小児・人間発達

 

小児の先天性心疾患、Fallot (ファロー)四徵症とは、

①肺動脈狭窄(漏斗部の狹窄)、

心室中隔欠損

③右室肥大、

④大動脈騎乗(右方位)が合併した病態である。

成因は心臓の漏斗部中隔の右心室側への偏位であり、他の三病変はこれに随伴する。自然予後は不良で、手術による血行路再建が必要となる。
①前田員治, 他 : 内科学, 第3版, 標準理学療法学, 作業療法学(專門基礎分野), 医学書院, 2014, p 83. ②寺野彰. 他(編)シンプル内科学, 第2版, 南江堂, 2017, p192. 

 

Sharrard(シャラード) の分類は二分脊椎の麻痺レベルを6群に分類したもので、麻痺レベルから運動機能獲得の目標設定をする際に用いられる。

第Ⅰ群(胸髄レベル)
車椅子を使用している。
下肢を自分で動かすことはできない。

第Ⅱ群(L1〜2レベル)
車椅子と杖歩行を併用している。
股関節屈曲・内転、膝関節伸展が可能。

第Ⅲ群(L3〜4レベル)
長下肢装具または短下肢装具による杖歩行可能。股関節外転、足関節背屈が可能。

第Ⅳ群(L5レベル)
短下肢装具による自立歩行可能。
股関節伸展、足関節底屈が可能。

第Ⅴ群(S1〜2レベル)
ほとんど装具が不要で自立歩行可能。
足関節の安定性が低い。

第Ⅵ群(S3レベル)
ほどんど運動麻痺はなく、健常児とほぼ同様の歩行。

Hofferの分類(歩行機能分類)

CA(community ambulator)

独歩群:屋外、室内とも歩行可能で杖不要

杖歩行群:屋外、室内とも歩行可能で杖必要

HA(household ambulator)

杖歩行と車椅子を併用する

NFA(non fucntional ambulator)
訓練時のみ歩行可能で、そのほかは車椅子を使用する

NA(non ambulator)
移動時には車椅子を使用する

二分脊椎症は先天的に脊椎椎弓の癒合不全が生じ、神経管閉鎖障害を生じる。障害された脊髄レベルによって運動および感覚麻痺の範囲が異なる。

顕在性二分脊椎症(開放性)

症状は外側から容易に視認することができます。脊髄髄膜瘤と呼ばれることもあります。

潜在性二分脊椎症(脂肪腫

症状は外側から見て分かる症状はありません。脊髄神経に異常が発生している場合には、痛みや痺れなどが生じることがあります。

1. 7~8割が腰部ないしは腰仙部に発生する。

2. 開口部より髄膜が突出したものを髄膜瘤という。髄膜瘤の内部は脳を髄液で満たされているが、神経組織は含まれていない。       

memo 一方、脊髄の一部を囊胞内に含み(神経組織を含む)突出したものは脊髄髄膜瘤とよばれ、区別される。

4. 脊髓髄膜瘤では、母体の葉酸摂取不足妊娠前の母体の糖尿病てんかん薬の服用などがリスク因子として考えられている。

2. 脊髄髄膜瘤は顕在性二分有椎の一種である。Chiari奇形Ⅱ型を伴うことが多い。

memo Ⅰ型は、小脳扁桃の頸椎管内への嵌入で、脊髄空洞症などでみられやすい。

5. Arnold Chiari 奇形Ⅰ型とは、小脳扁桃や延髄が大後頭孔より脊柱管内に陥入した状態である。二分脊椎では神経管閉鎖障害により胎内では持続的に髄液が漏出し、そのために生じる頭蓋内と脊柱管内の圧較差がArnold Chiari 奇形の原因とされる。

5. 症状として主に、無呼吸発作、異常呼吸、嚥下障害、発語障害、脳神経麻痺などの脳幹機能異常がみられる。

1. 脊髄脂肪腫は潜在性二分脊推の一種である。乳児期には神経症状を認めないものの、成長に伴って脂肪腫による圧迫や脊髄係留によって下肢の変形や下肢痛、神経因性膀胱を生じる。

3. 先天性皮膚洞は潜在性二分脊椎の一種である。腰仙部で殿裂よりも頭側に陥凹を認め、同部位の皮膚に血管腫や母斑、癜痕などを伴うことが多い。
①奈良 勲. 他(シリーズ監修), 富田豊(編) : 標準理学療法作業療法学專門基礎分野, 小児科学, 第5版, 医学書院, p. 85-87. ②奈良 勲, 他(シリーズ監修), 川平和美, 他(編) : 標準理学療法学, 作業療法学專門基礎分野, 神経内科学, 第4版, 医学書院, p. 308-312. 

3. 排便の中枢は仙髄にあるので、二分脊椎では肛門括約筋の制御が困難となり、弛緩した状態となる。便による直腸の伸展刺激を感知できず便意を感じることができない。加えて、腹部の筋収縮が弱く、腹圧が不十分となる。そのため、尿失禁便秘が主な症状となり、摘便、浣腸により管理することになる。
4. 脊柱の変形は、後弯と側弯、腰椎前弯の増大が主に見受けられる。原因は脊椎の形成不全、体幹筋力低下に加えて、股関節脱臼やそれに伴う骨盤傾斜などである。障害レベルが高位であるほど高頻度に重度の変形を伴うことが多い。

5. 二分脊椎は障害された中枢神経系障害の症状を呈し、痙性麻痺と弛緩性麻痺がみられる。麻痺の回復よりも残存機能の活用を中心としたアプローチが中心である。

1. 第12胸髄レベルでは下肢筋は全て麻痺し、大腿骨頚部の外反が起こるのみで通常脱臼は生じない。場合によっては股関節過外転がみられる児もいる。

2. 第1腰髄レベルでは車椅子移動が実用的である。

3. L2~L3残存レベルでは、足関節底背屈ができずに下垂する尖足変形が起こりやすい。

3. 第3腰髄レベルでは股関節屈曲·内転は正常、大腿四頭筋は MMT3以上、内側ハムストリングスもある程度利いている。 長下肢装具と杖で非実用的な歩行となることが多い。

