がん関連

 

がん患者では、その治療過程においてさまざまな機能障害が引き起こされて、それらの障害によりADLやQOLが低下してしまう可能性が高い。

がん患者に生じうる機能障害は、がんそのものによる直接的障害とがんの治療に起因する間接的障害に分類される。

直接的障害

脳腫瘍, 脳転移による麻痺や失調症状、骨腫瘍, 骨転移による疼痛、腫瘍の直接浸潤によるしびれや筋力低下などの神経障害がある。

間接的障害

骨, 軟部腫瘍や乳がん術後に生じる筋や関節の機能不全、化学療法や放射線療法後の倦怠感や末梢神経障害がある。

①井上順一郎,他(責任編集) : 理学療法MOOK21 がんの理学療法、三輪書店、p. 5-8.②辻哲也(編)、高倉保幸,他(編集協力) : 標準理学療法学,作業療法学,言語聽覚障害学別卷 がんのリハビリテーション医学書院、p.23

腫瘍の良性,悪性の区別は宿主が受ける影響の程度により分けられ、臨床的に良好な予後をもつ腫瘍は良性腫瘍で、予後が不良なものは悪性腫瘍と分類される。
1:悪性腫瘍は異型性が高いことを特徴とする。
memo 良性腫瘍でも、正常細胞の細胞形態との異型性はあるものの、悪性腫瘍の方がより高い異型性を示す。
2:正常細胞では、各細胞が担うべき機能を発揮して成熟した細胞形態を示すようになる(分化)が、悪性腫瘍では細胞のもつ形態や機能は弱化し、本来の細胞組織の特徴がほとんど喪失する低分化型を示す。
3:膨張性に発育するのは良性腫瘍であり、悪性腫瘍では浸潤性に発育する。
memo組織を破壊しつつ、周囲組織間質へ浸潤する。
4:良性腫瘍では、腫瘍により圧排された結合組織が腫瘍を被包することで被膜を形成し、
腫瘍との境界が明瞭になるが、 悪性腫瘍では腫瘍と周辺組織の境界は不明瞭である。
memo 不定形の腫瘍結節を形成することが多い。
5:悪性腫瘍では、活発な核分裂によって生じた核の大きさは大小不同で不整形,多形性であることを特徴とし、結果的に細胞質に対する核の割合が大きくなる
memo 核が腫大しても、細胞質も腫大していれば良性腫瘍であることが多い。

5. 核分裂や細胞の出血壊死が多くみられる。5. クロマチン(染色体)は増加する。

①梶原博毅 (監) :病理学,第4版, 標準理学療法作業療法学(専門基礎分野), 医学書院, 2017, p 58, pp 73-74.
②笹野公伸·他(編) : シンプル病理学,改訂第7版,南江堂。2015, pp 96-104.

5:悪性腫瘍の診断は

①臨床所見、

②肉眼所見、

③組織所見などを総合してなされるが、

特に採取した微量組織の状態を顕微鏡レベルで検討する組織所見が診断の決め手となる(生検組織診断)。

PaP Score (Palliative Prognostic Score) は、呼吸困難、食欲不振、主治医が予測する予後の長さ、Karnofsky performance scale、白血球数、リンパ球分画をそれぞれ点数化し、該当点数を合計し予後予測を評価するものであ
る。生命予後の予測は非常に困難であるが、PaP Score などの予後予測ツールを用いて評価することが、理学療法計画を立てる際に有用である。
1. 予後因子をそれぞれ点数化し、該当点数を合計して予後予測を評価する。
2. 化学療法や放射線療法などのがんの治療に伴う副作用については、有害事象共通用語基準(CTCAE)を用いて評価する。
3. ADL 評価は一般的に使用されているBarthel IndexやFIM を用いることもあるが、がん患者の全身状態や日常生活での活動度を評価するためにECOG PSが使用されることが多いい。
5. がんの進行度を判定する基準としては、国際対がん連合のTNM分類がある。

