内部障害

 

内部障害とは、心臓、腎臓、呼吸器、膀胱・直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(HIV感染症)、肝臓機能障害の7つを指す。代謝疾患❌

 

急性肝炎とは主に肝炎ウイルスが原因で起こるびまん性疾患で、

黄疸、食欲不振、嘔気、嘔吐、全身倦意感、発熱などの症状を呈する。

急性肝炎罹患後に6か月以上にわたって肝内の炎症が持続し、臨床症状と肝機能異常が続くものを慢性肝炎という。急性肝炎発症を自覚することなく、慢性肝炎のかたちで発見されることも多い。
1:A型肝炎は慢性化することなく、予後は良好で、一度感染すると再度の感染は起こさない終生免疫が成立する疾患である。
memo主な感染経路は経口感染である。
2:B型肝炎は、血液媒介感染、性感染症で、輸血や医療事故による針汚染、性交沙による感染が多く、またキャリアの妊婦から新生児への垂直感染も起こる。
memoウイルスは肝細胞で増殖し、血液を循環することにより血液が感染源となる。(
3:C型肝炎C型肝炎ウイルスの血液感染によって発症し、70~80%が慢性化する。
4:肝炎の予後を左右するのは肝硬変への移行で、B型肝炎ではHBe抗原陽性が長く続くものや病理学的に小葉の破壊が顕著なものでは肝硬変への移行率が高く、C型慢性肝炎ではHCV抗体が途中から消失するものは予後不良である。

5:慢性肝炎の病因としてはウイルス性、薬剤性、自己免疫性あるいは代謝性などに分類されるが、本邦では肝炎ウイルスによるものが最も多く、そのうち70~80%がC型肝炎ウイルスによる。

①前田眞治, 他 : 内科学, 第3版, 標準理学療法作業療法学(専門基礎分野), 医学書院, 2014,
pp 186-193. ②高久史鹰, 他(監) : 新臨床内科学[縮刷版], 第9版, 医学書院, 2009, pp 544-557, pp 571-577. ③寺野彰, 他(編) : シンプル内科学, 第2版, 南江堂, 2017, pp 365-370.

1. A型急性肝炎は、ウイルス性肝炎の中では最も予後が良好で、慢性化することはない。発症後6~ 12か月頃まで遷延することもあるが、原則自然に治癒する。

2. A型急性肝炎は、シジミ生ガキなどの摂取により生じることが多く、日本では冬から春にかけて多発する。

3. B型急性肝炎の典型例は黄疸を伴う。主に血液感染で拡大し、1~6か月の潜伏期間を経て発症する。

4. B型急性肝炎は、キャリアの妊婦から新生児への垂直感染も起こる。

5. C型急性肝炎は、A型やB型と異なり、ウイルスに感染しても、多くの場合症状が軽く、感染していることに気づかないことも多い。そのため、知らぬ間に慢性肝炎へと移行していることが多い

①奈良 勲 他(シリーズ監修), 前田員治, 他 : 標準理学療法学, 作業療法学專門基礎分野, 内科学, 第3版, 医学書院, p. 186-190. ②奈良 勲. 他(シリーズ監修), 横井豊治, 他(編) : 標準理学療法学, 作業療法学 専門基礎分野, 病理学, 第4版, 医学書院, p. 

アルコール性肝障害は,アルコールを過刺に摂取することによって起こる肝障害のことである。
初期病変である脂肪肝から、進行すると急性の肝細胞壊死と炎症を伴うアルコール性肝炎さらに進行すると肝硬変に至り,多彩な病変を包括する疾患群である。
脂肪肝では自覚症状は乏しい、アルコール性肝炎では腹痛や肝腫大,発熱などがみられる。アルコール性肝硬変に陥ってしまうと,肝臓の線維化がみられ、断酒をしても組織は正常化しない。「肝がん白書(平成27年度)」によれば、我が国の肝癌の背景肝疾患の原因は,アルコール10%,肝炎ウイルス感染が80~90%,その他が 10%未満である.