3. 第4腰髄レベルから短下肢装具を装着し、 杖なし歩行が可能となる。

3. 第4腰髄ー反張膝、ハムストが利かない

memo 股関節脱臼·亜脱臼に進行しやすいのは歩行の機会が多い第3~4腰髄レベルである。

4. 第5腰髄レベルでは杖や装具を用いなくても歩行可能な場合が多い。関節保護や足部変形予防を目的に靴型装具を用いる。

4. 第4~5腰髄レベルでは、前脛骨筋が機能するが、下腿三頭筋は機能しないので踵足変形ー踵足歩行を起こしやすい。

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2. 踵足は足関節の背屈筋と底屈筋のアンバランスによって生じ、足関節背屈位となることで前脛骨筋の短縮が生じやすい。よって前脛骨筋のストレッチングが必要である。

5. 第1仙髄レベルー外反扁平足ー凹足変形ー背屈制動付き足継手

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5. 第2仙髄レベルでは内在筋のみが低下し鉤爪ゆび(claw toe)がみられやすい。

6. 二分脊椎は運動麻痺だけではなく感覚麻痺も呈するため、歩行可能な症例で荷重が集中しやすい部位では褥瘡の発生リスクが高く、本人だけでなく家族への指導も重要である。

①上杉雅之(監修) :イラストでわかる小児理学療法, 医歯薬出版, p. 148-149, 151, 154. ②栗原まな : 眼で見る小児のリハビリテーション, 改訂第3版, 診断と治療社, p. 119-120. ②陣内一保, 他(監修), 伊藤利之, 他(編) : こどものリハビリテーション医学, 第2版, 医学書院, p. 188. 

 

Perthes 病は発育期に大腿骨近位骨端部(骨端核)が阻血性壊死をきたす疾患である。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200217165350j:image

1. 多くは6~8歳で発症し、男女比は 5対1で男児に好発する。

1. 片側性の発症が多い。

1. 発症年齢が高いと予後不良である?

1. 予後は発症年齢でなく,壊死範囲の程度に関係する。

1. Perthes 病では壊死部が再生するまで骨頭の圧力を除去しつつ、骨頭を臼蓋内に深く十分に被覆された状態を保つ包み込み療法(Containment療法)が治療の原則である。

3. Containment 療法は壊死骨頭を臼蓋部で被覆して血管新生を促す治療法である。外転装具を用いて大腿骨頭の免荷を促す。

4. 外転装具などを利用して股関節外転, 内旋位とし、骨頭の臼蓋への包み込みがより良い肢位で保持する。

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1. 治療としては、保存療法では免荷装具寮法が用いられ,手術療法は大腿骨内反骨切り術などが行われる.

1. Perthes 病の臨床症状としては、開排(股関節屈曲、外転),内旋の可動域が著しく制限され、大腿部,殿部の筋萎縮がみられTrendelenburg 微候陽性となる。

1. 筋力低下が立位、歩行の再獲得を妨げないよう体力維持を目的に全身的なプログラムとしてプッシュアップ動作や懸垂運動、腹筋,背筋運動などを取り入れる。

2. 臼蓋を圧迫しないよう痛みのない範囲で、全方向、全可動域にわたって他動的可動域訓練を実施する。一般的に股関節屈曲、外転、内旋に制限がみられる。

5. 外転免荷装具で上手に遊ぶ子供もいるため外遊びを控える必要はないが、患側荷重にならないよう指導が重要である。

細田多穗(監修), 田原弘幸, 他 : シンプル理学療法学シリーズ, 小児理学療法学テキスト, 改訂第2版, 南江堂, p. 171-174. ②松野丈夫, 他(給編集), 馬場久敏, 他(編) : 標準整形外科学, 第12版, 医学書院, p.621-626. ③潮見泰藏(編著) : ビジュアルレクチャー神経理学療法学, 医歯薬出版, p. 262-282. ④高田治実(監修), 豊田 輝, 他(編) : PT.OTビジュアルテキスト装具学, 羊士社, p.338-339. 

 

Apgar スコアは出生直後の新生児に重要な評価である仮死の判定として、最も広く使用されている。出生後1分の新生児の状態を、皮膚の色(appear-ance A), 心拍数(pulse P), 反射(grimace : G),筋緊張(activity A), 呼吸状態, (respiration R)の項目から、それぞれ0~2点(10点満点)で採点する。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200210171330j:image

memo Apgarスコアでは、8点以上は正常、4~7点は軽度仮死、3点以下は重度仮死と判定される。

脳性麻痺発症の周産期における危険因子は,臍帯巻絡による仮死分娩,低酸素性虚血性脳症による新生児仮死の重篤な合併症などである,

多胎出産の増加と医療の発達によって、早産児未熟児が増加した、早産児未熟児の諸要因による脳障害として

脳室周囲白質軟化症が挙げられる。その他、②新生児低血糖症や③中枢神経感染症がある。低カリウム血症は危険因子となる可能性は低い。

①富田度(編) : 小児科学, 第5版, 標準理学療法学, 作業療法学(専門基礎分野), 医学書院, 2018, pp 43-45. ②細田多穂(監) : 小児理学療法学テキスト, 改訂第2版, シンプル理学療法学シリーズ, 南江堂, 2014, pp 74-75.

1. 脳性麻痺痙直型が最も多く、次いでアテトーゼ型が多い。他は少ない。

2. 痙直型は、痙直を示すものから固縮の強いものまで幅広い。=S.W.A.S装具

痙直型脳性麻痺に残存しやすい原始反射である.

