膝関節屈曲制限を考える
膝関節屈曲制限といえば大腿直筋の短縮、膝蓋上嚢の癒着、関節水腫、膝蓋下脂肪体の拘縮、半月板のインピンジメントなど様々な原因が考えられます。
今回は上記のいずれでもない外側広筋が膝関節屈曲制限に関る可能性について紹介したいと思います。
外側広筋は内側に中間広筋、外側に大腿二頭筋、大腿筋膜・腸脛靭帯と隣接しています。このいずれかの組織が損傷、滑走性の低下が生じることで外側広筋の動きも制限することが考えられます。
外側広筋は膝関節屈曲時に後外側へと滑走すると報告されています¹⁾。その滑走距離は1㎝程度と報告されており、7㎜以下では外側広筋の滑走性が低下しているとしています。私がエコーで観察すると大転子部と外側上顆より5㎝上での滑走量が大きいと感じています。
図1 外側広筋の滑走¹⁾
この大転子部と外側上顆の滑走性に影響を与える組織として腸脛靭帯が一番大きいと考えています。
腸脛靭帯は近位部では大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋の線維が合流しています。また、深層線維は大転子を超えて(殿筋粗面上)、立体交差をして付着していると報告されている。
図2 大腿筋膜張筋の線維構造²⁾
つまり
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大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋の筋緊張の亢進、組織間の癒着などが生じる
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腸脛靭帯、大腿筋膜の硬度の上昇、滑走性が低下
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腸脛靭帯、大腿筋膜と密接に関る外側広筋の外側への滑走が制限され、膝関節の屈曲拘縮が生じると考えます。
治療としてはまずは腸脛靭帯の緊張緩めるために、大殿筋・中殿筋のリラクセーションや促通を実施。その後、外側広筋を膝関節屈曲時に徒手的に後外側へと誘導する必要があるのではないでしょうか?
参考文献
1)中村 翔 他:超音波画像診断装置を用いた膝屈曲自動運動時の 外側広筋の動態観察 愛知県理学療法学会誌 第 27 巻 第 1 号 2015 年 6 月
2)三浦真弘、影山幾男 他:腸脛靭帯の構成線維とその機能解剖学的意義について 第9回臨床解剖研究会記録 2005.6.11