臨床運動学 姿勢・歩行

 

1. 閉眼時は開眼時と比較し、頭部の身体動揺が大きい。頭部>腰部

 

立位姿勢は、

①抗重力機構及び

②外カによって起こる重心移動をもとに戻す機構

によって維持されている。

1. 高齢者の姿勢は、円背に伴う骨盤の後傾、股関節、膝関節の屈曲が特徴であり、加齢による筋力 関節可動域.バランス能力の低下などが原因として考えられている。
2. 立位姿勢における重心動揺は、70歳代以降で著しく大きくなる
2. 高齢者は、腰椎が後弯した円背姿勢となりやすい。
3. 高齡者の立位姿勢における重心は、後方に変位しやすい。
4. 身体重心に近い股関節での姿勢制御戦略をとりやすい。
5. 運動機能の低下を関節の固定性を増大させて補うため同時収縮による活動が増加する。

安定性を向上させる一方、スムーズな動作遂行を阻害し、転倒を誘発する可能性もあるとされている。

 

歩幅の減少

股関節屈曲または伸展制限が著明にある場合に起こる。

 

腰椎後弯

 

ハムストリングスの短縮や下肢の前進による意図的なこと、腰痛や腰椎伸展制限により起こる。

 

立脚中期における過度の体幹前傾
常歩行において、股関節伸筋群の筋力低下がある場合、踵接地時に過度の体幹前傾がみられることがあり(ジャックナイフ現象)、 この患者の右大殿筋筋力は2なので歩行の特徴として考えられる。

 

Trendelenburg 微候
股関節外転筋筋力低下や内転筋の痙縮もしくは短縮で起こるが、Daniels らの徒手筋カテストの段階4では起こらない。

Trendelenburg徴候

主に中殿筋筋力低下の場合にみられる。中殿筋は立脚相で遊脚側骨盤の落下抑制に作用し、筋力3以上を必要とする。

 

立脚中期の膝関節伸展

大腿四頭筋の筋力低下があると、 それを代償するために立脚初期の体幹前傾および立脚中の膝関節伸展がみられるようになるが、 この患者の右大腿四頭筋筋力は5なので衝撃吸収および膝のコントロールは問題ないと考えられる。この歩容変化で膝の関節包後面が過伸張し、立脚相で膝の過伸展がみられるようになる。


立脚期の踵離地不十分
下腿三頭筋(特にヒラメ筋)の筋力低下や足関節または中足骨頭の痛み、過度な足背屈は立脚中期~終期に踵離れが不足する。

フォアフットロッカーの減少

下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)の主要な働きは、足関節底屈運動と蹴り出し時の足関節の安定であり、これらの作用が阻害されるとフォアフットロッカー機構が破綻するが、この患者の右下腿三頭筋筋力は4なので足関節は安定していると考えられる。 

 

遊脚後期の膝過伸展傾向
ハムストリングスは急激な過伸展(ターミナルインパクト)を防ぐが、筋力低下のため行えず、膝過伸展傾となる。
盆子原秀三, 他 : 印象から始める歩行分析, 医学書院, p.44-68. 中村隆一. 他 : 基礎運動学, 第6版補訂, 医歯薬出版, p. 410-415. 

 

鶏歩

前脛骨筋の筋力低下で生じるが、この患者
の筋力は5なので考えにくい。

[文献] ①Hislop HJ.et al (津山直一.他訳) : 新 徒手筋力検査法,原著第9版,協同医書出版社, 2014,pp 402-403.
2松澤正,他:理学療法評価学,改訂第6版,金原出版,2018,pp 183-185.

③ Neumann DA (Andrew PD、他監訳):筋骨格系のキネシオロジー,原著第3版,医歯薬出版, 2018,pp 738-739, pp 747-748, pp 752-759.

④伊東元 他(編):運動学,標準理学療法学,作業療法学(専門基礎分野),医学書院,2012, p 225.