脳血管障害②、高次脳機能障害

 

SIAS には上下肢の5項目の運動機能、腱反射、筋緊張、触覚、位置覚、関節可動域、疼痛、座位、腹直筋筋力、高次脳機能、言語、健側大腿四頭筋筋力握力の項目がある。SIASは評価項目が多いが、1項目1課題の評価であり、簡便に評価できる。

非麻痺側機能、体幹機能、高次脳機能は評価項目に含まれる

運動機能は原則座位

排泄コントロールは含まれない

1. Brunnstrom法ステージの基準がFugl-Meyer 評価法にも評価項目として一部含まれている

1. Fugl-Meyer Assessment は、上肢、手指、下肢の運動機能と協調性の項目を含んでいる。

1. 運動機能,バランス,感覚機能,他動関節可動域,関節運動痛について評価するものである。

NIHSS は意識、運動、感覚、協調性、高次脳機能などの項目があり、3または4段階で評価する。そのうち感覚は針刺激(pin prick)で検査,評価する。急性期から回復期までの病巣の広がりと重症度を判断できる。

視野障害の項目があるのはNIHSSである。

GCSは大分類で3つに分類され、①開眼(eye opening)はE1~4、②言葉による応答(verbal response)はV1~5、③運動による最良の応答(best motor response) はM1~6で構成されている。最小スコアは3点となる。

臨床場面を想定したBerg Balanse Scaleでは、動的バランスの評価が14項目あり、そのうち方向転換は360度で評価する。

modified Rankin Scale は脳卒中による障害の重症度の尺度で、脳卒中転帰評価に用いる。7段階で評価される。

Grade 0 (まったく症候がない)
Grade I (症候はあっても明らかな障害はない)日常の勤めや活動は行える。
Grade 2 (軽度の障害)発症以前の活動が全て行えるわけではないが、自分の身のまわりのことは介助なしに行える。
Grade 3 (中等度の障害)何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える。
Grade 4 (中等度から重度の障害)歩行や身体的要求には介助が必要である。
Grade 5 (重度の障害)寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする。
Grade 6 死亡

①石川 朗(総編集): 15 レクチャーシリーズ理学療法テキスト 神経障害理学療法学I、中山書店、p. 83-91. ②道免和久(編) :脳卒中機能評価-予後予測マニュアル、医学書院、p.20-25.③水尻強志,他(編):脳卒中リハビリテーション早期リハからマネジメントまで、第3版、医歯莱出版、p.71

行き~はよいよい、帰りはこわい。ふろ、車イスはよいほうから~、トイレ、低いまたぎはこわいほう!

リスク管理下で理学療法を行う、急性期の理学療法の主な目的は,

廃用症候群の予防と

②新たに起こる合併症の防止, 

③早期離床である。

1. 臥床時間の延長は,筋力低下などの廃用症候群につながりやすい,そのため,早期より理学療法を実施し,拘縮筋力低下を中心とした運動機能低下の予防に努める

1. 等尺性の筋力増強運動❌バルサルバ効果による血圧上昇が危惧されるため、急性期では避けることが望ましい。

5:意識障害や麻痺症状から臥床を余儀なくされるため,発症早期よりポジショニング体位変換を行うことで褥瘡を予防する。

ポジショニングの目的は、 

①不良肢位での拘縮の防止と

②異常な姿勢反射の抑制である。

背臥位は緊張性頚反射や静的迷路反射の影響を最も受けやすいので、 筋緊張の異常に注意する。
1.背臥位では、 異常な姿勢反射を誘発しないように、 頭部は低い枕で支える。

2. 麻痺側からの刺激を増やすために顔を麻痺側に向ける。また、顎部の非麻痺側への回旋は、 非対称性緊張性頚反射の影響によって、 麻痺側上下肢の屈筋群の緊張を増大させる。

3. 麻痺側上肢は、麻痺側肩甲骨を前方へ引き出すように肩の下に枕を入れて、 その上に肘を伸展、手関節軽度背屈、手指を伸展させて、上肢全体を挙上させる。

4. 手指の屈曲拘縮予防としてハンドロール❌を用いることは、かえって筋緊張の増大を引き起こすため望ましくない。弛緩性麻痺伸展拘縮の危険が予測されるときに使用する。

memoしかし、 手指の屈曲拘縮がすでに生じた場合には、爪が手掌にくい込むのを予防したり、清潔を維持したりする目的でハンドロールを使用する。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200204172026j:image

5. 下肢のポジショニングは、骨盤の下から大腿にかけて枕を置いて、骨盤後傾とそれに伴う股関節の外旋を予防=膝下に枕は入れない(膝関節伸展⭕)する。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200204172157j:image

尖足予防を目的足底に板を当てる❌という考えも,かえって底屈筋の緊張を増加するために効果的ではない.むしろ, ふとんなど重みを足部にかけないように離被架(りひか) (bed-credle)の使用が勧められる。実践的には足底板は弛緩性が主体の例に使用される。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200204172134j:image

5. 長時間背が位をとることは下肢の伸展パターンを強める可能性があり,左右交互の側が位による屈筋、伸筋のバランスをとることが重要である。(側が位では上位が届曲,下位が伸展優位となる)

水尻強志·他(編) : 脳卒中リハビリテーション 早期リハからケアマネジメントまで, 第3版, 医歯薬出版, p.138-139. 千野直一·他(編) : リハビリテーション MOOK No.2 脳卒中リハビリテーション, 金原出版, p. 62. 福井圏彦 他 (編) : 脳卒中最前線 - 急性期の診断からリハビリテーションまでー, 第3版, 医歯薬出版, p. 99-101.

柳澤 健(編) : 理学療法学 ゴールド.マスター.テキスト5.中枢神経系理学療法学, マジカルビュー社, p. 49-50. 石川朗(総編集) : 15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト神経障害理学療法学I, 中山誉店, p. 53-62. 福井圈彦(監修), 前田真治 : 老人リハビリテーション 第7版, 医学書院, p. 34-40. 

2:意識障害や麻痺症状のため臥床を余儀なくされることがある.そのため,早期(可能なら2~3日目)より関節可動域運動を行う(少なくとも2週間以内 : 拘縮予防の観点から)ことで可動域制限を予防する.

一般に、脳出血で発症後数日以内。脳梗塞で発作直後から開始する。

関節固定後の研究では,正常な関節固定の場合,満岡は3週間の固定後のROM 訓練にて改善、Evansらは30日以内の固定後では可逆的改善、八百坂も30日以内の固定後でも正常に回復したと報告している. しかし,脳卒中後では筋の緊張異常が加わることや上記の関節固定での結合組織性変化が2~3週から出現することから,発症後少なくとも2週間以内にROM 訓練を行う必要がある。発症早期から痙性の増強のみられる場合もあり,可能なら早期(2~3日目)より訓練を開始する。

2. 本症例はJCSⅡ-30であり、離床基準に満たないためベッドアップは行わない。24時間神経症候の増悪がくJCSⅡ-10 以下で、その他運動禁忌の心疾患がない場合に離床開始となる。

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2. 脈拍の測定は、本症例では電図モニターで心拍数を確認するのがよい。心原性脳塞症の場合、心房細動を有し、橈骨動脈での脈拍数と心拍数に乖離が生じる恐れがあるためである。

1. アンダーソン.土肥の訓練中止基準に該当するため適切ではない.訓練中止基準として140拍/分を超える場合は運動を中止する.120拍/分を超える場合は一時中止し,回復を待って運動を再開する。

40,120

70,200

140

40,20

1:脳卒中急性期での血圧上昇は❌膀胱の充満,嘔気,痛み,低酸素血症,頭蓋内圧亢進,脳出血再発の危険性が考えられる.