吸啜反射
手掌把握反射
陽性支持反射
交叉性伸展反射

1. 核黄疸(ビリルビン脳症)アルブミンから遊離した非結合性ビリルビンが、血液脳関門を通過し、脳に沈着して生じる。大脳基底核が障害されてアテトーゼ型脳性麻痺の原因となる。

アテトーゼ型脳性麻痺に残存しやすい原始反射である.

対称性緊張性頸反射

3. 痙直型両麻痺は、両上肢よりも両下肢に強い麻痺がみられる。

4. 失調型は、発達初期には運動失調が目立たないことが多い。しかし、起立、歩行と進むにつれて明らかとなることが多い。

5. 失調型は、通常、筋緊張が低く、低緊張と正常の間を動摇する。

①奈良 勲, 他(シリーズ監修), 川平和美, 他(編) :標準理学療法学, 作業療法学 専門基礎分野, 神経内科学, 第4版, 医学書院, p. 305-306. ②奈良勲, 他(シリーズ監修), 富田 豊(編) : 標準理学療法学, 作業療法学専門基礎分野, 小児科学, 第5版, 医学書院, p.99-102. 

3. 大島の分類は、運動機能を5段階に分けて横軸に、知能指数を5段階に分けて縦軸においたもので、障害の程度を 25段階に分類している。その中で1~4は運動障害と知的障害がともに重度で重複していることを示し、「重症心身障害児」と分類される。本症例はこの枠に分類される可能性が高い。

3. 横地の分類
4. GMFCS のⅢレベルは「歩行補助具を使用して歩く」機能を有しているレベルである。 本症例では起居動作が未獲得であるため、 歩行補助具を使用しても歩行は困難と考えられる。

GMFCSは18 歲までの脳性麻痺児の相大運動能力障害の重症度を分類するシステムである。全身運動の能力と必要な援助量と使用する器具類(杖や車いすなど)の違いによって5つのレベルに分類される。脳性麻痺児の重症度を GMFCS によって分類することにより、早期から予後を見適した、長期的かつ系続的なリハビリプ口グラムの作成が可能となる。

GMFCS(粗大運動能力分類システム)

Ⅰ:制限なしに歩くー不整地歩行⭕手すりを使わず階段昇降

Ⅱ:制限を伴って歩くー通常のイス座位保持⭕手すりを使って階段昇降

Ⅲ:手にもつ移動器具を使用して歩くー通常のイス座位にシートベルトが必要な場合がある

Ⅳ:制限を伴って自動移動ー電車⭕車イス⭕寝返り⭕

Ⅴ:手動車イスで移送されるー寝返り❌

2. GMFM (Gross Motor Function Measure) は脳性麻痺児のための粗大運動能力尺度で、通常5歳児なら可能な88の項目からなる

WeeFIMー移動ーはいはい

理学療法のなかでも, 運動発達に必要な基本的プログラムとしてのポジショニング (positioning)があります.ポジショニングは 「姿勢をとる」「姿勢を調整する」 などの意味で使用され,運動機能,精神機能,呼吸機能, 言語機能などを含めた全体的発達を促進します。

ポジショニングは3つの基本原則があります

①異常な姿勢,肢位のままで放置しない,

また左右どちらかに優先な非対称姿勢をできるかぎりとらせない。
②頭部,体幹部, 上肢, 下肢の抗重力要素の発達を促す。
③②と手の協調,上肢の使用を促す。

1.本症例はすべての生活場面において自力での移動能力が重度に制限され全介助で移動すること、 また変形により抗重力姿勢の保持能力も制限されていることが予想される。よって、 GMFCS のレベルはVと判断できる。
2. 下肢全体が右側へ倒れ、上肢および体幹の非対称的姿勢からウィンドスエプト変形(風に吹かれた変形)であることがわかる。

この変形は脳性麻痺に限らず、重症心身障害児(者)の二次障害の典型的異常姿勢である。

3. ウィンドスエプト変形は

ハムストリングスの痙性によって膝関節伸展制限が生じ、

さらに体幹および股関節周囲筋の筋力低下によって下肢の重量に抗することができず両下肢がどちらか一側に倒れた肢位のことを指す。

下肢が倒れた方向の反対側(風上側)の股関節は屈曲·内転·内旋位となり、 臼蓋と骨頭の求心位が失われることで股関節の側方脱臼につながる。図では風上側は左側であるため左股関節の脱臼リスクが高いと考えられる。
4. ウィンドスエプト変形は骨盤および胸郭のねじれが生じるため、側弯変形に進行するリスクは高い
5. 本症例の状態から、 普通型の車椅子などの活用は困難であることが予想される。屋内および屋外活動ではストレッチャーや座位保持装置など、全身状態や用途に合わせた柔軟な工夫が必要である。

自力での座位保持が全く不可能な症例に対する座位保持装置の目的は, 非対称性に十分配慮し, 頭部や体幹のアライメントを整え,抗重力姿勢を安定させ保持することであるため, 頭部,体幹, 足部保持部品等が必要となる。

骨盤帯と下肢の調整では、 はさみ肢位がみられる場合, 股関節を外転外旋位に保ち、 骨盤を水平に保つシーティングが必要である。 さらに後弓反張が出現する場合は、 ハムストリングスの短縮が発生しやすく, 座位姿勢でもシートから前方にずり落ちやすい。よって症例のように自力での座位保持が全くできない場合には、シート前方を高くし、 股関節屈曲 100 程度を目安に考える。

ヘッドレストをつける

リクライニング式にする

胸ベルト=シートベルトをつける

骨盤ベルトをつける

1. Galant 反射は生後1~2か月までにみられる脊髄レベ腹臥位に児を保持し、脊柱のレベルの原始反射である。約3 cm外側を脊柱と平行に第12肋骨から腸骨稜付近まで検者の指でこすると、 刺激側の脊柱筋が収縮し、反対側が凸の側湾となる。殿部は刺激側に屈曲する。
Galant 反射の残存は

