各姿勢の特徴と分析の視点【背臥位】

   重力と支持基底面との関係で、姿勢保持のための筋活動は変化する。

 

   ここでは、背以位・座位・立位姿勢について、力学的・構造学的・運動学的視点から特徴を示し、 分析の視点について概説する。

 


背臥位姿勢

1)カ学的特徴

   支持基底面が広く、重心の位置が低く、かつ偏りが少ないため力学的に安定している。

 

   姿勢保持のための筋活動が少なく、休息を取るのに適している。


2)構造学的特徴
   支持基底面に接する身体部位が限られ、軟部組織による面と骨隆起部による点で支えられている。


   力学的特徴により一見安定しているが、点で支えられる身体部位は回転しやすく非対称性を生じやすい。

 

   背臥位では後頭隆起、胸椎と仙骨、踵骨、肩甲骨、肘頭などが点で支える部位で、これらは褥瘡好発部位としても知られている。


3)運動学的特徴

   寝て気持ちが良いと感じて、なおかつ疲れにくい背部の形状は、腰部の前弯が支持基底面より2~3cm離れた状態で立位時の1/2にあたる(図8)。

 

   これは、体にかかる重力の方向が90° 違うことと身体体節間を連結する筋活動が少なくなるためである。


   ところで、構造的に床から浮いている身体体節には回転作用を制動する筋活動が起こりやすい。

 

   例えば股関節では、下肢の重量により腸腰筋と内旋筋が伸張され、これらの反射的な活動により骨盤は前傾する(図9)4。

 

   骨盤の前傾により腰椎の前弯が増強すると、骨盤を安定させるため背筋群が活動しやすい。

 

   このようなケースではリラックスできないため背臥位では就寝できなくなる。

 

 

   背臥位からの運動は、すべて抗重力活動でありテンタクル活動とブリッジ活動に大別される(図10)。


   テンタクル活動では、運動開始時に挺のレバーが最大となるため大きな力を必要とする。

 

   また、これを安定させるための腹部の筋活動が必要になる。

 

   これが困難になると、運動はブリッジ活動が優位になる。

 


4)姿勢観察のポイントと分析の進め方
   左右対称性と床面に接する身体部位を確認する。


   頭尾方向に観察すると、体幹や骨盤の回旋を確認しやすい。

 

   観察から得られた情報からは、構造的な問題(拘縮)や筋緊張の不均衡が示唆される。


   分析を進めるためには、これを確認する触診や検査測定が欠かせない。


   背臥位でリラックスできているかを確認するには、各々の身体体節を軽く揺すってみて判断する。

 


   動的な筋緊張については、頭部や四肢を誘導したときの抵抗感や全身に広がる筋活動の状況から判断する。

 

   すなわち、構えを変化させる操作で身体体節間の筋連結を促し、問題点を明らかにすることである。

 

   例えば、下肢を空間に保持(placing)させるよう誘導してみたとき、落下せずに保持できるか、連結している骨盤に動揺が起こるかを観察する。

 

   腹都の低緊張が存在すれば骨盤の動揺は大きくなり、支持側股関節の伸展活動が現れやすい。