触診のコツ

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触診のコツ「人体に含まれるモノの性質を理解する」
2019年9月4日コラム, 勉強法, 疼痛, 福留良尚, 解剖学, 運動器疾患


人体には200以上の骨があり、400種類600以上の筋肉(骨格筋・平滑筋・心筋)が存在します。

リハビリ職種の「触診」とは、一般的にこれらの触り分けを意味する場合が多く、筋肉の起始停止、骨のランドマークを覚えることが、学生時代の必須課題です。

実際に上手く触れるようになるには臨床経験も必要ですが、骨や筋肉の名前を覚え、形や走行をイメージし、「今自分が触れているのは○○だ」と意識して経験を積み重ねていくことが大切です。

 

しかし、5年経っても10年経っても適切に触れていない人が多いのは何故でしょうか?

 

その理由について、今回は検証していきます。

 

目次
◆何に触れているのか?
◆人体の半分以上は水分
◆触診のコツ
◆TGA(Tissue gliding approach)
◆何に触れているのか?
リハビリ職種の触診は、皮膚の上から触ります。

皮膚を介して筋肉に触れたり、皮膚と筋肉を介して骨に触れたりします。

 

人体は「層構造」をしているのです。

 

 

この層を意識せずに触れていると、深さをコントロールすることが出来なくなり、乱暴に触ってしまったり、時には痛みを伴わせたりすることがあります。

どの層に向かって触診しているのかを意識しなければならない、ということです。

 

そして、下の画像を見てもらうと分かるように、白い繊維組織と言われるものが縦横無尽に連なっています。

 

この皮膚や筋肉、骨の間にある繊維組織が人体を形成していることを、私たちは知っておかなければなりません。

これまでの文献などには、この繊維組織は掲載されていないものも多く、皮膚があって、皮下組織があって、骨があってと、それぞれの層だけ表されてきました。

 

しかし、これら繊維組織の「粗密」によって、硬さに違いがあることは、触診をするうえで非常に重要なことです。

粗の状態:弾力性がある(柔らかい)
密の状態:弾力性が低い(硬い)
層構造の人体に触れる時、この繊維組織の粗密によって硬さに違い出ることも、意識していなければいけない点です。

 

◆人体の半分以上は水分
組織を形作っている繊維組織や、それによって硬さの違う層が形成されていることは理解できました。

しかし、人体に含まれているものでまだ出ていないものがあります。

私たちが触診をするうえで、体内の水分の存在は決して無視出来ないものです。

 

層構造を連なっている繊維組織の間には、間質液(組織間液)というものがあります。

この液体の役割は、栄養素や老廃物を運ぶことで、体液が循環しているからこそ、人間は栄養を細胞に取り込み、老廃物を体外に排出することが出来ます。

 

出典:木戸康博ほか編,基礎栄養学第3版,(栄養科学シリーズNEXT),講談社サイエンティフィック,2015

この体液も介して目的の組織に触れていることは、知っておかなければなりません。

 

ここで先程の弾力性の話と繋がってきます。

 

繊維組織が租い状態であれば、それだけ含まれている水分量も多くなります。

皮膚や皮下組織(脂肪)が柔らかいのはこのためです。

反対に密の状態であれば、含まれている水分量は少なくなりますので、硬い組織となっていくのです。

 

水の中で動こうとすると抵抗感が生まれるように、人体の水分も同じ性質があります。

 

強く押したり、乱暴に触ろうとすれば、それに応じた抵抗感(作用反作用の法則)が生まれます。

前述のように表層は水分量が多いので、強くタッチするほど抵抗感が増し、組織自体の硬さなのか、水分の抵抗感なのか判別が出来なくなります。

 

◆触診のコツ
これらの事実を踏まえて触診をする時には「ゆっくり優しく触れる」ことで、より深層まで触れられるのが理解できるのではないでしょうか?

患者さんが「強く押して」と言われることもあるかもしれませんが、それによって触れているのは表層だけであり、しかも表層の組織は繊維が少なく柔らかいため、損傷するリスクも高いです。

その場しのぎであり、実は更に悪化させている場合もあることを理解しておかなければなりません。

 

◆TGA(Tissue gliding approach)
IAIRがお伝えしている技術(TGA)は、この水分や繊維組織に機械的な刺激を加えることを目的としています。

結果として体内では液体の循環に変化が起き、栄養素や老廃物の移動が起こることで、痛みや可動域制限といった表面化している問題が変化していくのです。

 

 

正確な触診を駆使して如何に徒手的な技術で成果を出せるか?

これからのリハビリ職種に必須の技術です。