座位立位·歩行に必要な体幹の対称的な安定性を阻害する。 

5. 脳性麻痺で残存しやすいGalant反射の中枢は脊髄レベルであり、Galant反射の残存は体幹の左右対称的な安定を阻害し側弯を引き起こす

4. 非対称性緊張性頚反射(ATNR)は、 新生児期から4~6か月までみられる脳幹レベルの原始反射である。 背臥位にて、頭部を他動的に一側に回旋させると、 顔を向けた側の上下肢が伸展し、反対側(後頭側)の上下肢が屈曲する。ATNR が残存すると

両手を口に持っていけない、正常パターンの寝返りができない、 支持なしで座位が困難となるなどの障害がみられる。

図は非対称性緊張性頸反射(ATNR)が優位の姿勢を示している。

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5. ATNR延髄レベルの原始反射である。

1、2、寝返り動作や正中位指向が可能となるためには、左右の対称性の獲得が重要である。本症例のようにATNRが残存し、非対称的な姿勢が優位となる場合は寝返り動作は困難である。

3. ATNRの残存は、脊柱や骨盤の捻れを引き起こし、脊柱側弯につながる

2. 本症例のような非対称的な姿勢となる原因の一つとして、ATNR の残存が考えられる。 この原始反射の残存は脊柱や骨盤の捻れを引き起こし、側弯や股関節脱臼につながる。

症例は顕著な側弯を呈することから、 筋緊張の充進や原始反射の残存が予想され、重度な運動障害および精神発達障害を示す脳性麻痺児であると考えられる。
1. 本症例の側弯の状態から、 体幹の抗重力位での保持には困難さがあると予想され、頚部のコントロールは不十分頭部の安定性は得にくいと考えられる

1. 対称性緊張性頚反射(STNR)は4~6か月から8~12か月までみられる(新生児からみられ、4~6か月で消失すると記載の文献もあり)脳幹レベルの原始反射である。腹臥位で顎部を自動的に前屈すると上肢の屈曲と下肢の伸展が、頭部を後屈すると上肢の伸展と下肢の屈曲が起こる。STNR が残存すると

上下肢の相反的な運動が阻害されるため、痙直型両麻痺および四肢麻痺では図のような上下肢の交互性運動の少ないバニーホッピングがみられる。

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2.緊張性迷路反射(TLR) は5~6か月頃に消失する脳幹レベルの反射である。児は頭部中間位の背臥位とする。頚部を軽度後屈させると四肢が伸展し、他動的に屈曲させようとすると抵抗を感じる。また、腹臥位では顎部を軽度前屈させると四肢が届曲し、他動的に伸展さ
せようとすると抵抗を感じる。緊張性迷路反射反射が残存すると

正中位指向が困難となる。

5. Moro 反射は、5~6か月までに統合される脳幹レベルの原始反射である。体幹に対する頭の位置を急に変化させることで出現する。上肢の伸展、外転と両手を開く動きが第1相、その後の前胸部での上肢の屈曲と内転が第2相とされる。Moro反射が残存すると

不安定な状態のとき手をついて身体を支えることができない

①真野行生 : 運動発達と反射, 医歯薬出版, p.17-63. ②松澤 正 : 理学療法評価学, 第4版, 金原出版, p. 143-144. ③細田多穂(監修), 田原弘幸, 他(編) : シンプル理学療法学シリーズ, 小児理学療法学テキスト, 改訂第2版, 南江堂, p. 37-41. 

痙直型両麻痺では,腰椎前弯,股関節底曲,内転,内旋位,膝関節屈曲位,足関節底屈,内反位が複合した特異なクラウチング肢位(crouch posture : 中腰姿勢)=(crouching posture : しゃがみ肢位)と記載されているものもある

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痙直型両麻痺では適切な理学療法が行われず放置された典型例とし(crouching posture )
うずくまり肢位があり, この肢位にしないことが介入目的の一つとなる。 股関節内旋筋とハムストリングスはcrouching posture を回避するために抑制すべき筋である。

2. 脳性麻痺下腿三頭筋の痙性が高くなることから尖足が問題となり、短下肢装具による矯正が行われることが多い。

1. 設問の対象児は股関節,膝関節が完全伸展位とはなっておらず, 下部体幹の安定性向上と股関節の伸展位保持能力向上のためには腹筋群と殿筋群の同時収縮促通は不可欠である。

1. また, 長下肢装具装着は対象児の下肢の支持性向上と歩行など関節運動の獲得において阻害要因となるため適応とならない

1. 長下肢装具立位保持練習などで用いられる場合はあるが、歩行可能な症例での使用は考えにくい

1. 痙直型両麻痺では上肢も何らかの麻痺の影響を受け左右差があることも多い、屋内歩行のための手に持つ移動器具の選択では

①上肢の支持性と

②操作性および

移動器具を使用した場合の連合反応の影響などを考慮する必要がある。

この対象児の下肢の支持性は,固定されている平行棒につかまっていても不完全である。移動器具の導入は、免荷と安全性を考慮して歩行器歩行器→松葉杖→杖のような段階が必要となる。

6歳の女児。脳性麻痺痙直型両麻痺。手指の巧微動作は抽劣だが上肢、体幹の機能障害は比較的軽度で、座位バランスは良好である。 両手で平行棒につかまれば椅子から立ち上がることができ、 平行棒内立位は片手支持でも安定して保持できる。歩き出そうとすると支持脚股関節·膝関節の屈曲が生じ、尻もちをつきそうになり歩けない。この患者の歩き出しの問題への対処として行う理学療法で適切なのはどれか。

本児の歩き出しの問題への対処において,運動としては一側下肢の体重支持と他側下肢の前方移動という非対称の要素が必要となる。

1. バルーン上座位保持練習は頭部,体幹の立ち直りの促通

2. バルーン上腹臥位での体幹伸展練習は体幹伸展活動促通であり,下肢の運動性とは関連が低い

3. 台上座位からの立ち上がり練習は下肢の筋力強化と前方への体重移動を促すことが目的となり歩行の準備段階として位置づけられるが,下肢非対称の運動性の要素がない.

