骨関節・熱傷

 

1. I度熱傷は、表皮に限局した熱傷である。発赤や紅斑、疼痛を呈すが、水疱はみられない。

3. 手背の浅達性I度熱傷は、表皮と真皮浅層までの深度である。未破裂の水疱著しい疼痛があるが、基本的には瘢痕を残さずに治癒し、外科的治療は行われない
2. 深達性Ⅱ度熱傷は、真皮深層まで達する。水疱が形成されるが破れ、疼痛も生じるが、浅達性Ⅱ度よりは軽度である。
3. Ⅲ度熱傷は、皮下組織まで達する。羊皮紙様の壊死組織を生じ、疼痛はほとんど生じない。

3. Ⅲ度熱傷では、壊死組織のデブリドマン皮膚移植などを要することが多い。

5. 瘢痕の保存的治療には限度があり、植皮術やZ形成術などによる手術療法が必要となることも多い。
4. 熱傷指数(burn index)は、1/2x Ⅱ度熱傷面積(%)+Ⅲ度熱傷面積(%)で算出され、熱傷の重症度を示す。
①奈良 勲. 他(シリーズ監修), 立野勝彦(編) : 標準理学療法学, 作業療法学專門基礎分野, 整形外科学, 第4版, 医学書院, p. 165-167. ②上田敏(監修), 伊藤利之, 他(編) : 標準リハビリテーション医学, 第3版, 医学書院, p. 475 477. 

 

熱傷の受傷直後は、病院の熱傷ケアチームによる検査と評価が開始され、全身管理と並行して、理学療法を実施する。目的は、熱傷患部の関節拘縮予防、変形予防、機能回復である。本症例のような急性期から植皮時期の理学療法プログラムは、良肢位保持、体位変換、関節可動域訓練、呼吸理学療法などを実施する。

3. 植皮した創傷部へのアプローチの基準として、植皮部では7~10日、採皮部では1~2日は安静期間とする。皮膚の生着状態を観察し、医師との相談、指示のもと関節可動域訓練を行う。その他の部位に関しては、植皮部に影響がないように運動を行う。

熱傷患者は疼痛から逃れるために熱傷組織が伸展されない肢位をとろうとして四肢,体幹を動かし,屈曲 内転位をとろうとする.拘縮予防のためのポジショニングを行う必要がある.

1. 頚部は伸展~過伸展

1. 体幹は中間位に保持し、体幹屈曲による損傷皮膚の短縮を予防する。

1. 肩関節は90外転外旋位をとらせる。

2. 肘関節を伸展~軽度屈曲とし,前腕は回外位をとらせる.

5. 手掌熱傷では手関節20伸展、母指水平外転、MP PIP. DIP伸展位を保持する。なお、手背熱傷では手関節15~20伸展、母指45対立 外転、第2~5MP関節屈曲、PIP DIP 伸展位を保持する。

3:股関節の届曲.外旋位は禁忌であり,軽度外転位をとらせる.

4:膝関節は伸展位をとらせる。

5:足関節は背屈位をとらせ植皮定着を促進させる。

①石川 齊 他 : 理学療法技術ガイド, 文光堂, p. 1027-1037. ②中村利孝, 他(監修), 井桶栄二, 他(編) : 標準整形外科学, 第13版, 医学書院, p. 479-480. ③細田多穂, 他 : 理学療法ハンドブック, 第3巻疾患別, 理学療法基本ブログラム, 改訂第4版, 協同医書出版社, p.669-679. ④江藤文夫, 里宇明元(監修) : 最新リハビリテーション医学 第3版, pp400-405, 医歯薬出版, 2016. ⑤細田多穂, 柳澤 健(編) : 理学療法ハンドブック 第3巻 疾患別, 理学療法基本プログラム改訂第4版, pp659-687.協同医書出版社, 2010.