5:TNM分類は,癌の大きさと浸潤(T 因子),リンパ節転移(N 因子)、遠隔転移(M因子)の3つの因子について評価し、これらを総合的に組み合わせて病期を決定する方法である。

1:腫瘍細胞の遠隔転移において、腎癌は血行
性の進展形式を起こしやすい特性があるため、下大静脈を経由して最初に到達する臓器の肺に転移しやすい。一方、同じ血行性転移でも胃癌などでは腫瘍細胞が門脈を経由するため、最初に到達する臓器の肝臓に転移しやすい

3:癌腫は発生母組織によって扁平上皮癌、腺癌などに分類されるが、食道内腔は扁平上皮に覆われるため、食道癌の90%以上は扁平上皮癌として生じる。

一方、腺癌は腺上皮を有する肺、胃、腸、乳腺、子宮内膜(子宮体部)などで多い。

1. 線維肉腫は乳幼児、 30~50歳代に好発する悪性軟部腫瘍である。上肢、肩、下肢、体幹にみられやすい。疼痛を生じにくい特徴があり、急に成長する腫瘤として認められる。

2. 脂肪肉腫は 30~60歳代に好発する無痛性悪性軟部腫瘍である。四肢や後腹膜腔にみられやすい

3. 横紋筋肉腫は10歳以下の小児に好発する悪性軟部腫瘍である。頭部などにみられやすい予後不良で、肺や骨などに転移し、死亡の転帰をとることが多い。

5. 軟骨肉腫は、10~70 歳代と幅広い年齢分布を示すが、50 歲以上が約半数以上を占める。男女比は2:1で男性に多い

4. 骨肉腫は、多くは運動痛で初発し、自発痛、そして局所への腫脹へと続くく。骨組織に発生し、腫瘍細胞が直接類骨あるいは骨組織を形成する腫瘍と定義される。

1. Ewing 肉腫は極めて悪性度の高い腫瘍で、高率に遠隔転移を生じる。発生の平均年齢は 80%が10歳代であり、3:2の比率で男性に多い。長管骨発生例は2/3を占めるが、腸骨などの扁平骨や助骨にも発生する。長管骨でも特に骨幹に発生することが特徵である。

2. 骨軟骨腫は、主に10歳代長管骨の骨幹端部(大腿骨遠位、脛骨近位、および上腕骨近位)に好発する良性骨腫瘍で、軟骨内骨化により成長する。患者の成長が完了すると、腫瘍の発育も停止する。

4. 血管腫は、小児に好発し、四肢や体幹にみられやすい良性軟部腫瘍である。組織学的には、毛細血管腫と海綿状血管腫の発生頻度が高い。

4. 骨巨細胞腫は、骨成長完了後(成長軟骨板閉鎖後)の20~30歳代に好発する、間質腫瘍細胞と多数の多核巨細胞腫の2種類の細胞成分よりなる骨腫瘍である。

5. 脂肪腫良性軟部腫瘍のなかで最多の腫瘍である。40~60 歳代に好発し、体幹や頭頭部にみられやすい。
①和出野安良(監修) : コメディカル専門基礎科目シリーズ筋骨格障害学, 理工図書, p. 144-151. ②中村利孝, 松野文夫(監修) : 標準整形外科学 第13 版, 医学書院, p.344-360. ①辻 哲也(編) : 標準理学療法作業療法学, 言語聴覚障害学別卷, がんのリハビリテーション, 医学書院, p. 91-92. ②奈良 勲, 他(シリーズ監修), 立野勝彦(漏) : 標準理学療法学, 作業療法学專門基礎分野, 整形外科学, 第4版, 医学書院, p.91-93. 