4, 壁にお尻で寄りかかった立位での風船遊びは下肢の伸展括動を伴った上肢活動が主目的となる

5. 低い台に片足を乗せるステップ動作の練習は非対称の運動で歩き出しと似た動作の練習であり適切である

①上杉雅之(監修), 成瀬 進·他 : イラストでわかる小児理学療法, 医歯薬出版, p. 125-135. ②細田多穂(監修), 田原弘幸·他 (編) : シンプル理学療法学シリーズ, 小児理学療法学テキスト, 改訂第2版, 南江堂, p. 27-28. ③上杉雅之 (監修) :イラストでわかる小児理学療法学演習, 医歯薬出版, p.28-32. ①千住秀明(監修) : 理学療法テキストVII こどもの理学療法, 第2版, 神陵文庫, p. 16-48. ②細田多穂(監修), 田原弘幸·他(編) : シンプル理学療法学シリーズ小児理学療法学テキスト, 改訂第3版, 南江堂, p.91-98. 

 

筋ジストロフィーは、骨格筋の変性,壊死と筋力低下が慢性,進行性に経過する遺伝性疾患の総称である。

1. Duchenne 型筋ジストロフィー2/3は伴性劣性遺伝、1/3 は突然変異で発症する。常染色体劣性遺伝は、肢帯型筋ジストロフィーや福山型先天性筋ジストロフィーなどがある。

3. X 連鎖性劣性遺伝(伴性劣性遺伝)は、親から異常なX染色体とY染色体を受け継いだ場合に発症するため、Duchenne 型筋ジストロフィー男児のみの発症である。

3. 小学校卒業時までには歩行不能となり車椅子が必要となる。IQ は80前後をピークに正規分布を示し、動作性知能より言語性知能が下回る傾向があり、言葉によるコミュニケーションや課題の学習の上で問題を抱える背景となりうる

2. Duchenne型筋ジストロフィーは、一般に5歳以下で発症する。初発症状は、走れない、転びやすい、階段昇降が拙劣である、などである。

4. Duchenne 型筋ジストロフィーは、9歳以降に急速な病状の進行がみられ、いすからの立ち上がり動作に介助が必要となり、10~11歳頃に歩行不能となる。

3. 筋力低下は近位筋で目立ち、下腿三頭筋に仮性肥大がみられる。9歳頃に歩行不能となる。

1. 下腿に出現した仮性肥大は病状の進行にともなって咳筋などにも出現する。

memo仮性肥大(偽性肥大)とは,実質細胞が萎縮することで,代わりに脂肪組織や結合組織がその部分を補い,一見筋組織が肥大したかのようにみえる状態をいう.

4:動揺性歩行は Duchenne型でみられやすい。

memo Duchenne型筋ジストロフィーでは、近位筋優位の筋力低下と筋萎縮、 Gowers 徵候(登はん性起立)大殿筋歩行、動揺性歩行などを特徴とする。

4.Duchenne 型筋ジストロフィーでは、病的反射はみられない。また、腱反射は減弱する。

5. Duchenne 型筋ジストロフィーは、心筋や呼吸筋の障害による心不全、呼吸不全で死亡することが多い

5. Duchenne 型筋ジストロフィーに伴う心筋症のほぼ全例で僧帽弁逸脱が認められるが、その原因は不明である。

2. 筋細胞膜を補強するジストロフィンの欠損により、 筋細胞が損傷されやすく、 筋細胞が壊れることで筋細胞中のクレアチニンキナーゼ (CK)は細胞外に漏出し、毛細血管中に拡散すると血清中CK 値が上昇する。

①奈良 勲 他(シリーズ監修)、川平和美,他(編):標準理学療法作業療法学 専門基礎分野、神経内科学、第4版、医学書院、p.275-276.②田崎義明 他:ベッドサイドの神経の診かた、改訂 18版、南山堂、p.433

①水野美邦(編) : 神経内科ハンドブックー鑑別診断と治療, 第5版, 医学書院, 2016, pp 1211-1228. ②水野美邦(監) : 標準神経病学, 第2版, 医学書院, 2012, pp 14-46. ③田崎義昭. 他(坂井文彦改訂) : ベッドサイドの神経の診かた, 改訂18版, 南山堂, 2016, pp 433-436. ④江藤文夫,他(監) : 最新リハビリテーション医学, 第3版,医菌薬出版, 2016, pp 416-418.

細田多穂(監修), 田原弘幸·他(編) : シンプル理学療法学シリーズ, 小児理学療法学テキスト, 改訂第2版, 南江堂, p.191-202. ②上杉雅之 (監修) : イラストでわかる小児理学療法, 医歯薬出版, p. 175-185. 

1. 肢帯型筋ジストロフィー知的に正常であり、発症から20年程度で歩行困難となる。

memo 病期が進むと筋萎縮は全身性となり顔面筋が侵される場合もある
3. 顏面肩甲上腕型筋ジストロフィーの有病率は、10万人に0.2~0.4人であり、男女差はない。顔面筋および上肢筋から筋力低下が始まり、進行は緩徐で、生存可能な年齢は高く知的に正常である。

5:顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーでは、顔面、上肢帯、上肢を中心とした進行性の筋萎縮と筋力低下を呈するため、上肢挙上困難、翼状肩甲などを特徴とする。

5. 顏面肩甲上腕型筋ジストロフィーは、顔面、肩甲、上腕部の筋萎縮をきたす常染色体優性遺伝のジストロフィーである。ミオパチー様顔貌が特徴的である。

1. 福山型先天性筋ジストロフィーは、常染色体劣性遺伝で、筋ジストロフィーと脳形成障害を認める。厚脳回、小多脳回などの脳回異常があり、白質ジストロフィー様変化を示す。
4. 福山型先天性筋ジストロフィーは生下時より筋緊張が全身的に低下し、重度の知的障害てんかんなどの中枢神経症状がみられることが特徴である。

memo 福山型先天性筋ジストロフィーは中等度~高度の知的障害と中枢神経系の形態異常を合併する。出生後早期からの筋緊張低下重篤な運動発達遅滞(頸定、寝返り、座位保持などの遅れ)、著明な筋力低下などを特徴とする。