また,血圧低下は起立性低血圧の可能性がある.そのため,ベッドアップ座位から段階的に座位練習を行う.その際には適宜血圧などのバイタルサインの確認を行いながら理学療法を実施する必要がある。

本来,脳では,血流を一定に保ち,代謝を維持するためにさまざまな調節·代償機構が働いている。

脳血流は,①脳灌流圧と②脳血管抵抗によってコントロールされており、 脳灌流圧は血圧の変動に伴って直線的に変化するが, 血圧60~150mmHg の範囲では血管抵抗を変化させて脳血流を一定に保つ機能がある(脳血流自動調節能:図6)。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200204163138j:image

この機能により,健常者では.脳血流は一定に保たれ, 血圧変化による影響を受けにくくなっているが, 特に脳卒中を伴う高血圧患者では血流低下と調節能の障害が存在し,さらに急性期の脳卒中患者では, この機能が失われ,わずかな血圧の変化でも脳血流に影響しやすくなっている
また、 何らかの原因で, 脳への血液(酸素や栄養)供給が途絶えると, 虚血の中心部は高度に血流が低下し,やがて壊死して脳梗塞に至るが、その周囲には, 血流の低下によって神経活動は停止しているものの梗塞には至っていない、ペナンブラといわれる可逆性の領域が存在する(図7)。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200204163209j:image

血流が低下すると, 血管を拡張して脳血液量を増加させ,さらには組織での酸素の取り込み(酸素摂取率)を増やして代謝を維持しようとするが, この酸素摂取率が増加した状態は,“貧困灌流”といわれ, 梗塞に至る一歩手前の,ギリギリの状態を示す。 ペナンブラでは,まさにこの “貧困灌流” の状態にあり,急性期治療では, ペナンブラが梗塞に至らないよう,脱水や食事·姿勢などによる血圧変化に注意することが重要となる。

脳卒中治療ガイドライン2015(日本脳卒中学会)」においても早期離床および早期座位練習の重要性は謳われており、その目的として廃用症候群や合併症の予防、活動性の拡大、運動機能回復、神経組織の可塑性変化を促すことが挙げられる。より積極的な早期離床は、脳血流量の自動調節能の破綻を念頭に、厳密に血圧をモニタリングしながら、できるだけ早い時期から座位練習を開始する。主治医との綿密かつ十分な協議のうえ行うが、座位耐性訓練基準なども参考にして座位練習を行う。座位練習を行うにあたり、事前に離床計画の立案と患者と家族への十分な説明が必要であり、実施中も血圧のモニタリングとリスク管理、環境整備などが必要となる。

1. 実施頻度は朝食,食事時1日2回から始め、安定してきたら毎回の食事に行う。
2. 意識レベルが1桁で積極的に座位練習を開始する。

2. 2桁では主治医と連携をとり注意深い観察(顔色、表情、あくび)、バイタルサインの的確なチェック。

2. 3桁ではベッド上ギャッチアップ程度の座位保持は可能であるので積極的に取り入れたい。
3. 開始前、直後、5分後、15分後、30分後(初回は5分ごと)に血圧と脈拍を測定する。

4. 1日目ベッド上での30ギャッジアップ座位5分間保持することから開始する。

4. 2日目40にするか、5分間延長

4. 50ギャッジアップ座位で膝を軽く曲げる(体が前方へ滑らないように)

4. 60,20分ー食事などを取り入れる

49 90,20分ー端座位、足底が十分着くように
5. 実施の際は事前に患者と家族に十分説明する。

①鈴木俊明 他(編) : Crosslink 理学療法学テキ
神経障害理学療法学I 脳血管障害, 頭部外傷, 脊髓損傷, メジカルビュー社, p.85-89. ②水尻強志, 他(編) : 脳卒中リハビリテーション 早期リハからマネジメントまで, 第3版, 医歯薬出版, p. 124-126. 

 

脳卒中片麻痺患者の急性期では、多くの患者に嚥下障害が認められる

嚥下障害により、

栄養障害や脱水、肺疾患などの罹患率、死亡率の増大に影響を与える。

そのため、嚥下障害を呈する脳卒中片麻痺患者では、スクリーニング検査、嚥下造影検査、内視鏡検査などに基づいて、速やかに栄養摂取経路(経口,経管)を管理し、食形態の調整も含めて他職種によるアプローチが必要である。

1. 急性期脳卒中患者の多くが低栄養状態に陥る。栄養状態の評価を実施し、

7日間以上の十分な経口摂取が困難な者に対する発症早期からの経腸栄養が勧められている。

1. 急性期には、嚥下障害スクリーニング検査によってリスクの高い嚥下障害を抽出する必要がある。
2. 脳卒中片麻痺患者の嚥下障害は、食べ物を口に取り込み咀嚼する「準備期」、ロ唇の閉鎖や舌尖の挙上、舌体の運動によって食塊を喉頭まで運ぶ「口腔期」と舌骨挙上や喉頭挙上、喉頭蓋下垂、披裂の内転と挙上による嚥下反射が生じる「咽頭期」に多い
3. 水飲みテストは一気に水30 mLを飲み干させ、飲み方とむせ、声質の変化を判断する。肺炎発症と相関がみられる
4. 食事の際のポジショニングでは、頸部を前屈位とすることで嚥下反射を誘発しやすくなり誤嚥のリスクを軽減させることができる。
5. 下咽頭収縮不全は球麻痺にみられる症状で、これに対しゼラチンゼリー、プリン、ババロアなど変形能の高いものが推奨される。

摂食·嚥下訓練における間接訓練とは食物を用いずに行う訓練で、摂食·嚥下に関わる器官の働きを改善させることを目的とする。

1:頭部挙上訓練(Shaker exercise)では舌骨上筋群が強化され、嚥下反射時の喉頭挙上を改善することで食道入口部の開大を促す。(咽頭)

3: Mendelsohn手技は、 喉頭挙上の強化による食道入口部の開大を目的とする。(咽頭期)
memo 空嚥下をさせて喉頭を最も高い位置に挙上したときに、その位置で数秒間保持させる(嚥下時に喉頭は前上方へと動く)。

2:口すぼめ呼吸は、鼻咽腔閉鎖機能、口唇閉鎖機能、軟口蓋筋力、気道内分泌物喀出力の強化を期待できる。(口腔期、咽頭期)

4:ブローイング訓練は、吹く動作(口腔気流)により鼻咽腔閉鎖に関わる神経·筋群の活性化が促進される。
memo 吹く動作により軟口蓋を挙上させる訓練である。

5:皮膚のアイスマッサージは、 唾液腺 (耳下腺、顎下腺)上の皮膚や口唇周囲を寒冷刺激器でマッサージすることで、唾液を減少させる (唾液分泌を抑制する)手技である。

①江藤文夫·他(監) : 最新リハビリテーション医学、第3版,医歯薬出版, 2016, pp 264-267.②聖隷嚇下チーム:購下障害ポケットマニュアル, 第4版,医歯薬出版、 2019,pp 107-108, p 110, pp 112-113, pp l17-119, p 159.