 

1. 食道癌は進行すると、背部痛やか声、頸部リンパ節腫脹、咳嗽などを生じる。
2. 食道癌の好発部位は約半数が中部食道、次が下部食道で、最も少ないのが上部食道である。
3. 早期の食道満は大部分が無症状だが、進行すると嚥下困難を生じるようになる。
4. 食道痛の危険因子には、喫煙や飲酒、熱い食べ物などを食べる習慣などがある。
5. 食道癌のうち90%以上が扁平上皮癌である。
①井村裕夫(編) : わかりやすい内料学, 第3版, 文光堂, p. 539-541. ②奈良 勲, 他(シリーズ監修), 大成浄志 : 標理学療法学, 作業療法学 專門基礎分野, 内科学, 第2版, 医学書院, p. 149-150. 

 

1:日本人の死因の第一位は悪性新物質であるが,その中でも肺癌は増加の一途をたどっている.

1. 小細胞癌はきわめて悪性度が高く予後不良である。喫煙者の男性に多い。

3. 肺癌は、早期には無症状のことが多い。血痰は、気管支粘膜への浸潤により生じ、進行期になってから認めることが多い。

2:肺癌は比較的早期からリンパ節転移や遠隔転移をきたしやすく,外科的治療の成績を左右する最も大きな因子の一つはリンパ節転移度である.

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4. 扁平上皮癌は、腺癌に次いで発生頻度が高く、喫煙者の男性に多い。女性肺癌の約80%を占めるのは、腺癌である。

腺>扁>小>大、小・扁=喫煙と関係あり

1. Brinkman 指数(喫煙指效)は、「喫煙数/日× 喫煙期間/年」で算出され、大きいほど発がんリスクが高い

5. 腺癌は肺胞系の末梢に発生し、エックス線画像上、孤立結節影を形成する。

2. 大細胞癌は、増殖が速く、発見時には大きな腫瘤を形成していることが多い。

①奈良勲 他(シリーズ監修), 前田真治, 他 : 標準理学療法学, 作業療法学 專門基礎分野, 内科学, 第3版, 医学書院, p. 127-129. ②辻哲也(編) :がんのリハビリテーションマニュアルー術期から緩和ケアまで一, 医学書院, p. 160-161. 

肺門部(中枢)

扁平上皮、小細胞=呼吸器症状でやすい

肺野(末梢)

腺、腺扁平上皮、大細胞、小細胞、扁平上皮

 

非小細胞痛と小細胞癌で治療方針は大きく異なる。

1. 外科的治療の対象となるのは約4割である.

小細胞癌ではI期に手術を行う場合もあるが,ほとんどの場合は化学療法か放射線療法の適応となる.

一方,非小細胞癌はI期およびⅡ期において外科的治療が第一選択となる.

memo 化学放射線療法とは、放射線治療と化学療法(抗がん剤治療)を併用する治療法のことである。

1) 寺野彰(総編集):シンプル内科学改訂第2版,
pp277-280,南江堂, 2017. 2)前田眞治,他:標準理学療法学,作業療法学内科学第3版,pp127-130,医学書院,2014, 3)貫和敏博,他(編):呼吸器疾患最新の治療 2013-2015. pp399-403,南江堂,2013.

 

1.放射線治療中や化学療法中は骨髄抑制を生じる可能性があるため、常に血液所見に注意を払う必要がある。

1:骨髄抑制は抗がん剤の副作用の1つである。具体的には白血球減少による感染·発熱、血小板減少による出血傾向、赤血球減少による貧血症状が出現した状態であり、

その発現時期は化学療法開始から1~2週間後とされる。

1. 末梢神経障害 = 放射線治療後6か月~2年くらいまでに起こる晩期副作用

1. 気道浮腫、食欲不振、皮膚炎、悪心
治療直後から1か月の間に起こる副作用

2. 化学療法後は、臥床に伴う心肺系·筋骨格系の廃用、ヘモグロビン値の低下、 心毒性に伴う心機能の軽度低下などが原因で、 安静時に頻脈になりやすい。
3. 末期がん患者の食欲不振や全身衰弱、体重減少、倦怠感などを悪液質(Cachexia)という。
4. 進行したがん患者は、副甲状腺関連蛋白などの作用による骨吸収の促進、 腎でのカルシウム再吸収の促進、骨転移による局所的な骨破壊などにより高カルシウム血症を生じやすい
5. 進行したがん患者は、凝固·線溶系の異常をきたしている場合があり、長期の安静臥床の影響も加わることで、血栓·塞栓症を生じるリスクが高い
①辻哲也(編) : がんのリハビリテーションマニュアル一周術期から緩和ケアまで一, 医学書院, p. 32-36. ②東原正明 : 癌緩和ケア, 新興医学出版, p.122-131. 