5. 筋強直性ジストロフィーは、ミオトニンプロテインキナーゼの異常による筋強直と筋力低下、筋萎縮を特徵とする。先天型と成人型があるが、いずれも常染色体優性遺伝である。

筋強直性ジストロフィーはミオトニア(筋強直)、 筋萎縮性筋力低下、多系統の臓器障害がみられ、側頭筋の萎縮などにより斧状顔貌が特徴である。

筋力低下や筋萎縮は顔面や頭部に著しく
が細い斧状顔貌がみられる。

側頭筋、咬筋、胸鎖乳突筋の萎縮

筋強直性ジストロフィー下垂足

 

また先天型、小見型、成人型に分けられる。軽症例においては、本疾患と気づかないことも多い。

ミオトニア(母指球や舌をハンマーで叩打すると強直性収縮が誘発される)や、

グリップミオトニア(物を強く握るとただちに指を開けられない)がみられる。

2. 半数に知的障害を伴うが、進行はしない
3. 発症は10~ 20歳頃で、55歳前後の寿命である。
4. 四肢遠位の筋力低下、筋萎縮を認めるが、骨格筋だけでなく多系統の臓器障害がみられ

症状は脱毛、白内障、嚥下障害、心肺機能低下、耐糖能異常など多岐にわたる。

6. 三好型筋ジストロフィーは、常染色体劣性遺伝で、ヒラメ筋や腓腹筋に筋力低下や筋萎縮を生じ、早期につま先立ちが困難になる。

①小森哲夫(監修), 田中勇次郎, 他(編) : 神経難病領域のリハビリテーション実践アプローチ, 第2版, メジカルビュー社, p. 290-306. ②奈良 勲(シリーズ監修), 川平和美(編) : 標準理学療法学, 作業療法学 專門基礎分野, 神経内科学, 第4版, 医学書院, p. 274- 282. ③加倉井周一, 他(編) : 神経 筋疾患のマネージメント難病患者のリハビリテーション, 医学書院, p.192-212. ④潮見泰藏(編著) : ビジュアルレクチャー神経理学療法学, 医歯薬出版, p. 170-187. 

5. Becker型筋ジストロフィーはDuchenne 型筋ジストロフィーの軽症型とされ、知的に正常である。走行は可能だが、下肢の筋痛を生じることが特徴である。

memo Becker 型筋ジストロフィーはDuchenne型筋ジストロフィー同様にX染色体劣性遺伝形式をとるが、軽症型として臨床経過,予後ともに良好である。

4. 発症は Duchenne 型筋ジストロフィーよりも遅く、5~25 歳頃までが多い。 ただし、 無症状で経過することもある

2. Becker 型筋ジストロフィーは緩徐進行性で、15歳以下で歩行不能となることは少ない。
3. Becker 型筋ジストロフィーは、一般に知的障害はみられない
3. Becker 型筋ジストロフィーは、一般に病的反射はみられない。また、深部健反射は減弱する。

細田多穗(監修), 田原弘幸, 他(編) : シンプル理学療法学シリーズ, 小児理学療法学テキスト, 改訂第2版, 南江堂, p. 189-205. ②上杉雅之(監修) : イラストでわかる小児理学療法, 医歯薬出版, p. 175-185. 

Duchenne型筋ジストロフィー(Duchenne
muscular dystrophy ; DMD》では、運動機能の経過に沿って障害度分類が定められている。

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筋ジストロフィーにおける理学療法の目的は、二次的機能障害に対して治療を行い。 残存能力を最大限活用して、 動作 活動能力を維
持することである。

1:病初期では、患児の理解力を考えると、 個別筋の筋力維持運動の実施は困難なことが多いので、 基本的動作を反復して行わせることで上下肢·体幹の粗大筋力の維持を図る。
memo反復運動だけの単調な内容だと患児が
飽きてしまい、運動療法を継続できないことも多いため、各動作を組み合わせた、 例えば野球やサッカー、 ボーリングなどの遊びを取り入れながら行う方がよい。

2:ステージ1~4の時期に起こりやすい関節可動域制限は、下腿三頭筋の短縮による足関節背屈制限、 後脛骨筋の短縮による足部外反制限、ハムストリングスの短縮による膝関節伸展制限、大腿筋膜張筋の短縮による股関節内転伸展制限であり、これらの制限に対して歩行安定期から伸張運動や可動域運動を実施する必要がある。

3. 漸増抵抗運動などの筋力向上を目的とした
レーニングは,過用性筋力低下の危険もあるので,基本的には行わない.

4:DMDでは、ステージ1~3の時期から呼吸筋の筋力低下だけでなく、脊柱変形による胸郭運動の障害が加わり、呼吸機能が拘束性に低下するため、呼吸機能を維持する予防的取り組みを積極的に開始する。
memo 9~14歳ですでに肺活量がプラトーに達し、その後は急激に低下していくため、病期早期からの介入が重要である。

ステージ5は車椅子が必要となる時期で、車椅子座位姿勢が長時間になる時期が成長期とも重なり,急激に脊椎変形が進行する.そのため脊柱変形の管理と座位保持能力の維持が必要であり,シーティングによる座位保持環境設定,体幹装具の使用などが行われる。

3. 呼吸管理適応期であるステージ5以降に非侵襲的陽圧換気療法(NPPV) を導入することが望ましい。

3:ステージ6の時期には装具や姿勢保持具などの導入を検討していく、ステージ7、 8から臥位状態となる進行末期となるので環境制御装置の導入を検討する。
memo四つ這いで移動できないが、座位 (いざり)で移動できる段階なので、 ずり這いでの移動を促しながら座位で上肢を使えることが目標となり、移動動作と姿勢変変換動作を繰り返して筋力を維持する。

5:ステージ8では車椅子座位が可能だが、上肢では手指筋力以外は筋力低下が著明となるため、実用的な移動手段として手指でコントローラーを操作する電動車椅子が主に使用される。

①大竹進(監) : 筋ジストロフィーリハビリテーション, 医歯薬出版, 2002, pp 44-49, pp 64-67, p 119, p249. ②細田多穂(監) : 小児理学療法学テキスト, 改訂第3版, シンプル理学療法学シリーズ, 南江堂, 2018, pp 190-202. ③吉尾雅春, 他(編) : 運動療法学 各論, 第4版, 標準理学療法学(専門分野), 医学書院, 2017, pp 278-288.