1. フードテストや反復唾液嚥下テスト、 水飲みテストは、ベッドサイドで評価することも可能である。
2. ティースプーン1杯(約4g)のプリンや粥、 液状食品の嚥下の後に、開口してもらう。
3. 嚥下がみられない場合は1点となる。2点以上は嚥下がある。
4. フードテストでは、嚥下後、反復嚥下を2回行わせる
5. 嚥下があり、呼吸変化はないが、むせや湿性夏声がみられ、口腔内残留を中等度伴う場合は、3点となる。
上田 敏(監修)、伊藤利之·他(編): 標準リハビリテーション医学、 第3版、 医学書院、 p. 260.
小口和代 (編) ; CLINICAL REHABILITATION 臨時増刊号摂食瑞下リハビリテーションにおける機能評価、医歯薬出版、 p.685-686

仰臥位か側臥位か
麻痺のある患者では、摂食時に 「健常側を下, 麻痺側を上」にした半側臥位で頭部を患側に向けた姿勢をとるようにするのがよいとされる,重力で食物は動きのよい健常側に落ちるため,嚥下がスムーズになる(口腔, 咽頭ともに健常側のほうが動きがよい). 顔面神経麻痺を伴っている場合は、麻痺側の歯と頬の間(口腔前庭)に食物が残る。麻痺側を上にしていれば口腔内の食物残留を少なくすることができる。また、 頭部を患側に回旋させると, 咽頭において患側の梨状窩が狭くなり、食塊の残留が少なくなることが知られている。
このように、理屈のうえでは確かに半側臥位をとったほうが嚥下にはよさそうだが、実際に介助してみるとやりにくいことが多い (図 5-6),患者の協力がないと不可能とさえいえる。

筆者は可能ならば半側臥位で食べてもらい、ごくわずかに患側の肩の下に枕をかう程度の仰臥位でもよしとしている。ただし、 「健常側を上,麻地側を下」という逆は絶対いけない。 誤嚥の危険性も高くなるばかりか,麻痺側の肩を痛めてしまう。なお、食塊は咽頭の反射に作用して梨状窩側の梨状に残留しやすいため、 わずか 10~20度でも半臥位をとると。

重力が食

(麻連側,上になった方)に残りにくい。
これは誤嚥防止や食道への送り込みにも有利に働く。

介助者の立つ位置は 「健側」 がよい、 ①患者の注意が健側に向きやすい (特に半側空間無視の患者では顕者), ②健側を下にした半側臥位をとった場合は, 患者の顔が健側に向くことなどが理由である。

離床が可能ー立ち上がり、歩行練習に進むf:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200201162437j:imagef:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200201164616j:image

問題文の「中等度の擦性」「内反尖足位」「膝上からの圧迫」がポイントとなる。

イラストで示された装具は下腿を前方に押し出そうとする力と足底を上に持ち上げようとする力をBのベルトが後方へ押し返している、この三点固定の原理ではBのベルトが最も重要な役割を果たす。

よってBのベルトを最初にかけることで足関節部を固定する。

次に内反尖足位となるため, 前足部Cのベルトをかけて固定する.

最後に膝の上から圧迫を加えて踵部を浮き上がらないようにした状態でAのベルトをかけ固定する.

この順番でベルトをかけることにより症性の
抑制効果,下肢の支持性向上, 膝の安定性向上が期待できる。
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CI療法は、脳卒中の上肢麻連に対する治療法のなかでも世界的に実践されている治療法で、「脳卒中治療ガイドライン2015」においても軽度の片麻痺に対して「グレードA (強く勧められる)」として掲載されている。

CI療法は、学習性不使用の克服と患肢再使用による脳の可塑性を理論背景とし、手指に関する体部位領域が損傷された後も手指を使い続けると、他の身体部位に関わる領域に手指の体部位表現を認めたり、手指の体部位領域が拡大したりする。
1. CI療法の目的は、非麻痺側を拘束(ミトン、アームスリング)し、麻痺側上肢の学習性不使用の克服患肢の再使用による脳の可塑性変化である。

1. 麻痺手の機能に応じた難易度調整が施された課題志向型練習を行う。容易すぎず困難すぎない課題に調整する。

1. 練習によって獲得された機能を実際の日常生活に反映させるための生活指導を行う

2. 直接的に半球の興奮性を操作する手段として、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)とCI療法を組み合わせた運動療法も実施されている。
2. CI療法中は治療者による徒手的介入を最小限に抑えて、主に口頭でフィードバックを行う

2. 自主練習として1日6時間の訓練を必要とする。

2. 痛みがあっても適応になる.

3. MMSE 20 /30 以上を適応条件とする。

3. 歩行が自立していることが適応条件である。ただし、杖,装具の使用は構わない。

3. 上肢機能に随意性がまったくない場合は適応外となる

麻痺側上敗を随意的に使用する運動である。麻痺側上肢機能は、手関節随意伸展 20以上かつ、1~3指のMP 関節随意伸展10以上可能なレベルを有している必要がある。

3. セルフケアの自立が適応条件となる。

原寬美, 他(編) : 脳卒中理学療法の理論と技術, 第3版, メジカルビュー社, p. 418-431. 鈴木俊明, 他(編) : Crosslink 理学療法学テキスト神経障害理学療法学1障害, 頭部外傷, 脊髓損傷, メジカル脳血管ビュー社, p.124-125. 奈良 數, 他 : 脳卒中理学療法 ベスト,プラクティス科学としての理学く法の立場から, 文光堂, p. 77-78. 藤島一郎, 他 : 地城包括ケア時代の脳卒中 慢性
期の地域リハビリテーション エビアンスを実践につなげる, メジカルビュー社, p. 128. 