 

緩和ケア病棟における終末期の癌患者に対しては,その要望を尊重しながら,身体的,精神的,社会的にもQOLの高い生活が送れるようにすることを目的とし,

疼痛,呼吸困難,浮腫などの症状緩和や拘縮,褥瘡の予防などを図る.全身状態の悪化に応じて

症状緩和や精神面のサポートが必要となり,温熱⭕,TENS, リラクセーションなどによる疼痛,しびれ,呼吸苦の緩和,ポジショニング指導などを行う。

病名告知については主治医に確認すべきで,告知を前提として理学療法を行うわけではない

理学療法を実施するうえでは

①骨転移の有無

②病的骨折や神経障害の程度を評価し、骨折のリスクを認識することが必要である

必要に応じて腫瘍専門の整形外科医と情報交換を行い理学療法の内容を組み立てることが必要である.

日々病態が変化するがん思者に対する理学療法を安全に実施できるようにするためには、日々の血液検査値やバイタルサイン、その他の身体所見を注意深く評価しリスク管理を行うことが必要不可欠であり、その理解が求められている。
1. 血液所見において、中止基準となるのはへモグロビン7.5 g/dL 以下である。

5:ヘモグロビン(Hb)値が緩徐進行性に低下して貧血が進行した場合は、

自覚症状が出現しないことがあるので特に注意が必要である。

2. 骨皮質の50%以上の浸潤、骨中心部に向かう骨びらん・大腿骨の2.5 cm以上の病変などを有する長管骨の転移所見がみられた場合はリハビリテーションを中止とする。
3. 心室不整脈がみられた場合は、リハビリテーションを中止とする。
4. 低ナトリウム血症や低,高カリウム血症、低.高力ルシウム血症はリハビリテーションの中止基準に含まれる。
5. 中枢神経の機能低下意識障害、頭蓋内圧亢進がみられた場合は、リハビリテーションを中止する。
①井上順一郎, 他(責任編集) : 理学療法MOOK21 がんの理学療法, 三輪書店, p. 11-12. ②辻哲也(編), 高倉保幸, 他(編集協力) : がんのリハビリテーションマニュアル, 医学書院, p.23-37. 

4:有酸素運動の強度は目標心拍数や自覚的運動強度〈Borg指数〉を用いて設定することが多い。目標心拍数を算出する際の運動強度は50~70%に、Borg指数を用いる際は11 (楽で
ある)~13(ややきつい)の低~中等度で週3~5回実施することが推奨されている。

①日本がんリハビリテーション研究会(編) : がんのリハビリテーションベストプラクティス,金原出版, 2015, pp185-201. ②辻哲也(編) : がんのリハビリテーション, 標準理学療法学·作業療法学·言語聴覚障害学(別巻), 医学書院, 
2018, p 32, pp 104-123. ③吉尾雅春·他 (編) : 運動療法学各論, 第4版, 標準理学療法学(専門分野), 医学書院, 2017. pp 427-443. 