 

2. 脊髄性筋萎縮症(SMA) は脊髄前角細胞や脳神経核の変性,脱落を示す神経原性疾患の総称である。 SMAI型(ウェルドニッヒ-ホフマン病)、SMA Ⅱ型 (デュボビッツ病)、SMA Ⅲ型(クーゲルベルク-ヴェランダー病)があり、いずれも知的に正常である。成人期以降の発症はSMA IV型とする。

 

Down症候群 (Down syndrome DS)全身の筋緊張低下や関節弛緩性などの影響を受けて運動
発達が遅れがちになり、理学療法の対象となる知的障害の代表例である。

1. Down 症侯群は、母親の出産年齢が高いほど、発生率が増加する。発症頻度は、母親の年齢が35歳になると約1/300、40 歳以上になると1/100とされる。

1. ヒトの染色体は、46本(通常、22対の常染色体と1対の性染色体)で構成されるが、DSは21 トリソミー(21番染色体が3本存在する状態)によって発症し、常染色体異常の疾患として最も多い。

3. 転座型は全体の5~6%、モザイク型は全体の1~3%であり、転座型のほうがモザイク型よりも多い。
4. Down 症侯群の出生前診断は可能で、妊娠16週頃に羊水染色体の検査を行うことにより、確実に診断が可能である。

2: DS児にはつり上がった目尻という外観上の特徴だけでなく機能的な問題も生じるが、その際にみられやすいのは白内障である。なお、 頻度的には斜視、眼振の方がみられやすい。

2:中等度から重度の精神発達遅滞を伴いやすいが、その程度は個人差が大きい。

2. 精神発達遅滞の特徴としての無関心さを認めることは多い。

4:先天性心疾患は内臓の合併症として最も頻度が高く、患児の約50%に及ぶともいわれる。その内訳は房室中隔欠損症が最多で、心室中隔欠損症、 心房中隔欠損症、 Fallot 四徴症がこれに続く。

3:筋緊張の低下や刺激反応性の低さ、小顎症の合併など様々な原因により、哺乳力の低下がみられる。

2. 全身の低緊張に加え、口腔の小ささや鼻腔の狭さなどから哺乳力は低下しやすい。

2. 乳児期のDown 症候群児は、筋緊張低下が著明である。背が位で下肢の持ち上げができない、頸がすわらない、などの発達の遅れがみられる。

1. 全身の低緊張により手掌把握反射は低下しやすい。

1:筋の低緊張が特徴であり、筋の伸張性が亢進するため、腱反射は低下もしくは消失し、四肢関節の被動性は亢進する。

4:筋緊張低下の症状として、スカーフ徵候(肩関節水平内転時の関節の過可動性を示す徵候)がみられる。

1:背臥位では蛙様肢位をとりやすいため,タオルなどを利用し下肢の持ち上げを促す.

3: DS児は全身の低緊張を呈しやすく、抗重力姿勢の保持を苦手とする場合が多い(いわゆるフロッピーインファント)。 さらにこの全身の低緊張はもう1つの疾患特性である関節弛緩性にも関係し、環軸椎や股·膝関節の脱臼といった整形外科的合併症も伴いやすい。

5:環椎および軸椎の不安定さによる脱白がみられる。

1. 環軸椎の不安定性が特徴的で、 亜脱臼などから脊髄圧迫症状を引き起こす。

1. 環軸推の亜脱白を引き起こす危険があるため、下方パラシュート反応や立ち直り反応、前転運動などのの部に負担のかかるような大きな動きは避けたほうがよい。

Down 症は、全身の筋緊張低下により従重力の運動パターンが認められる。理学療法では筋力強化ではなく、運動のバリエーションを増やすような促しが必要である。

1. Down 症では、ある運動を獲得しないまま次の運動を獲得する「飛び越し現象」が認められることがある。
特に四つ這い移動を獲得せずに、いざりでの移動手段を身に付けることが多い。 四つ這い姿勢は体幹の抗重力位活動を促すことができるため、たとえつかまり立ちを獲得していても, 体幹筋活動を促すうえでは必要な姿勢である。

2:腹臥位での頭部挙上は難しい動作になるため,抱っこをして声掛けなどで頭部挙上を促すことから始める。

5: DS児には腹臥位から開脚して起き上がり、 座位のまま移動するシャフリングがみられやすい。

3:手掌支持位から後方に重心を移動しながら,開脚して起き上がるというDown症候群に特徴的な動作である.この動作を繰り返すことで習慣性股関節脱白になりやすく,これを放置することで固定性の脱臼に至る場合もある.そのため,正常な運動発達でみられる四つ這いを経由した起き上がり練習を行う.