3. Brunnstrom法は、脳卒中片麻痺の回復は、共同運動の出現から始まり、それを分離する形で進むとするもので、神経筋促通法の一種である。神経発達学的視点は含まない。

神経発達学的概念を重視するのはBobath法である。
4. 認知運動療法は、片麻痺の回復促進のためには、運動に関連した認知過程の強化が重要であるとするものである。麻痺側でなぞらせた物について言語表現させるのは、認知運動療法である。運動性下行路の再建や強化は少ない。
5. 促通反復療法は、新たな促通法を用いて患者が意図した運動を実現させ、それを反復することによって、目標とする運動性下行路の再建や強化を目指すものである。
奈良 勲,他(シリーズ監修)、川平和美他(編):標準理学療法学,作業療法学 専門基礎分野、神経内科学、第4版、医学書院、D. 192-194.猪狩哲夫:臨床リハビリテーション臨時増刊脳卒中リハビリテーンョンの最前線、実践とエビデンス、医歯薬出版、 2017、26(11): 1079-1081, 1091-1092

 

Strumpell 現象とは, 片麻痺にみられる dyssynergia (協働収縮異常症)を示す現象の一つである。背が位の患者の膝の上から抵抗を加え,これに抵抗するように患者に随意的に股関節および膝関節を屈曲させると、足関節の背屈と軽い内転が起こり,さらに母跳が強く背屈してくる。

 

1. Brunnstrom 法ステージは上肢、手指、下肢ともにⅡであり、随意運動はなく連合反応のみ出現する段階のため、現時点での分離運動の促通は時期尚早である。
2. ベッド柵や紐を利用しての起き上がり動作は、非麻痺側上肢で引く動作となり過剰な力が入りやすく、麻痺側上肢屈曲、下肢伸展といった異常パターンの誘因になるため不適切である。
3. 片麻痺患者は安楽座位で骨盤後傾位となっていることが多く、健常者の約 50%程度の範囲内でしか骨盤を動かすことができない。骨盤の前傾運動は座位での体幹·骨盤帯の抗重力運動の基本となるため、プログラムとして取り入れる。また、 本患者のように起き上がりに介助を要する症例には、起き上がり自立のためにも座位での骨盤前傾が大切である。 座位バランス練習は、上肢のリーチ動作などと併用して展開していくことが好ましい。
3. 非麻痺側である右膝を 90°より深く屈曲させた立ち上がりを指導する。非麻痺側の膝の方向に体幹を前傾させて非麻痺側の足部に荷重しながら、非麻痺側の下肢に力を入れて立ち上がるように指導する。

3. 下肢のBrunnstrom法ステージはⅡであり、分離と支持性が不十分であることからAFO (Ankle Foot Orthosis :短下肢装具)での歩行練習は現時点では困難である。KAFO (Knee Ankle Foot Orthosis RTEA)平行棒内での立位保持能力が向上したら、他動的な介助歩行へ進め、立位姿勢の動的保持練習として行う理学療法士は、姿勢調節のためのフィードバック情報を患者に伝え、必要な人的介助を行う。
①千野直一. 他 : リハビリテーションMOOKNo.2 脳卒中リハビリテーション, 金原出版, p.66, 69. ②細田多穗(監修), 植松光俊, 他(編) : シンプル理学療法学シリーズ中枢神経障害理学療法学テキスト改訂第2版, 南江堂, p.97. ②石川 朗, 他 : 15 レクチャーシリーズ理学療法テキスト 神経障害理学療法学 I, 中山書店, p. 106, 112. ③千田富義 他 : リハ実践テクニック脳卒中, 第3版, メジカルビュー社, p. 162. 

 

60歳の女性。右被殼出血による左片麻掉。発症から1か月が経過。Brunsrom法ステージは左上肢、手指、下肢ともにⅢ。立位姿勢では左足部に claw toe と内反尖足がみられ、左下肢への荷重が不十分である。

1. 全身のリラクゼーションを図り、体幹、四肢の運動の自由度が広がるよう促しながら身体のアライメントを改善させる。リラクゼーションには温熱療法を併用したストレッチングが有効である。
2. 内反尖足に対しては、可能な限り立位で足底からの感覚入力を促すことで、後脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋の抑制効果が得られる。足底全体を接地させ下腿の傾きを保ちながら荷重していき、踵をしっかり床へ押し付けていく。十分荷重させたら骨盤を軸とした上体のアライメントの修正を行う。
3. タッピングは筋収縮を促す手法である。内反を伴った尖足は、下腿三頭筋と後歴骨筋の筋緊張が強く、タッピングを行うことは適切でない。
4. 内反尖足の影響因子である下腿三頭筋を伸張し緊張を緩めることが重要である。このまま放置することによって筋の短縮をきたし、立位保持や歩行を著しく困難にする拘縮状態に陥ることが考えられる。
5. 内反尖足傾向がみられた場合は、十分な荷重と骨盤を中心としたアライメントの修正による内反尖足の抑制を行い、外側Tストラップ付装具の使用を考える。
①黒川幸雄, 他(シリーズ監修), 吉尾雅春(編) :理学療法 MOOK2 脳損傷理学療法2 回復期から雑持期のリハビリテーション, 第2版, 三輪書店, p. 60-61. ②細田多穗, 他(編) : 理学療法ハンドブック, 第3巻疾患別, 理学療法基本プログラム, 改訂第4版, 協同医書出版社, p. 20-21. ③千田富義, 他(編) : リハ実践テクニック脳卒中, 改訂第2版, メジカルビュー社, p.88. ④福田圆彦, 他(編) : 脳卒中最前線 急性期の診断からリハビリテーションまで, 第3版, 医歯薬出版, p. 124. 

 

脳卒中片麻痺患者にみられる麻痺側肩関節の亜脱臼は、①三角筋や棘上筋などの肩関節周囲筋の弛緩性麻痺、②麻痺側上肢にかかる重力による下垂、③肩関節包や靭帯の伸張、④大胸筋の筋緊張亢進や短縮などが原因で生じる。発症早期から麻痺側肩関節の他動的関節可動域運動と良肢位の保持を行い、管理を怠らないようにすることが肩関節痛に対する最る大切な予防法である。

1:亜脱臼は、背臥位では認められなくても重力の影響で上腕が下方に率引されやすい座位時に確認されることがあるため、測定時の肢位に注意する必要がある。

2:アームスリングの使用で肩関節内転、内旋、肘関節屈曲位となり、長期間の使用では肩と肘の拘縮が生じやすいため、使用は最小限にして、肩の自動運動や自動介助運動を行うようにする。
memo アームスリングは肩の安静を保つにはよい方法であり、管理が行き届かない早期や肩の急性炎症期では使用する意義があるが、亜脱臼の根本的な治療あるいは予防とならない

肘屈曲タイプのアームスリングでは,肩関節内旋位,肘関節90屈曲位,前腕回内外中間位,手関節中間位とする.良肢位は前腕回内,手関節,手指伸展位,母指軽度外転位である,また,スリングは両肩(体幹)で懸垂する.