 

近年の診断技術や治療の進歩により、 がんと
診断されても生存している、 あるいは治療後にがんを克服した人(がんサバイバー)の数は増加している。がんサバイバーの人生をより永く、 より充実させるためには医療従事者として適切な生活指導が重要である。

1,3 ACS (American Cancer Society; 米国がん協会)やACSM (American College of Sports Med-icine :米国スポーツ医学会)は、がんサバイバーにも定期的な運動実施が重要と示しており、目安として中等度強度の運動を1週間に150分以上、その中に筋カトレーニングを週2日以上取り入れることを推奨している。

2:食生活では、ベーコン·ハムといった加工肉や牛肉·豚肉といった赤肉の摂取は少なくし、 2.5盛り以上の野菜あるいは果物、全粒穀物といった植物性の食物に重点を置いた献立が望ましいとされている。

4:肥満傾向の場合は、摂取カロリーの制限に加え、体重管理のための活動量増加が必要である。

5:がんサバイバーの活動量を確保し、活発な生活を習慣づけるために、エレベーターを使わずに階段を利用する、家族や友人と運動
する、 外出機会を設けてできるだけ徒歩や自転車を利用するといった工夫は大切である。
①日本がんリハビリテーション研究会 (編) : がんのリハビリテーションペストプラクティス, 金原出版, 2015. pp 185-201. ②国立がん研究センターがん情報サービスホームページ·がん体験者の栄養と運動のガイドライン (https ://ganjoho.jp/public/support/dietarylife/survivor.html) (2019年 10月1日参照)

 

 

白血病では造血幹細胞の形質転換が起こって白血病幹細胞となり、この白血病幹細胞とその子孫の白血病細胞が単クローン性に無制限に増殖する(造血細胞の腫瘍性増殖)。

1~4.小児の悪性腫瘍では白血病が最多で、小児悪性腫病の30%以上を占めるとされる。また、白血病のなかでは急性リンパ性白血病の発症頻度が高い。

主な症状は脾腫、出血斑、食思不振、全身倦息感、粘膜下出血、蒼白、発熱などである。

①奈良 勲, 他(シリーズ監修), 寫田 豊(編) : 標準理学療法学, 作業療法学專門基礎分野, 小児科学, 第5版, 医学青院, p. 182-183. ②井村裕夫(編) : わかりやすい内科学, 第3版, 文光堂, p.317. 

1. 38℃以上の高熱の場合は、 健常者であっても原則運動療法❌は行わない。また、化学療法による白血球の減少により、感染性の熱発である可能性も疑われる。

2:白血球(特に好中球)数が減少すると感染症の発症リスクが高くなる。 好中球数500/1μL未満の場合は、リハビリテーションの実施場所を理学療法室からクリーンルームなどに制限するといった感染症対策が必要となる。

3. 骨髄抑制による急激な血小板の減少は、出血の危険性が高まるため、血小板 50,000/μ1 以下では運動療法を中止する。

3:血小板数の基準値は 150,000~400,000/μLであるため、血小板数 20,000/μLは血小板が極端に少ない値となる。血小板数が極端に少なくなると出血リスクが高くなるため、 積極的なリハビリテーション❌は行わず、セルフケアや自動介助運動などの低強度の活動に制限⭕する。

2. 輸血を必要とするレベルは重症な貧血であり、 ヘモグロビン 7.5 g/dl 以下では運動療法を中止する。貧血は、骨髄抑制による赤血球減少が原因と考えられる。

4. 不整脈の出現は急性心不全の可能性もあるため運動療法は中止する。また、アンダーソン土肥の運動中止基準からも、運動の中止が必要であると考えられる。

5. 急性白血病に羅患することで、倦怠感はあると考えられる。また、化学療法による副作用としても倦怠感や吐き気がみられる場合がある。重度の倦怠感の場合、注意が必要なこともあるが、訴えを確認し、 様子を見ながら運動療法を継続することは可能である。

 

