後傾しやすい。


   これにより脊柱は3つのカーブを保つことが困難となり、アーチ型になる。


3)運動学的特徴
   骨盤の傾斜は姿勢アライメントと重心移動に直接的に関与する。

 

   これは、脊柱起立筋群・胸腰筋膜・腹筋群・腰方形筋・股関節周囲筋群によって制御される。

 

   脊柱アライメントの保持には、胸椎の伸展活動と骨盤傾斜を制御するこれらの協同的な活動が重要である。

 


   座位姿勢で体幹はテンタクル活動となり、下肢には重心の移動方向に応じた活動が求められる。


   後方への移動では下肢の重量で釣り合いを保つような制御が、前方への移動では下肢の支持機能を利用した制御が、 側方へはこれら両者の制御が求められる。

 


   骨盤傾斜は股関節との関係で構造的な制限を受けやすい。

 

   骨盤傾斜により股関節には受動的な運動が起こるからである。

 

   骨盤前傾では屈曲、側方傾斜では支持側の内旋、水平回旋では内転・外転が起こる。

 

   脊柱の運動方向は、頭部を重力方向へ移動して骨盤を傾斜する場合と、 骨盤の傾斜に合
わせて調節する場合(立ち直り反応)で逆転する。

 

4)姿勢観察のポイントと分析の進め方
   土台となる骨盤傾斜を観察することが重要である。

 

   脊柱アライメントは骨盤の傾斜と関連付けてとらえ、上下肢に余分な筋活動が起きていないか(パーキングファンクションになっているか)確認する。

 

   股関節の低緊張により支持性が低下すると、骨盤は低緊張側が低く後方に崩れやすくなる。


   骨盤傾斜により体幹の姿勢筋緊張も影響を受けるため、背筋群の左右差など筋活動状態を観察する。


   動的な筋緊張については、骨盤傾斜を誘導し、体幹の分節的な運動と下肢の反応を観察する。


   下肢の反応については、テンタクル活動と支持機能を要求するように重心を移動させながら進める。

 

   ダイナミックスタビリゼーションが保たれているかを判断するには、体幹の分節的な運動以外に、 頭部と上肢の自由度が保たれているかを確認する。