 

3:肩甲骨の可動性が上肢近位部の随意性向上に必要なので、肩甲骨の挙上運動を行うようにし、収縮が弱い場合には非麻痺側に抵抗を加え、連合反応を利用すると肩関節周囲筋群の緊張を高めることができ、結果として亜脱臼の予防につながる。
memo 関節包や靭帯がいったん伸張されてしまうと、その改善は困難となるので、まずは予防が重要である。

4:関節運動を行う際には、①過度な運動を避け疼痛のない範囲での運動にとどめる、 ②運動時には上腕骨頭部を把持して関節窩との位置関係を保ちながら行うなどの注意が必要となる。
memo不良なアライメントでの運動が原因で生じる軟部組織の損傷を予防する。

5:早期からの上肢の自動挙上運動は特定の筋の痙縮を高めやすく、筋のアンバランスやアライメント不良を引き起こす危険性があるため、肩甲骨周囲筋を含めた自動介助運動から行うようにする。
細田多穂(監) : 神経筋障害理学療法学テキスト, シンプル理学療法学シリーズ, 南江堂, 2018, pp 156-157. ②原寬美, 他(編) : 脳卒中理学療法の理論と技術, 第3版, メジカルビュー社, 2019, pp 352-353. ③日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会(編) : 脳卒中治療ガイドライン2015, 追補2017 対応, 協和企画, 2017, pp 303-304. 

 

右頭頂葉障害では,

病態失認,左半側空問無視,着衣失行がみられる。 

図1は半側空間無視の評価でよく用いられるダブルデージーである。花の絵を模写させてその内容を吟味する。
患者が模写した図2では左右ともに花びらの左側を見落とし、左側の葉の見落としもみられ、左半側空間無視と判断できる。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200212112513j:image
基本的検査法は、抹消試験、模写試験、線分二等分試験、描画試験であり、これらは、BIT行動性無視検査日本版(BIT)[4]の通常検査に含まれている
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設問にあるpusher現象は、 脳卒中片麻痺において非麻痺側が接触面を押し、麻痺側に倒れこむ現象(非麻痺側の上下肢を強く外転,伸展して身体を麻痺側に傾斜させる症状)を示す。

視床後外側部、島後部、中心後回皮質下が責任病巣とされている。

座位、立位などあらゆる姿勢で重心が麻痺側に偏位し、非麻痺側上下肢で床や座面を押して、 他動的に姿勢を正中位にしようとする他者の介助にも抵抗する。麻痺側方向に倒れることに対して無関心な点も特徴である。

治療原則として、視覚的手がかり (垂直指標、座位姿勢の歪みを理解させる)が有用とされている。

現象症例は自覚的身体的垂直判断が麻痺
側に傾斜している一方、自覚的視覚的垂直判断が比較的保たれているため、垂直指標に体軸を合わせるよう指示することで身体の傾斜を修正することができる。

1:視覚的手がかりとして垂直指標の提示は、姿勢の認知的な歪みを理解させるとともに、身体と環境との関係を認知させることができる。

垂直な構造物(点滴棒や壁の模様などの垂直線)や鏡を目視し体幹の傾斜を自分で確認し修正させる。

1:Pusher症候群では, 視覚的な垂直判断を利用したアプローチが推奨されており,自己身体軸の垂直軸からの偏位を修正するような鏡を利用したトレーニングが有用である.

3. 閉眼❌は身体傾斜の視覚的認知を妨げる

4. pusher現象を呈する患者は自覚的身体的垂直判断が麻痺側に傾斜しているため、単に身体を垂直に立てるように口頭で指示❌しても姿勢の修正につながらない

4:楔状マットを麻痺側殿部に挿入し、非麻痺側への荷重を行う。
memo麻痺側方向に非麻痺側上肢で押してしまうため、麻痺側骨盤を挙上すると押してくる力に拮抗するように安定化が図られる。

5:非麻痺側上肢のon elbow-on hand の反復動作は随意的な重心移動課題となり、過剩な筋緊張を抑制することができる。

5. 身体軸が正中軸を越えるような自発的なリーチの誘導も非麻痺側への傾斜の促進に有効とされている.

2:壁を麻痺側と背面に位置した状態で立位練習を行うことにより, 身体の傾斜を防ぐことができる。

6. このように環境設定を行うことでPusher症状が生じていても立位トレーニングが実施可能であり、自己身体軸を認識するためには空間位置関係の学習を立位で実施することも重要である。

2:杖や手すりなどを用いると非麻痺側上肢で押し返してしまうため、 あえて杖を使用しないという選択肢を考慮する。

4, 5:手すりを使用すると押してしまうほど重度な場合は, 押さない状況をつくるために使用しないという選択もある.

3:立ち上がりの際に手すりを使用する場合、縦方向の手すりと横方向の手すりとでは明らかに押す現象が異なることがあり、縦方向の手すりは立ち上がりが容易なので可能であれば利用する。

 

2. 理学療法士は患者の左側に位置し、 注意喚起をしながらあえて左側から積極的に話しかけるなど刺激を入れる。

1. 左半側空間無視では体幹の向きが方向性注意に関連しており、体幹の左回旋を促す。動作中の半側空間無視に関連する症状の改善が期待できる。

3. 体幹の向きは方向性注意障害に関連しているため、 左に回旋させて机上課題をさせた際には、正中位で机上課題を行った場合よりも改善する。

1. 患者自身は左側を見落としているつもりはなく、口頭指示だけでは探索活動は改善しにくい。目印を見つけることを手がかりにし、 次の行動を起こす過程を学習することで、 左側にある環境に気付くことができる場合がある。

4.右から左への視覚走査レーニングは左半側空間無視を改善させる。

4. 視覚探索練習は、ベグポードなどを右から左へ連続移動させて完成させる課題である。

5. 左空間への視覚的手がかりの提示により、ブレーキのかけ忘れといった左半側空間無視に関連する症状の改善が期待できる。

2. 左半側空間無視では、プリズム順応訓練が行われるが、その際視野は右方向へ偏倚させる。効果の持続性が高いことが報告されている。

5. プリズム療法は、視野を右に10偏倚させるプリズム眼鏡をかけ、前方にある目標物に手を伸ばすよう指示する。最初は目標物からずれてしまうが徐々に順応し、目標物が指せるようになる。プリズム眼鏡を外すと,プリズムに順応した影響で正中に近いところを指すよ
うになる。

5. 視野が右へ偏位するプリズム付眼鏡をかけてりーチ動作を行わせる。

4. 左頭部筋への経皮的電気刺激療法(TENS) は、半側空間無視の改善効果が認められている。

後頚部経皮的電気刺激およびカロリック刺激とは、左への感覚刺激によって右方への偏りを矯正するものである

3. 反復経頭蓋磁気刺激は、刺激側の大脳半球を高頻度刺激で興奮、低頻度刺激で抑制する。非損傷半球(左大脳半球)低頻度刺激での抑制は半球間抑制による損傷側半球への過剰な抑制を低下させ、左半側空間無視を改善する。

3. 反復経頭蓋磁気刺激 (repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)は、刺激の反復頻度により逆の作用をもつ。5 Hz以上の高頻度では刺激局所の活動性が賦活されるのに対し、1 Hz以下の低頻度では、 活動性は抑制される。

