肩関節周囲炎・腱板断裂

 

肩関節周囲炎は炎症期拘縮期回復期に分類され、炎症期では動作時痛のため自動運動が制限される。それとともに安静時痛や夜間痛も生じてくるようになる。拘縮期では、あらゆる方向へ肩関節の動きは制限されるが、疼痛は徐々に改善してくるようになる。その後、回復期になると、拘縮が微善され、徐々に可動域を取り戻すようになる。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200204191256j:image

退行性変化に伴う血行障害や運動障害による機械的刺激が基盤となり、主たる病態部位は上腕二頭筋長頭筋腱回旋筋腱板の炎症や癒着、断裂などである。

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1. 肩関節周囲炎、いわゆる凍結肩は「中高年に発症し、既知の疾患には該当せず、明らかな誘因がなく、肩関節の痛みと拘縮を来たす疾患」であると定義されている。したがって、腱板損傷や腱板断裂などの病態が明らかになっている疾患は含まれない

肩関節周囲炎は疾患の概念が明確ではなく有痛性の肩関節可動域制限を呈することが特徴である。

2. 50歲前後に生じる誘因のない動きの制限や疼痛を伴った肩関節の症候群であり、性差や左右差は特に認められない

1. 腱板は、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋から構成される。そのうち、最も断裂しやすいのは、棘上筋腱である。

4.広範囲断裂では、腱の変性とともに筋肉の伸縮性の低下が著明で、手術後の再断裂の頻度が高い
5. 腱板断裂を生じても臨床症状を呈さない無症候性断裂も存在する。

5. 拘縮や疼痛が著名な場合、局所麻酔や生理食塩水などを癒着,閉塞した肩甲下滑液包を開通させる関節腔拡張術(joint distension)や、全身麻酔にて徒手整復術(manipulation)や鏡視下開節包切除術などが行われる。

1. 理学療法評価として関節可動域,筋力評価は重要である。可動域についても、自動運動,他動運動にて実施することが望ましい。結髪,結帯動作時の痛みの出現や、痛みの生じる角度などの検査も行う。

2. 棘下筋腱断裂では、肩関節外旋の筋力低下を生じる。内旋の筋力低下は、肩甲下筋腱断裂の際にみられる。

3. lift-off テストは、肩甲下筋腱断裂を診断するためのテストである。手を背部の腰の高さに置き、その位置から手を後方に離す動作を行わせ、できなければ陽性となる。

2. オーバーユースでは急性期には安静が有効であるが、決して長期にわたってはいけない。1週間以内には自動介助運動から開始する。肩を動かさずにいると血行状態を低下させ、拘縮を増加させる可能性がある。

4. リハビリテーションは主に疼痛が治まる拘縮期に行われる。回復期ではリハビリテーションを行わずとも、徐々に日常生活での支障を来たさないようになってくることが多い。

①保存的治療:消炎治療(注射,内服薬),局所の安静,温熱療法,リラクセーション,肩関節可動域訓練

3. マニュプレーションは治療選択の一つである。関節可動域の改善を促す。

4. 筋硬結部への低周波電気刺激は有効な治療法の一つである。疼痛の軽減や関節可動域の改善を促す。

5. 軟部組織の可動性や微細血管の拡張に超音波療法は有効な治療手段である。

 

②関節鏡(内視鏡)手術

肩峰下面を削り断裂した腱を上腕骨に縫合
③術後リハビリテーション
術後3週間:外転装具を装着,安静,自動運動禁止
術後4週目以降:運動療法,温熱療法.(愛護的)関節可動域訓練,(挙上位から徐々に下げていく。内転運動は禁忌)
術後6~8週目以降:日常生活の軽作業開始
術後4~6か月以降:労働作業開始(完治は8か月~1年)

陶山哲夫 (監修)、赤坂清和(編):スポーツ理
学療法学、メジカルビュー社、p. 236-238.富士武史(監修):ここがポイント!整形外科疾患の理学療法、改訂第2版、金原出版、 p.98-114

松野丈夫,他(総編集): 標準整形外科学、第12版、医学書院, p.451-453. 中図 健 (編): 上肢運動器疾患の診かた,考えかた関節機能解剖学的リハビリテーション,アプローチ、医学書院、p. 54-57

細田多穗(監修):運動器障害理学療法学テキスト改訂第2版、南江堂、p.217-219.中村利孝 、松野丈夫(監修):標準整形外科 第13版、医学書院、p.441-442