【病理学】

増殖性炎は、肉芽組織や線維化が主たる病変である。通常はリンパ球や形質細胞、組織球の浸潤を伴う。肝硬変などが含まれる。

肝硬変は肝細胞が死滅,減少することで線維化が進行して硬くなり、肝機能が低下した状態で慢性肝疾患の終末像である。代償期の肝硬変では、線維化が高度に進行するまで多くは無症状である。

しかし、非代償期に入ると門脈圧亢進によって食道静脈瘤腹水などが生じ、肝細胞不全によって意識障害や黄疸、出血傾向が生じるため、ADL は大きく制限される。過度の運動は門脈圧を上昇させたり骨格筋量を減少させたりするため、病態や病期を理解することは重要である。

1. 静脈瘤には一次性と二次性がある。

一次性静脈瘤ー静脈弁不全によるもの

二次性静脈瘤ー深部静脈血栓症や動静脈瘤、外傷などによって静脈の拡張や蛇行をきたしたものである。

下肢静脈瘤の大部分は一次性静脈瘤である。
2. 一次性静脈瘤の約75%は遺伝的因子が関与する。
3. 症状は下肢の重圧感や疲労感が主で、時折夜間の下肢痙攣などを生じる。重症化すると局所循環障害を生じ、難治性潰瘍を形成する。
4. 静脈瘤は、血管疾患のなかで最も発生頻度が高い。
5. 治療には、弾性ストッキングの着用などの生活療法のほか、硬化療法(静脈瘤内に硬化剤を注入し、瘤の内腔を閉鎖する)、ストリッピング手術(静脈瘤抜去術)などがある。
①奈良 勲. 他 (シリーズ監修), 前田員治, 他 : 標準理学療法学, 作業療法学專門基礎分野, 内科学, 第3版, 医学書院, p.95-96. ②井村裕夫(編) :わかりやすい内科学, 第3版, 文光堂, p. 265 266. 

食道静脈瘤は,門脈圧の亢進による下部食道壁内静脈叢,左胃静脈,脾静脈のうっ血により,静脈瘤が形成されたものである、

主に、中下食道に形成される.内視鏡検査をした場合,初期では肌色に観察されるが,末期ではうっ血により赤色に見える。食道静脈瘤の破裂は多量の出血となる。吐血は鮮紅色である。治療としては、内視鏡的食道静脈瘤硬化療法内視鏡的食道静瘤結紮術などを行う.

1. 肝臟疾患患者の運動参加,禁酒の基準がある。

①血清GTP 値:150 mlU/mL 以上、

②血清アルブミン値: 2.8g/dL 以下、

③血清コリンエステラーゼ値:0.6 ApH以下、

④血清へパプラスチンテスト値:60%以下、

⑤血清 LCAT値:350 U 以下、

⑥血清ビリルビン値:2mg/dL 以上

 

このいずれかを満たす場合に運動が禁忌となる。
2.運動負荷の上昇に伴い門脈圧が上昇(食道静脈瘤)すると、破綻出血する可能性が高まるため、中等度以上の運動負荷は避けるべきである。
3. 代償期は自覚症状に乏しいため、病状や検査値の推移を観察して運動療法を実施する。

4. 肝機能が低下すると蛋白質合成量が減少するため、高負荷の運動を実施すると蛋白異化が進んで骨格筋量が減少する可能性がある。特に非代償期では日常生活レベル以上の運動は禁忌である。
5. 腹水を伴った患者に対して運動を行うと、腎血流の減少によって糸球体濾過率やナトリウム排泄が著明に低下するため安静が基本となる。
①上月正博(編) : よくわかる内部障害の運動療
法, 医歯薬出版, p. 206-209. ②上杉雅之(監修) :統合と解釈がよくわかる 実践理学療法評価学, 医歯薬出版, p. 54-58. ③美津島隆, 他(監修), 鈴木啓介, 他(編) : 内部障害リハのための胸部, 腹部画像読影のすすめ, メジカルビュー社, p.230-231. ④上月正博 (編著) : 新編 内部障害リハビリテーション, 第2版, 医歯薬出版, p. 252-260. 