①潮見泰藏(編) : 脳卒中に対する標準的理学療法介人一何を考え, どう進めるか?, 第2版, 文光堂, 2017, pp 137-147.②吉尾雅春(編) : 脳損傷理学療法1-超早期から急性期のリハビリテーション, 第2版, 理学療法MOOKI, 三輪書店2005, pp 122-131. ③石川朗(総編) : 神経障害理学療法学1,15レクチャーシリーズ理学療法テキスト中山書店, 2011, pp 136-139. ④原寬美, 他(編) : 脳卒中理学療法の理論と技術, 第3版, メジカルビュー社, 2019, pp 448-458. ①石川 朗, 他(編) : 15レクチャーシリーズ理学療法テキスト 神経障害理学療法学1pp137-139, 中山書店, 2011. ①原寬美, 古尾雅者(編) : 脳卒中理学療法の理論と技術改訂第2版, メジカルビュー社, p.421-440. ①石川 朗《総編集) : 15 レクチャーシリーズ理学療法テキスト 神経障客理学療法学I, 中山書店, p. 135-144. ①石川 朗(総編集), 大畑光司, 他(責任編集) : 15 レクチャーシリーズ 理学療法テキスト学療法学I, 中山書店, p. 135-142. ②石合純大 : 高次脳機能障害学, 第2版, 医蘭葉出版, p. 121-147, 151-174. ①水尻強志, 他(編) : 脳卒中リハビリテーション早期リハからケアマネジメントまで, 第3版, 医歯薬出版, p. 162. ①千野直一, 他(編集主幹), 大橋正洋, 他(編) : リハビリテーションMOOK No. 2 脳卒中リハビリテーション金原出版, p. 146-154. ①細田多穂(監修), 植松光俊, 他(編) :シンプル理学療法学シリーズ 中枢神経障害理学療法学テキスト, 改訂第2版, 南江堂, p. 156-160, ①細田多穂, 他(編) : 理学療法ハンドブック, 第1巻理学療法の基礎と評価, 改訂第4版, 協同医書出版, p. 577-585. 

 

失語症は大脳の言語領域の病変により、 意味内容の符号化あるいは言語機能の解読が難しい状態、すなわち聴く、話す、読む、 書くという言語機能が障害された状態と定義される。

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1:Wernicke失語では、自発語は流暢で多弁であるが、話の内容は情報量に乏しく空虚であり、意図する語とは異なる語を表出したり(錯語)、 意味のわからない内容を流暢に話し続けたりする(ジャーゴン)。
memo聴覚的理解が重度に障害される。

2:全失語は言語の表出、理解、復唱がいずれも重度に障害され、発話は全くみられず無言の状態か、強く働きかけたときにみられる意味不明の発話(発声) であることが多い。

3: Broca失語では、書字による表出も言語による表出と同程度に障害されて、書字困難なことが多い。
memo聴覚的理解よりも表出の障害が重篤で、自発語は努力的でぎこちない(非流暢性)。

4:伝導失語は復唱能力の障害であり、聴覚的理解や読解は良好である。
memo自発語は流暢であるが、音韻性錯語が出現して語の誤りを修正するため、部分的にぎこちない印象を受ける。

5:皮質性感覚失語では、聴覚的理解が重度に障害されるが、復唱は比較的良好である。
memo一方、超皮質性運動失語は、言語の復唱は良好だが、自発言語が障害される。
①千野直一(監) : 現代リハビリテーション医学, 改訂第4版, 金原出版, 2017, pp 164-169. ②江藤文夫 他(監) : 最新リハビリテーション医学, 第3版, 医歯菜出版, 2016, pp 171-176. ③石合純夫 : 高次腦機能障害学, 第2版, 医歯薬出版, 2012, pp 23-50. 

 

人の顔を認識できない相貌失認は,両側の紡鍾状回損傷でみられやすい,

敬礼のまねができない観念運動失行(=パントマイム障害)は,左縁上回障害で生じる.

日常生活でよく使用する道具の使用方法が分からない観念失行は,左半球の角回を含む頭頂葉後方障害で起こる。

失行とは、学習された意図的行為を遂行する能力の障害であり、中枢神経系の損傷により生じる。失行の一般的特徴として、

①学習された動作が全て、いつも障害されることはない

②同じ動作でもできるときとできないときがある

誤り方が一定しないことが多い、

④口頭命令よりも模倣による動作の再現の方が容易である、

⑤物品を使う身振りよりも実際の使用の方が容易である、

⑥日常生活場面ではうまく道具を使えているが、検査場面のような意図された場面ではうまく使えないことが多い (検査場面よりも日常生活場面の方が容易)があげられる。

memo失行は、①運動障害(動作を行う筋群の麻痺、 失調、不随意運動なとど)がないこと、 ②失語による理解障害がないこと、③認知障害や視空間性障害がないこと、 ④重度の
認知症や全般性注意障害がないこと、 ⑤動作を正しく遂行するために必要な感覚·視覚障害がないことが条件となる。
①石合純夫 : 高次脳機能障害学, 第2版, 医歯薬出版, 2012, pp 61-78. ②千野直一 (監) : 現代リハビリテーション医学, 改訂第4版, 金原出版, 2017, p 257.

 

Balint 症候群とは、視覚性注意障害(空間性
注意障害)、 精神性注視麻卓、視覚失調の3徴候からなる症候群であり、典型的な病巣は両側の頭頂-後頭領域である。

1:提示された対象物を見続けることができないのは精神性注視麻痺の症状である。 精神性注視麻痺では、任意の視覚対象に意図的に視線を向けることが難しく、 またその視線も固定できなくなる。

4:Bálint 症候群の患者にも、しばしば盲人のように手探りで物を探したり移動したりする様子がみられるが、これは失明によるものではない。

5:同時に2つ以上の刺激を提示しても1つしか認識できないのは視覚性注意障害の症状である。そのため視覚性注意障害では、例えば1つのものを注視しているときにライターの火を傍らから近づけても瞬目反射がみられず、
その存在に気づかない。
なお、残りの1微候である視覚失調とは、眼前の視覚対象をとらえたとしても、 それを的確につかむことができない(対象から手が逸れてしまう)症状である。
①安保雅博 (監) : リハビリテーション医学, PT
OTビジュアルテキスト専門基礎, 羊土社, 2018, p 154, ②石合純夫 : 高次脳機能障害学, 第2版, 医歯薬出版, 2012, pp 184-185. ③鈴木孝治·他(編) : リハビリテーション評価, 高次脳機能障害エストロシリーズ3, 医歯薬出版, 2006, Pp 109ー114.

