腰椎椎間板ヘルニア

 

腰椎椎間板へルニアは、椎間板の髄核物質が後方の線維輪を部分的あるいは完全に穿破し、椎間板組織が脊柱管内に突出あるいは脱出して、馬尾や神経根を圧迫し、腰痛や下肢の神経症状を呈する。

姿勢変化と椎間板内圧は密接に関係しており、骨盤後傾や腰椎前弯角の減少により腰椎椎間板内圧が高まり、椎間板へルニアの原因となる。

第4 / 5腰椎間L5神経根がやられる

側ヘルニアーの神経根がやられる

後側ヘルニアー下の神経根がやられる

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1. 腰椎椎間板へルニアは、男性に発生することが多い。好発年齢は20~40歲代である。

2. 好発高位第4/5腰椎間第5腰椎/第1仙椎間、次いで第3/4腰椎間である。

memo 高齢の発症になるほど、L2/3、L3/4 で椎間板へルニアが発生する確率が高くなる。

2. 高齢者の腰椎椎間板ヘルニアに特徴的な臨床症状として腰椎後屈制限,Kemp徴候歩行時の疼痛,SLRテストの陽性率の経時的減少,下肢挙上角度の増大をあげる報告がある.

5. L4 神経根障害では踵歩行が困難となる。前脛骨筋はL4神経根の支配領域に含まれる。

S1 神経根障害によって下腿三頭筋に筋力低下がある場合は爪先立ち歩行が困難となる。

3. 腰痛片側の下肢痛を主訴として、運動や労働にて増悪し、安静で軽快することが多い。下肢痛は

上位腰椎大腿神経痛

下位腰椎坐骨神経痛であることが多い.

memo 坐骨神経痛の発現についてはヘルニア塊が神経根を物理的に圧迫する作用のみならず,炎症による影響が考えられており,ヘルニア塊の組織から産生される炎症性サイトカインなどが関連因子として報告されている.

3. 下肢痛の局在は、L4 神経根症では下腿内側、L5 神経根症では大腿外側~下腿外側で、 時に足背内側の疼痛を伴う。 S1 神経根症では下腿外側の痛みを訴える。L3 神経根症では、時に膝内側の痛みを伴い、変形性膝関節症との鑑別が必要である。

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①奈真勲, 他(シリーズ監修), 立野勝彦(湖)標準理学療法学, 作業療法学 專門基礎分野, 整形外科子, 第4版, 医学書院, p.101-102. ②高橋邦泰,他(編) : 登P外科学テキスト, 改訂第4版, 南江堂, p. 227-229. 

1. 下肢伸展挙上テスト(SLRテスト)が陽性の場合にはL5 ~ S1 神経根症を疑う

memo SLR(straight leg raising)テストは高齢者では陽性率が低い特徴がある一方で,若年者では強陽性を示すものが多く,年齢の違いによりヘルニアの病態に違いがあることを示唆している.

2. 大腿神経伸張テストが陽性の場合にはL2 ~ L4神経根症を疑う

3. L4 神経根の運動神経の支配領域に大腿四頭筋(膝伸展力)がある。筋力低下の程度は徒手筋力テストで評価する。

①中村利学 他 : 標準整形外科学 第13版, p.548-552. ②理学療法科学学会(編) : 国試の達入理学療法編 第19版, アイペック, p.312. 

3. 腰椎椎間板へルニアで手術を要する例は約10~30%と限られる。ただし、膀胱直腸障害がみられる場合や、運動麻痺が悪化する場合は、保存療法でなく、手術治療を検討する。

4. 大きな正中のヘルニアでは、排尿障害(尿閉、 残尿、りきみによる尿漏れ)を急激に生じることがある。この場合、時機を逸すると不可逆性になるため、早急に手術的治療が必要である。

3. ヘルニアは退縮していくと考えられている.