1. 日本においては、乳癌の早期発見が可能になったこともあり、罹患数は増加傾向にある。

2. 我が国では、生活習慣の欧米化により近年増加傾向にある。

1. 乳癌の好発年齡は、40~60歳代である。

3. 好発部位乳房の外側上部で、約半数を占める。次いで、内側上部、外側下部、内側下部と続く。

5. 乳癌が転移する部位では骨が最も多く、そのほか肺や肝、脳などに転移する。

4.乳癌では、乳房を部分的に切除する乳房温存手術や、乳房を全て切除する乳房切除術などを必要に応じて施行する。

また、これらに腋窩リンパ節への手術を組合せることで外科的治療が行われる。

3.手術時に肋間上腕神経を損傷することがあり、腋窩付近に異常感覚を生じることがある。

2. 術後の随意運動減少による肩関節の可動域制限においては、挙上や外転、内旋, 外旋の制限を呈することが多い

5. リンパ浮腫の治療は、リンパ管静脈吻合術などの外科的治療以外に、保存的治療である「複合的治療」も行われる

複合的治療には、日常生活指導やスキンケア、用手的リンパドレナージ、圧迫療法、圧追下での運動療法が合まれる。

①辻哲也(編) : 標準理学療法学, 作業療法学, 言語聽覚障害学別巻, がんのリハビリテーション, 医学書院, p.53-56, 204. ②安保雅博, 他 : 上肢リンパ浮腫リハビリテーション, 包括的視点からのアプローチ, 三輪書店, p. 29. 

乳癌の術後で腋窩リンパ節郭清を実施した場合は、リンパ浮腫を重症化させないための予防·発見·早期対応の方法を指導する。

4. 圧痕性テストは、皮膚面に垂直に指腹を約10秒間かけて圧迫し、圧迫した痕が残るかどうかを確認するものである。リンパ浮腫が重症化すると組織が線維化し、圧痕性テストで圧痕が残らなくなる

次のような複合的な治療を指導する。

①スキンケア (皮膚を清潔に保ち、 感染予防·保湿を指導する)

②用手的リンパドレナージ(MLD : manual lymph drainage) (正常なリンパ管系まで直接リンパ液を誘導する)

③圧迫療法(弾性包帯や弾性者圧などの利用を促す)

④圧迫下での運動療法(圧迫下での運動でリンパ液をより多く排除する)である

リンパ浮腫発症の危険を最小にするための日
常生活における注意点には以下のものがある.

1:皮膚(保湿)や爪をよく手入れする.

2:バランスの良い食事を摂る.

3:きつい下着,衣服,腕時計,装身具を身につけない

4:効果の高い日焼け止めや虫除け剤を使用する。

リンパ浮腫理学療法としては,挙上,徒手リンパドレナージュ,圧迫,個別運動プログラムが行われる。

圧迫は流体静力学的圧よりやや高い 30~40 mmHg 程度の圧をかけての運動がリンパ排出に効果的である。

4. MLDはリンパ浮腫の患者のセルフケアにおいて重要である。 左腋窩リンパ節を郭清しているため、 正常な腋窩·鼠径リンパ節に向かいリンパ液および組織間液を誘導する。

3. 浮腫を改善させるためには、弾性着衣(スリーブ·グローブ)や弾性包帯を適切な方法で使用することが重要である。

5:エクササイズ/運動,患肢挙上を行う.その他,適正体重を維持する,リスクのある部位に外傷をつくらない,極端な寒さ暑さを避ける,予防的弾性着衣が処方された場合はそれを着用するなどがある。

2. 適正体重を維持する必要はあるが、 水分摂取の制限は必要ない

5. 就寝時や休息時は、 睡眠を妨げない程度の範囲でリンパ浮腫のある側の上肢を枕などで心臓よりも挙上(15 cm程度指先を高く)するように指導する。

1.採血や注射、血圧測定は浮腫のない側で行う

①辻哲也(編) : がんのリハビリテーション周術期から緩和ケアまで, 医学書院, p. 126-136. ②辻哲也(編) : 標準理学療法学, 作業療法学, 言語聽覚障害学別巻 がんのリハビリテーション, 医学書院, p. 63- 64, 203-211. ③細田多穗(監修) : シンプル理学療法学シリーズ 内部障害理学療法学テキスト, 改訂第2版, 南江堂, p. 369-370. 

1)辻 哲也(編) : がんのリハビリテーションマニュアル周術期から緩和ケアまで, pp123-124,医学書院 2011. 2)宮越浩一(編) : がん患者のリハビリテーション, pp269-271. メジカルビュー社, 2013.