 

失明しているにもかかわらず「見えている」と主張するのはAnton症候群の症状である。

 

Gerstmann 症候群は, 左角回の障害によって生じる. 手指失認·左右失認·失算 失書の4微候
を呈する。

 

脳出血は、頭痛、嘔吐、回転性めまいの三徴候と失調症状が代表的な症状であるが、めまいと嘔吐が主症状で、四肢の失調が目立たない病型も存在する。一般的な小脳症状として、滑らかな動きができない、立位や歩行時にふらつく、四肢の協調運動障害、眼振、構音障害などがある。

前庭小脳が障害されると平衡感覚と眼球運動障害が生じ、運動失調、体幹失調、眼振などが起こる。

脊髄小脳の障害では、虫部の障害で体幹や上下肢近位、中間部の障害で上下肢遠位筋に障害が生じ、いずれも企図振戦、筋緊張低下、測定異常などを認める。

大脳小脳の障害では、運動開始の遅延、運動速度低下、運動失調、反跳現象などが起こる。
1. 小脳出血を発症すると、激しい後頭部痛、回転性めまい、反復する嘔吐が突然現れる。
3. 発症時には意識障害はなく、時間経過とともに脳へル二アによる意識障害を呈することがある。
4. 小脳出血では、血腫が小脳側から脳幹を圧追するため、橋背側にある傍正中橋網様体(PPRF)が障害されることがある。大脳からPPRFに至る線維がPPRFの直前(交叉したあと)で障害される。このため、病巣と反対側への共同偏視が起こる。
5. 小脳出血では四肢麻痺を認めない。
①田崎義昭 他 : ベッドサイドの神経の診かた, 改訂18版, 南山堂, p.345-355. ②安德恭演, 他 :イラストでわかる PTOT. ST のための神経内科学, メディカ出版, p.70. 

小脳は随意運動の調節に関与しているが、この神経回路において大脳連合野(特に前頭前野)と密接な線維連絡を有している。そのため、大脳皮質自体に損傷がない小脳出血であっても、大脳,小脳神経回路の損傷によって高次脳機能障害が起こり得る。小脳病変による高次脳機能障害は小脳性認知情動症候群
(cerebellar cognitive affective syndrome : CCAS)と定義され、遂行機能障害、空間認知障害言語障害(失文法や構音障害など)、人格変化の(不適切な行動や情動の平板化など)といったいわゆる前頭葉症状を呈することが指摘されている。

①鈴木俊明, 他(編) : 神释障害理学療法学I一脳血管隨害, 頭部外傷, 脊髓損傷, CroSslink 理学療法学テキストジカルビュー社, 2019, pp 15-19. ②原寬美(監)高次脳機能 : 障害ポケットマニュアル, 第3版, 医歯薬出版, 2015nn 2021(3原寬美,他(編) : 脳卒中理学療法の理論と技術, 改訂第3版, メジカルビュー社, 2019, pp 294-295.

【解剖】

1. 原小脳(原始小脳)は、系統発生学的には小脳の中で最も古い。次いで古小脳、新小脳と続く。
2. 小脳は脳幹と3対の小脳脚(上小脳脚、中小脳脚、下小脳脚)によって結合する。
3. 小脳皮質は、表層から順に、分子層、神経細胞層(Purkinje 細胞層)、顆粒層の3層に区別される。
4. 小脳には、小脳の出力核である4つの核(室頂核、球状核、检状核、歯状核)がある。その中で最大なのは歯状核である。
5. 顆粒層には顆粒細胞が密集しており、その中にはGolgi 細胞が散在している。分子層には、星状細胞やバスケット細胞が散在している。

運動学習には2つの重要な回路が機能している。

基底核回路(大脳皮質-基底核回路)

②小脳回路(大脳-小脳連関)

運動療法基礎】
運動技能の要素は、①フォーム、②正確さ、③速さ、④適応性(環境が変化してもパフォーマンスに影響なし)の4つである。これに恒常性を加えることもある。運動技能のトレーニングでは、①~④の順に指導するのがよい。
石川 朗(総編集) : 15 レクチャーシリーズ理学療法テキスト, 運動学, 中山書店, p.139, 中村隆一, 他 : 基礎運動学, 第6版補訂, 医歯業出版, p. 472-473. 

【臨床運動学】

学習のフィードバックは、内在的フィードバックと外在的フィードバックに分けられる。身体運動や環境に対する運動の帰結より自動的に生じた学習のフィードバックを内在的フィードバック、指導者や教育者から得られる
フィードバックを外在的フィードバックと呼び、KR(結果の知識)は外在的フィードバックに含まれる。
1. KR を与えることによって「考える」 ことを要求するため認知的負荷は上がる。
2. KR は運動申、 もしくは運動直後に与えると効果的である。
3. 付加的フィードバックとは、 何らかの人工手段によって学習者に戻される情報である。運動自体よりも運動の結果について得られた情報を KR と呼ぶ。
4. KR を与える頻度が高いほど運動学習の効率は増加する。
5. KR 後に挿入活動を行っても運動学習効率は変わらない。
①中村隆一·他 : 基礎運動学, 第6版補訂, 医歯薬出版, p.467-500, 大橋ゆかり (編) : ビジュアルレクチャー 基礎理学療法学, p. 105-109. 

KRとは、付加的フィードバックと呼ばれ運動(反応)の結果に関する情報であり、一般的に運動終了後に与えられるものである。 KRには、情報、動機づけ、強化の働きがあり、児童や成人、個人や集团のいずれでも学習やパ
フォーマンスの向上に役立つと言われている。
1. 複雑な課題を用いた場合では適切な行為を達成するために多くのフィードバックが必要となる。そのため複雑な課題では高頻度 KR付与によって学習効果が得られる。運動学習を促進するKR付与の頻度は課題難易度により異なる。
2. KR付与までの時間が長い(遅延)ほど、保持している情報が忘却され学習効率を低下させる。
3. 試行間間隔が長い(但しKR遅延は一定)場合、 KR後遅延の延長を意味し、KR後の情報処理が十分に行われるため効率は増加する。試行間間隔は「試行間間隔= KR遅延+ KR後運延」の関係にある。KR後遅延の短縮は情報処理が阻害されると考えられている。しかしながら、延長しすぎても運動情報の忘却が生じ
る。
4. KR遅延中の挿入活動は、学習効率を低下させる。
5. 正確なKRを付与することは、学習効率を向上させる。
①中村隆一, 他 : 基礎運動学, 第6版補訂, p.471-483. ②細田多穗, 他(編) : 理学療法ハンドブック1巻 理学療法の基礎と評価, 改訂第4版, 協同医書出版社, p.107-127. 