 

【解剖学】

骨組織の形成過程は、

①膜性骨化と

②軟骨内骨化の2種類に大別される。

長幹骨をはじめとする骨格の大部分は軟骨内骨化によって形成されるが、頭蓋骨や鎖骨の一部は膜性骨化で形成される.膜性骨化は軟骨形成を経ずに直接に骨が形成される様式である。

 

1:肩鎖関節脱臼では肩鎖関節部に強い圧痛.
叩打痛を認め、肩関節可動域は疼痛のために制限されやすい。また、鎖骨外側端が上方へ突出(転位)して、その鎖骨端を押し込むと整復されるが手を離すと元の位置に戻る現象(ピアノキーサイン)がみられることがある。交通事故やコンタクトスポーツ(ラグビーや柔道など)の際、肩関節内転位で肩峰を強打して受傷しやすい。

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エックス線所見では,肩鎮関節脱臼のRockwood (ロックウッド)分類type Ⅲ に相当すると考えられる。若年者やスポーツ選手において, Type Ⅲ以上の重症例は手術の適応である。

2:肩関節脱臼の多くは上腕骨頭が関節窩の前下方に脱白する前方脱臼であるが、その方向には腋窩神経へ通じる腕神経叢が存在すによって強く圧迫を受けるのは腋窩神経であり、腋窩神経麻痺を合併しやすい。

3:肘関節脱臼は脱臼後の前腕骨近位端の位置によって前方、後方、側方、分散に分類されるが、後方脱臼が90%を占める。肘関節伸展位、前腕回外位のまま手掌をつくように転倒
したときに生じやすい。

阻血性骨壊死(無腐性骨壊死)ー骨組織の感染症以外の何らかの理由により壊死するf:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200207142707j:image

偽関節ー不十分な固定や感染,骨欠損などが原因で、骨折部の癒合過程が停止し,異常可動性
を示す状態である。

受傷後6ヶ月以上たっても治癒しない骨折のこと

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鎖骨中3/1

大腿骨頭部骨折ーピプキンの分類

 

エックス線写真は大腿骨頚部骨折(陷入型完全骨折)でありGarden分類 Stage II である。
術後の写真では骨接合術が行われている.術後の生活を見据え,術前の理学療法を行う.

1. 偽関節を生じやすい。

3:Garden 分類は大腿骨頸部骨折に対しての重症度分類である.

1:松葉杖などを使用するため,上肢の筋力が必要であり,上肢機能練習を行う.

2:腓骨神経麻痺を防ぐため,良肢位の保持を行う.
3:深部静脈血栓症の予防のため,患側足関節は動かす(ポンピング).

4:転位を防ぐため,患側股関節は安静にする(=他動運動は行わない).

5:合併症があるとリハビリテーションの強度進行に影響を及ぼすため,呼吸理学療法や口腔ケアも大切である.

 

画像は大腿骨転子部骨折である.

1, 4:血流量の多い海綿骨の骨折のため,血流量が乏しい関節内骨折と比較して骨折治癒の条件は良く,偽関節も生じにくい。

2:関節包外骨折であり,軟部組織や髓内からの
血行が期待できる.

3:大腿骨転子部骨折の重症度分類は主にEvans分類が使用される.

5:荷重により骨折部へ強力な内反・短縮応力が作用したり,腸骨大腿靭帯の牽引力により転位で整復不良をきたしたりする.
①中村利孝, 松野文夫(監修) : 標準整形外科学 第13版, pp794-796, 医学書院, 2017. ②医療情報科学研究所(編) : 病気がみえるvol. 11 運動器, 整形外科, p318, pp330-333, メディックメディア, 2017. ③高柳清美, 他(編) : シンプル理学療法学シリーズ 運動器障害理学療法学テキスト改訂第2版, pp149-156, 南江堂, 2016.

 

2:術式はエックス線写真よりy-nailと分かり,y-nail は髄内釘固定であるため脱白肢位はない.今後の起立.歩行練習時に浮腫が下肢機能の阻害因子となる場合があるため,早期から患側下肢を挙上位に保持し,浮腫改善を目指す.

1. ピン挿入部に発赤,熱感,腫脹などが生じていない場合には,痛みをできるだけ起こさないで股関節,膝関節の屈伸運動を行って良い.

3:固定性が良好であれば比較的早期から荷重は可能である。

4:Evans分類においてType I のGroup3であり,
小転子の骨片がみられる.そのため,小転子の骨癒合が得られていない場合は,小転子に付着部をもつ腸腰筋の筋力増強運動は禁忌である.

5:術後は股関節周囲筋の機能低下が著しいため,固定性が良好であれば機能改善を目的にセラバンドを用いた股関節外転筋力の筋力増強運動は実施すべきである。.
①中村利孝, 松野文夫(監修) : 標準整形外科学 第13版, pp794-796, 医学書院, 2017. ②高柳清美, 他(編) : シンプル理学療法学シリーズ運動器障害理学療法学テキスト 改訂第2版, pp149-165, 南江堂, 2016.