 

5:成因はアルコール性(46%)が最も多く,特発性(19%),胆石性(18%)と続く.

1:中高年男性に多い,

1. 急性膵炎の臨床検査値では、血清,尿中アミラーゼの急峻な上昇を認める。

3:生化学検査において,血中アミラーゼ,リパーゼは高値を示す.

4:症状として,上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある
2. 急性膵炎の自覚症状では、上腹部の激痛が特徴である。ただし、必ずしも激痛とは限らず、逸脱した膵酵素による組織の融解程度や、損傷を受けた組織の場所の違いにより、疼痛の訴えは様々である。
3. 急性膵炎の発症機序は、膵酵素による自己消化である。

2:重症膵炎を除き一般的に可逆性である
4. 急性膵炎の重症例は、頻脈や血圧低下、チアノーゼなどのショック症状をきたし、死亡することもある。
5. 治療は、基本的に、膵外分泌を抑制するために絶飲食とする。そのうえで輸液を行い、十分な水分補給と電解質バランスの補正を行う。

1. 膵臓癌を合併する確率が高いのは慢性膵炎である。

①寺野 彰(総編集):シンプル内科学 改訂第2版
pp404-406,南江堂,2017.①奈良 勲.他(シリーズ監修)、前田眞治,他:標準理学療法作業療法学專門基礎分野、内科学、第3版、医学書院、p. 197-198.②井村裕夫(編):わかりやすい内科学、第3版、 文光堂、p.687-688

 

1,2:身体所見として,腹部膨隆,蠕動不隠がみられ,触診では圧痛の他,絞扼性イレウスでは腹膜刺激症状が認められる.

3:腹部単純工ックス線検査が診断上最も重要で,閉塞部より口側にガスと液体の貯留が存在するため,立位では鏡面像(二ボー)が認められる。

4:物理的に閉塞されて起こる機械的イレウスのうち,血行障害を伴わない場合を単純性イレウス,血行障害を伴う場合を絞扼性イレウスと呼ぶ,

5:単純性イレウスは,通常,保存的治療が行われ,絶飲食として、十分な補液と腹部の温湿布,および胃管,イレウス管の挿人を行う。
1)寺野彰(総編集):シンプル内科学改訂第2版.
pp335-336,南江堂, 2017. 2)医療情報科学研究所(編):病気がみえるvol. 1消化器第4版, pp114-121, メディックメディア,2010.

 

1. 潰瘍性大腸炎30歳以下の若年者に発症しやすい。
2. 潰瘍性大陽炎では、粘液と血液が混ざった便である粘血便がみられる。
3.長期に経過する潰瘍性大腸炎(特に全大腸炎型) は大腸癌の発生率が高いため、内視鏡による経過観察を要する。
4. 潰瘍性大腸炎は原因不明の優性腸炎である。
5. 潰瘍性大腸炎は再燃と緩解を繰り返す疾患で、根治治療は確立されていない
①井村裕夫(編) : わかりやすい内科学, 第3版, 文光堂, p. 581-583. ②奈良勲 他(シリーズ監修), 大成浄志 : 標準理学療法学, 作業療法学 專門基礎分野, 内科学, 第2版, 医学書院, p. 163-164. 

 

1:血友病は伴性劣性遺伝の疾患である.

2:関節内血腫,筋肉内血腫による疼痛性の腫瘍や周囲の神経圧迫による末梢神経麻痺,深部組織への出血が特徵的である。

3:血友病では出血時間の延長はみられない.
4:血友病男児に好発する.