4,5. 姿勢制御反応も遅れをとりやすいため,姿勢変換練習やバランス練習を行う。

4. 筋緊張低下に起因して扁平足などの足部変形が問題となることは多い。 下肢筋の発達に伴いアーチサポートが形成されるが改善が困難なことも多い。そのため足底板や靴型装具などの対応は必要であるが、 遊びの中に裸足で足底筋群を使い、 アーチサポートの形成を足すことも重要である。 したがって終日着用するよりも、装具装着の時間を管理することが重要である。

1. Down 症の運動発達は、 健常児より遅れるものの、時間をかけて獲得していくことが多い。 立位獲得に必要な筋力や筋緊張を形成しないと骨性の支持を獲得してしまい、骨や関節に負担をかけてしまう。そのため、焦って立位時間を増やすよりも関節周囲の同時収縮や姿勢筋緊張を高めて立位の準備をすることが重要,である。

①千住秀明(監) : こどもの理学療法, 第2版, 理学療法学テキストI, 神陵文庫, 2007, pp 195-203. ②井上保, 他(編) : 子どもの理学療法, 理学療法MOOK 15, 三輪書店, 2008, pp 80-92. ③細田多穗(監) : 小児理学療法学テキスト, 改訂第3版, シンプル理学療法学シリーズ, 南江堂, 2018, p178. ①伊藤利之 (監) : こどものリハビリテーション医学一発達支援と療育, 第3版, 医学書院, 2017, pp 290-299. ②上杉雅之(監) : イラストでわかる小児理学療法, 医歯薬出版, 2013. pp 187-199. ③細田多穂(監) : 小児理学療法学テキスト, 改訂第3版, シンプル理学療法学シリーズ, 南江堂, 2018.

①奈良勲. 他(シリーズ監修), 富田豊(編) : 標準理学療法学, 作業療法学專門基礎分野, 小児科学, 第5版, 医学書院, p. 65-66. ②奈良 熱. 他(シリーズ照修), 川平和美, 他(編) : 標準理学療法作業療法学 専門基礎分野, 神経内科学, 第4版, 医学書院, p.313-315. 

 

Down 症候群は筋緊張の低下により筋の伸張
性が亢進し、関節の支持性が低い,また,中枢神経の成熟遅延により、原始反射の消失,その後出現する各姿勢における姿勢制御反応が遅れ,未熟である.

Down 症候群に特徴的な蛙様肢位(flog position)である。全身の筋緊張の低下が生じ、自発運動が乏しく四肢は床に張り付くような姿勢となる。

2:腹臥位での頭部挙上は難しい動作になるため,抱っこをして声掛けなどで頭部挙上を促すことから始める。

1) 上杉雅之(監修):イラストでわかる小児理学療法,pp187-197,医歯薬出版,2013,2)千住秀明(監修) :理学療法学テキストW こどもの理学療法 第2版,pp199-206,神陵文庫,2007. 3) 新田 收,他(編):知りたかった!PT.OTのための発達障害ガイド.pp230-236,金原出版,2012.4)上杉雅之(監修) :イラストでわかる小児理学療法学演習.pp68-80.医歯薬出版, 2018.

 

自閉症スペクトラム障害は、 ①社会的コミュ
ニケーションおよび対人的相互反応の障害、②行動、興味、活動の限局された反復的行動を主徴とする、 乳幼児期に発現する精神発達の障害である。相互的対人関係障害と、幅が狭く反復的·常同的行動パターンで特徴づけられる。
1:生活全てがワンパターンになりやすく、日常生活動作の手順を細かく決めている、融通が利かない、予想通りにならないと混乱するなどの特徴がみられる。
memo 日常習慣の変更に強く抵抗する。
2:ごっこ遊びや想像力を必要とする遊びをしない。
3:常同的で限定された物事に強い興味や関心があり、それらには自分なりの方法に基づく「こだわり」、「はまる」という表現が当てはまるような取り組みがみられる一方、 状況に応じた臨機応変な対応は苦手とされる。
memo予想外の事態が起こると、混乱する傾向にある。
4:他者と関わりながら、その場や状況に適した言動がうまくとれないことが特徴的で、常識とされる社会的なルールがわからず、 場の雰囲気や状況、 相手の反応を読み取ることができない。
5:音声言語よりも視覚情報への注目の方がはるかに優位であり、口頭で話して聞かせてもなかなかピンとこないのに、文字や絵や写真で説明すると理解できることが多い。
上島国利·他(編) :精神医学テキスト一精神障害の理解と治療のために,改訂第4版,南江堂,
2017, pp 217-218

②上野武治 (編) :精神医学,第4版,標準理学療法作業療法学(専門基礎分野),医字子書院, 2015,pp 201-202,
③尾絡紀夫·他(編) : 標準精神医学,第7版, 医学書院, 2018.pp 378-382.

 

1. 自閉症は、先天的な要因が大きいとされ、多くの遺伝的因子が関与すると考えられている。
2. 自閉症児は欲しいものを自分で指させず、他人の腕をその物まで持って行くクレーン現象がみられやすい。
3. 女児に比べ男児に2~4倍多く発現する。
4. 自閉症は想像力の低下や、人の気持ちなどを理解する能力の障害がみられるため、ごっこ遊びを行うことは少ない。
5. 自閉症児は、視線が合いにくい、あやしても笑わない、抱かれるのを嫌がるなどの特徴がある。
尾崎紀夫 他(編): 標準精神医学、第7版、医学書院、p.378-379.奈良,他(シリーズ監修)、上野武治(編):標準理学療法作業療法学 專門基礎分野、精神医学、第4版、医学書院、p. 200-201

 

1. 注意欠如、多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder: ADHD)は、注意の障害が高度なため、活動がめまぐるしく移る傾向がある。
2. ADHD は、順番を待てない特徴がある。
3. ADHD は、女児より男児で数倍多い
4. ADHDでみられる注意の障害や多動,衝動などの行動特徵は、学齢期には持続するものの、3割程度は成人期までに改善がみられる。
5. ADHD は、運動の不器用さなどを伴うことも多い
大熊輝雄:現代臨床精神医学、改訂第11版、金原出版、p. 400.奈良!,他(シリーズ監修)、上野
武治(編):標準理学療法学,作業療法学專門基礎分野、精神医学、第4版、医学書院、p.215-216

 

WeeFIMー6ヶ月~7歳

 

ミカンの皮をむく。生後2歳半頃