腰椎椎間板ヘルニア退縮機序は,変性椎間板が脊柱管に脱出することで炎症が惹起される.腰椎椎間板ヘルニアには活性化したマクロファージを中心にリンパ球などが浸潤し,新生血管の増生がみられる.TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され,血管新生を促進するVEGFの発現も促進され,増生された血管から炎症性の細胞が腰椎椎間板ヘルニアへ浸潤する.この炎症の結果,MMPなどの椎間板主成分であるプロテオグリカンに対する分解能を有する酵素の産生が促進され,ヘルニアは退縮していくと考えられている.

2. 発症初期や急性期には安静が必要である。膝の下に大きな枕を入れ軽度の股,膝関節屈曲位とし、腰椎部の下にタオルを敷き、腰椎前弯を適度に保ちながらファーラー肢位などをとるなど患者自身の一番楽な安楽肢位で安静にする。

1.ダーメンコルセット(軟性コルセット)は、腰部保護を目的とし、臨床上最も頻繁に用いられる。

5. 急性期には疼痛に応じて日常生活を制限することもあるが、なるべく早く日常の生活に戻ることが良い結果になることが多いため、完全な安静臥床はできる限り避ける。また、消炎鎮痛剤ステロイド性抗炎症薬の投与などを行う。

2. 長座位姿勢❌は骨盤後傾を助長し、椎間板内圧を亢進させる。

3. 座位時は背もたれなしの椅子などを利用して、骨盤後傾を減少させるように指導する。あぐら座位
3. 急性期間欠牽引❌は筋の伸張反射の惹忌など脊椎周囲組織への刺激が大きく、痛みの増強にもつながり、推奨されない。
4.ペースメーカーが挿入されている場合、極超短波の電磁場環境では誤作動を引き起こす可能性があり禁忌となる。また、金属挿入部位や着衣の金属部位は、電磁場の集中によってやけどを引き起こす可能性があり禁忌である。本症例はどちらにも当てはまらないが、発症から3日目の急性期であり、温熱により疼痛や症状の悪化をきたす可能性があり禁忌である。

姿勢変化と椎間板内圧は密接に関係しており、骨盤後傾❌腰椎前弯角の減少❌により腰椎椎間板内圧が高まり、椎間板へルニアの原因となる。

5. 急性期Williams体操❌は負荷が過度であり行わない。

4. Williams体操は腰椎前弯角を減少させ、椎間板内圧を亢進させる可能性があるため特に急性期は実施しない。

5. 慢性期⭕に入り、疼痛発生後のADL 制限に伴う脊柱柔軟性の低下やニ次的筋力低下を招いている場合には、Williams体操による柔軟性の改善と筋力強化や筋持久力強化がQOLの改善にも効果がある。

1. 腰椎伸展運動の目的は、正常な腰椎前弯を獲得して椎間板内の髄核を前方移動させ、椎間板内圧を減少させることである。

5. 荷物を持ち上げる時はなるべく股関節および膝関節を屈曲させ、椎間板への負担を回避する。
①黒川幸雄 他(シリーズ監修)伊藤俊一 他 : 理学療法MOOK14, 腰痛の理学療法, 三輪書店, p.48-51, 56-57, 62-63, 74. ②島田洋一, 他 : リハ実践テクニック, 骨関節疾患の理学療法, 社, p. 208-213. ③富士武史(監修), 河村廣幸, 他 : ここがポイント!整形外科の理学療法, 金原出版, p. 61-66. ④松澤 正, 他 (監修) : 物理療法学, 改訂第2版, 金原出版, p. 89. ⑤上杉雅之(監修), 杉本雅晴, 他(編) : イラストで分かる物理療法, 医歯薬出版, p.31-32. ⑥石川 齊. 他(編集主幹), 中山彰一. 他(編集委員) : 図解 理学療法技術ガイド, 第4版, 文光堂, p. 895-904. ⑦中村利孝, 他(監修), 井桶栄二, 他(編) : 標準整形外科学, 第13版, 医学書院, p. 545-556.