1:強化学習とは、過去の経験に基づいて好ましい動作を選択して順序を組み立てていく学習であるが、この学習に深く関与しているのは大脳基底核である。

5:快,不快という情動信号をもたらすドパミン作動性二ューロンが存在するのは大脳基底核である。報酬によって応答し、報酬を最大化するよう手続き的に学習する。

側頭葉皮質前部(Brodmann 38野)→扁桃体視床背内側核一前頭眼窩皮質→鉤状束→側頭葉皮質前部からなる、Yakovlev(ヤコブレフ)回路(情動,感情に関与する神経回路)に含まれる。

そのうち小脳回路は、主に大脳皮質からの情情報と運動に関する感覚情報の間の誤差修正に基づき、運動指令を書き換えるシステムとして働く。

4:運動学習には、運動制御に関与している大脳皮質-皮質下回路のシナプス可塑性が重要とされているが、小脳で確認されているシナプス長期抑圧 (long-term depression : LTD) は、この可逆性に関わる現象である。運動の結果が好ましくなかったとき、その誤差信号が小脳の出力細胞であるPurkinje 細胞へと送られ、よくない結果に関与したシナプス伝達が持続的に抑制されることは、運動学習の成立に重要とされる。

3:感覚フィードバックは実際の運動出力で生じた誤差を検出し、その誤差を減少させるのに必要な情報であるため、誤差学習を行う場である小脳の機能に重要である。

内部モデルは運動制御を説明するために重要な神経機構である。内部とは脳内にあることを意味し、 外界の情報を処理して運動を発現させる。

2.内部モデルは運動出力その結果得られた感覚フィードバック対応づける機能を果たす。

2:内部モデルとは、運動出力と意図したパフォーマンスとの誤差を検出するために、他のシステムの運動特性をコピーしたモデルをいう。

5. 運動経験によって、内部モデルによる運動出力とその結果の照合が行われる。この繰り返しによって、再度、運動を行う際の予測に活用される

1. この内部モデルは最適な運動指令としていわば「上書き保存」のような状態であり、学習過程において常に修正されていく

1. 内部モデルの更新によって運動の滑らかさが可能となるが、この更新は小脳が担っていると考えられている。

4. 内部モデルが形成されるまでは予測的な運動を制御することは困難であるが、 感覚フィードバックがメインとなり運動制御を行う

3. 動作を行う前に運動結果から運動機能を予測したり、運動後得られる感覚フィードバックを予測したりするが、内部モデルが働かなくなるとフィードフォワード系の運動制御に困難性を来たす

①長谷公隆 (編著) : 運動学習理論に基づくリハビリテーションの実践, 第2版, 医歯薬出版, 2016, pp. 13-31, pp. 74-薬出版, 78. ②中村隆一.他 : 基礎運動学, 第6版補訂, 医歯2012, pp. 150-154. ③道免和久(編) : ニューロリハビリテーション, 医学書院, 2015, pp 97-103. ④市橋則明(編) : 運動療法学一障害別アプローチの理論と実際, 第2版, 文光堂, 2014, pp135-147. ⑤原寬美, 他(編) : 脳卒中理学療法の理論と技術, 訂第3版,メジカルビュー社, 2019, pp 413-416. ⑥宮井一郎(編著) : 脳卒中の神経リハビリテーション新しいロジックと実践, 中外医学社, p.19-29. ⑦細田多穂(監修), 植松光敏·他(編) :  シンプル理学療法学シリーズ 中枢神経障害理学療法学テキスト, 改訂第2版, 南江堂,  p. 285-295. ⑧大須理英子 : 運動の制御と学習, リハビリテーションの視点から,  認知神経科学, 2005, 7 : 217-219. 後藤淳 : 運動失調に対するアプローチ, 関西理学, 2014, 14 : 1-9. 

1. 初期相(認知相)は順序や段取りを意識する段階である。運動技能を獲得するには、まず運動課題の目標を理解し、それを達成するためにどのような運動が必要であるか、さらにその運動を巧みに行うにはどうしたらよいのかを知る必要がある。「何を行うか」を理解することから学習は始まる。初期相で得られるのは宜言的知識である。宣言的知識とは言葉で説明できる知識である。
2. 中間相(連合相) では、個々の運動が滑らかな協調運動へと融合して、系列運動へと移行する。「何を行うか」から「どのように行うか」へ変化する時期で,中間相では宣言的知識手続き的知識に変換され、次第に自分の運動を言話的に説明することが難しくなる。
この時期を運動段階ともいう。手続き的知識とは行為に関する知識であり、反復練習によって意識せずに秩序だった行動が可能になる知識であり、ノウハウとも呼ばれる。
3. 中間相では様々な運動の手続きが試され、過去の運動経験から得られた記憶と新しく得られた求心性感覚情報を比較照合しているときで、運動プログラムを形成する運動前野などが活動し始める。初期相は環境における感覚入力に基づいて前頭葉、側頭葉、頭頂葉連合野が統合的に活動する。
4.最終相(自動相) は、中間相からの延長である。最終相に至ると、空間的,時間的に高度に運動の統合が行われるため、無駄がなく、速く、滑らかになる。手続きは自動化されて運動に対する注意が減少し、運動遂行に言語が不要になる。
5.最終相では大脳の連合野の活性化は少なくなり、大脳基底核などによって運動の調整が行われる。これまでの記憶に基づき補足運動野が運動プログラムの形成を行う。

運動成熟前は、前頭連合野、運動前野、頭頂連合野小脳などが主に働き

習熟後は基底核からの情報を補足運動野が受け取る

①患者に理想とする運動パターンを言葉で教示しているとき

②患者に運動課題を提示しつつ説明して いるとき=メンタルイメージ(MI)の段階

③患者が運動を試行作誤しているとき=メンタルプラクティス(MP)の段階
④患者が正しい運動パターンを反復練習しているとき=手続き記憶に変換される段階
⑤患者が実際の生活環境で実践しているとき =手続き記憶に変換された後の段階

①細多穗(監條),藤縄 理 他(福): シンプル理学療法学シリーズ運動学テキスト、改訂第2版、南江常,p.318-319,中村隆一、他:基礎運動学、第6版補訂、以南薬出版,p 482

 

PNF の rhythmic stabilization は小脳性運動失調に有効である.Frenkel 体操は失調に対する運動ではあるが、視覚,聴覚,触覚を利用して運動を随意的にコントロールする運動であるため,眼振がある本症例には適さない.

 

熟練した学習のために責任がある皮質の再組織化は、 特にそれが手- ものの間の相互作用
に関連しているときに,使用に依存している.運動の機能的なパターン,あるいは動きに必要な筋が一緒に表象されるようになるのは,使用を通してである. 体性感覚入力の表象についても,同じことがいえる。 これは, 練習を通して生じる。 さらに示してきたように, この構造の再組織化は, スキルあるいは活動の学習を必要とする課題を通して, 最もよく達成される。それはまた,課題に対する注意を必要とする.受動的な運動と強度の訓練は,この皮質の再組織化を引き起こすのに効果的ではない. Katieのような,手のスキルが不十分な子どもは、多くの場合,避けたり,巧級運動課題があまりに拙劣なため,彼らの仲間よりも実際に練習量が少ないと思われる。スキルは, アクティビティーに対する注意を必要とし,結果に対しての興味があるときに,促進される. 手のスキルが不十分な子どもは, 彼らのパフォーマンスのレベルと興味に適合するアクティビティーを選択して適応させる必要があるだろう. セラピーの技術は、 子どもの能力の範囲内で子どもに挑戦して、子どもの熱狂的な協力を引き出すアクティビティーを提供することができることである.

①鈴木孝治·他(編) : リハビリテーション評価, 高次脳機能障害エストロシリーズ3, 医歯薬出版, 2006, Pp 109ー114.