5:粘膜出血はvon Willebrand 病でみられる.von Willebrand病は乳児期からの鼻出血,紫斑など皮膚,粘膜出血を特徴とする先天性の出血性疾患である。

1)寺野彰(総編集):シンプル内科学改訂第2版.
pp552-553,南江堂, 2017. 2) 前田眞治,他:標準理学療法学,作業療法学内科学第3版, pp223-224,医学書院,2014. 3)医療情報科学研究所(編) :病気がみえるvol. 5 血液,pp168-173,メディックメディア,2017

 

痛風は尿酸塩結晶の関節内析出によって、激痛を伴う急性関節炎(痛風性関節炎)が引き起こされた状態である。

尿酸の蓄積によって種々の場所に尿酸の結石が析出し,結節,関節痛,腎障害などを起こす疾患である。

発作的に発症し、数日から数通間で軽快するが、再発傾向にあることから痛風発作と呼ばれる。

原発痛風は,遺伝的要素や環境因子の関与がみられ,肥满者,美食家,大酒家に多くみられる、成人男性に多く、30 歳代での発症が多い。近年は若年での発症が増加している.

痛風結節や痛風発作を伴わず、尿酸値が高いだけの場合は、高尿酸血症という。

1:痛風発作の原因物質は尿酸である。産生過剰型、排泄低下型、混合型の3つに分けられる。
memo高尿酸血症は、耐糖能異常に合併しやすい。

2:典型的な発作は、突然の足の母趾中足趾節関節(MP関節)の激痛から生じることが多い。

3:単関節炎のことが多い。

4:痛風性関節炎には原則的に非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDS)を用い、関節炎が消失したら投与を中止して、高尿酸血症に対する治療を行う。
memo痛風発作中に尿酸降下薬(尿酸生成抑制薬、尿酸排泄促進薬)を開始すると関節炎が悪化、長期化することがよくあるため、発作が十分沈静した後に病型や合併症によって使い分ける。急激な尿酸値の低下は、発作の消失遅延や劇症化を招きやすく、また痛風発作のない時期でも発作を誘発する可能性があるため、少量投与から漸増する。

5:最初の急性関節炎発作は無治療でも2~3週間で完全に消失し、無症状の間欠期に入るが、数か月から数年(1~2年)以内に再び同様の発作が出現する。

5. 続発性痛風では、白血病,骨髄腫,溶血性貧血などの血液疾患や慢性腎炎などの疾患に合併することがある。

①高久史鷹,他(監):新臨床内科学[縮刷版],第9版,医学書院,2009, pp724-727.②井村裕夫(編集主幹):わかりやすい内科学,第4版,文光堂,2014, pp 780-784.③医療情報科学研究所(編): 糖尿病,代謝,内分泌,第4版,病気がみえるvol3,メディックメデイア,2014, pp 128-133.④寺野彰,他(編) : シンプル内科学,第2版,南堂,2017, pp 480-482.

 

ステロイド(副腎皮質ステロイド)を慢性的に投与すると、種々の副作用が発現することがあるので注意を要する。主要な副作用は感染症(全身性および局所)の誘発、増悪、消化管潰瘍、糖尿病の誘発増悪、動脈硬化病変(心筋梗塞脳梗塞動脈瘤血栓症)、骨粗鬆症、骨折,骨頭無菌性壊死、副腎不全、精神神経症状(うつ状態、精神変調)などである。

1:特に筋細胞では蛋白質の合成を抑制し、分解を促進するため筋萎縮が生じる(ステロイドミオパチー)。

2:骨形成の抑制と骨からのカルシウム流出による骨粗鬆症を呈することがある。
memo破骨細胞を増加させて骨吸収を促進し、骨芽細胞を減少させて骨形成を低下させる。

3:多面的な作用により、細胞性免疫、体液性免疫ともに抑制するが、特にリンパ球に依存する細胞性免疫を強く抑制するため感染症に対する抵抗が低下する(易感染性)。

4:代謝作用の1つとして、糖新生の促進と糖利用の抑制により血糖値を上昇させる。

5:短期的には脂肪分解を促進するが、長期的には脂肪の産生増大,再分配により顔などに脂肪を蓄積させ、満月様顏貌や中心性肥満を生じ得る。

①辻本豪三.他(編) :藥理学,標準医療薬学,医学書院,2009. pp 156-157.②医療情報科学研究所(編) :糖尿病、代謝内分泌,第4版病気がみえる vol3.メディ学クメディア.2014, pp 250-253.