脱臼の原因

脱臼の原因について
前回はBHAとTHAのインプラントによる可動性の違いを書きました。BHAは脱臼しにくく、THAは脱臼しやすい事を説明しましたね。

 

今回は、THAがどのようにして脱臼するのかを説明していきます。

 

脱臼の前にはインピンジが起こる?
まず前回の記事で、

脱臼はステムとカップがインピンジメント(衝突)しているのにも関わらず、それ以上動こうとすると起こります。

と書きました。

 

このインピンジメント(衝突)とはどのようなものか想像できますか?

 

このメカニズムを理解し頭の中でインプラントの動きを把握できればリハビリ中の脱臼は怖くありません。十分にリスク管理が可能です。

 

模式図で簡単に説明します。

カップとステムが接触している状態、つまりそれ以上可動しない状態からさらに可動させようとすると脱臼します。その模式図がこちらです。 


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とにかく脱臼前にはインピンジメント(衝突)が起っている

 

2Dの図ですがイメージは少しご理解頂けたでしょうか?本当は3Dなのでもう少し複雑な動きがあります。図解ですとこの表現が限界です。すみません。

 

とにかくこのインピンジ、つまりカップとステムが衝突(接触)している状態にならない限りは脱臼しません。脱臼の前には必ずカップとステムのインピンジメント(衝突)が起こります。つまりインピンジしている状態から無理やり動かさなければ徒手的な脱臼はあり得ません。

 

脱臼肢位を把握しよう
それでは、インピンジしやすい動きとはどのような動きなのでしょうか?それを説明していきます。PTの方なら脱臼肢位または禁忌肢位といって暗記している方も多くいらっしゃると思います。

 

結論から言いますとインピンジを起こす動きは

 ・屈曲+内転+内旋(後方脱臼のリスク)

 ・伸展+内転+外旋(前方脱臼のリスク)

です。上記の複合運動になります。

 

ただし脱臼のし易さは術式にもよって変わりますので、上記の動きが脱臼に直結する訳では決してありません。あくまでカップとステムがインピンジを起こす肢位です。

 

つまり「脱臼肢位 = インピンジ肢位」です。

 

しつこいようですが、インピンジしなければまず脱臼はしません。THAの脱臼の前には必ずインピンジが起こっています。

 

ですので上記の複合運動の際にEndFeelを注意深く感じて股関節のROMexを行う必要がありますね。それさえ注意していればROMexで脱臼する事はまずないでしょう。

 

ほとんどの脱臼は転倒や日常生活で強い外力が加わった際に起こります。

 

インピンジが起こらない動きはあるの?
それでは逆にインピンジしない動きはあるのでしょうか?

もちろんあります。

インピンジを起こさない動きは、

 ・屈曲+外転+外旋

 ・伸展+外転+内旋

です。文字で書くとどんな肢位か分かりにくいですが、実際にやってみると分かりやすいです。カエルが座っている際の屈曲位と、カエルがジャンプした際の伸展位ですね。ちなみにこの肢位は股関節の求心位でもありますので覚えておくと良いかもしれません。


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上記のこの股関節の動きはインピンジしません。設計上(構造上)間違いなくインピンジしません。ですので限界可動域は関節包や靭帯・筋の伸張具合で決まります。

 

そのため、もしTHA後の患者様の股関節の動きを大きく出したいとき、

 ・屈曲方向では、外転と外旋を加えて下さい

 ・伸展方向では、外転と内旋を加えて下さい

迷ったときや自信のないときは、とにかく『内転を避けるROMex』を心がけて下さい。それによりリハビリ中に脱臼させることはほぼ100%あり得ません。

 

また、もし禁忌肢位にもっていっても、実際はかなりの力を入れない限り脱臼は起こりません。軽い力で脱臼してしまう場合、手術中のカップ設置不良や、ステムのネック部分の長さが短く関節包のテンションが大きく失われている場合です。その場合は手術はうまくいったとは言い難いですが…

 

脱臼の仕組みと脱臼肢位(インピンジ肢位)を把握することで皆様のリハビリテーションにお役立ちできると幸いです。

 

次の記事も脱臼について書いていきたいと思います。