 

脛骨骨幹部骨折(特に骨下 1/3骨折)は力学的問題に加え血行動態が悪いことから、骨癒合が遷延し、荷重制限期間が長くなる。この期間に骨折部以外の筋や骨の萎縮を予防するために免荷装具が処方される。大腿部の運動は問題ないことから、免荷装具は膝蓋腱部で主に荷重を受けるPTB (Patella Tendon Bearing)免荷装具が選択される。PTB免荷装具には、パッテン底を使用して完全免荷する免荷十分型と、一部足底が接地する免荷不十分型がある。

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①高田治実(監修), 豊田 輝 他(編) : PT-OTビジュアルテキスト 義肢,装具学, 羊土社, p.297-298. ②中村利孝, 他(監修), 井桶栄二, 他(編) : 標準整形外科学, 第13版, 医学書院, p.805-806. 

 

1. 腓骨疲労骨折の好発部位は遠位 1/3と近位1/3で、前者は疾走型と呼ばれ走る競技に多く、後者は跳躍型と呼ばれ跳躍の繰り返しにより発生する。両者とも予後は良好で保存療法で治癒する。
2. 骨折後、無負荷の期間が長くなると不動性の骨萎縮がみられるが、外傷によっても著しい浮腫と循環障害をきたす。四肢末梢部の骨折後、とくにColles 骨折,手根骨骨折,踵骨骨折などに伴いに急速に生じるのがSudeck (ズーデック)骨萎縮であり、反射性の血管運動神経障害によるものと考えられている。CRPS
(Complex Regional Pain Syndrome) 複合性局所疼痛症候群の症状であり、強い疼痛、浮腫、チアノーゼを伴う。
3. 偽関節は骨の癒合機転が完全に停止したものを指す。偽関節を起こしやすい骨折は手の舟状骨骨折、上腕骨近位端骨折、大腿骨頸部骨折、脛骨中下1/3骨折、距骨骨折である。
4. 脛骨天蓋骨折(プラフォンド骨折) は高エネルキギー外傷による骨折で、軟部組織が乏しい脛骨遠位骨幹端から足関節面に生じる。粉砕骨折となっている場合が多く治療は長期化する。大腿骨頭部骨折やColles骨折、脊椎椎体圧迫骨折などは骨粗鬆症を有する高齢者に多い。

5. 下腿皮下骨折は骨折部に皮膚の開放創がなく、保存的に治療可能であることが多いが、下腿開放骨折は骨折部が露出して創部感染を起こすりスクが高い。下腿は軟部組織の被覆が少なく開放骨折になりやすい。
細田多穂(監修), 高柳清美,他(編) : シンプル理学療法学シリーズ 運動器障害理学療法学テキスト, 改訂第2版, 南江堂, p. 137-147. ②奈良 勲(シリーズ監修), 網本 和(編) : 標準理学療法学 専門分野, 物理療法学, 第3版, 医学書院, p. 85. ③松野文夫 他(総編集), 馬場久敏, 他(編) : 標準整形外科学, 第12版, 医学書院, p. 816-817. 

5:膝蓋骨脱臼はほとんどが外側脱臼である。バスケットの構えの姿勢(トリプルスレット)や切り返しの際など、膝関節軽度屈曲,外反位で足を固定したまま大腿骨を内旋したときに受傷しやすい。

 

1. 脛骨骨幹部骨折(特にさ骨下 1/3骨折)は力学的問題に加え血行動態が悪いことから、骨癒合が遷延し、荷重制限期間が長くなる。この期間に骨折部以外の筋や骨の萎縮を予防するために免荷装具が処方される。大腿部の運動は問題ないことから、免荷装具は膝蓋腱部で主に荷重を受けるPTB (Patella Tendon Bearing)免荷装具が選択される。PTB免荷装具には、パッテン底を使用して完全免荷する免荷十分型と、一部足底が接地する免荷不十分型がある。

 

強直性脊椎炎は、 脊椎と仙腸関節が侵される疾患である。

好発年齢は 20歳代で、男女比は9:1(2:1や3:1
などの記載もあり)と男性に多い
2. 初期症状として、股関節、 膝関節、肩関節などの大関節に関節痛や関節炎を生じるが、 これらの関節炎は進行が遅く、徐々に強直を示し動かなくなる。

3. 血液検査では、 血沈の充進がみられる。なお、リウマトイド因子は陰性である。

4. 関節症状以外に、虹彩毛様体炎やブドウ膜炎、大動脈弁閉鎖不全などを稀に合併する。

5. 初期から四肢の関節痛炎症が生じる。