精神医学・認知症

 

特発性てんかんは、素因以外に発作を起こす原因が不明なものである。

一方で、脳炎や脳血管障害、外傷など、脳の器質的障害によるものは症候性てんかんに分類される。

5. 特発性てんかんと症候性てんかんの出現率の比は、約3:1で、特発性てんかんのほうが多い

4:知的障害は特発性てんかんでは目立たないが,症候性てんかんでは知的障害を示すことが多い.

てんかん発作は、部分発作と全般発作に大別され、さらに部分発作は、単純部分発作と複雑部分発作に大別される。

1:単純部分発作は, 意識は保たれている状態で、身体の一部分に発作が起こるものである.

2. Jackson発作は、身体の一部から始まった痙攣が徐々に全身に広がっていくもので、単純部分発作に分類される。

2:複雑部分発作は, 側頭葉てんかんとも呼ばれ,自動症が特徴的である、

2. 複雑部分発作では、状況にそぐわない無目的な行動である自動症がみられやすい。

3:複雑部分発作は意識障害を伴い、後に健忘を残す発作である。
memo 通常、意識障害に続いて自動症がみられる。自動症としては、口部自動症(舌なめずりなど)、表情自動症(不安や怒りなど)、身ぶり自動症(衣服を無目的に触るなど)がある。

1:欠神発作(全般発作)は、短時間の意識障害を主症状とする発作で、①意識障害のみのものと、②自動症や軽い間代けいれん、脱力、強直、自律神経症状などの随伴症状を伴うものとがある。

1. 定型欠神は学童期5~6歳に発現することが多い。数秒~数十秒程度の意識障害を呈する発作で、会話が急に止まる、持っていたものを落とす、それまでしていた行動が突然中断されるなどの現象が観察される。

2:脱力発作(全般発作)は、筋の緊張低下が発作的に起こるために倒れたり、姿勢が崩れたりする発作である。

3.脱力発作で項筋に脱力が生じると、頭部が前方に落下する点頭発作が起きる。

4. 強直間代発作は、突然意識消失すると同時に、十数秒間の全身性の強直期に続き、数十秒持続する間代期が出現する。
4:強直間代発作では、突発する意識消失とともに運動が停止し、直後に強直けいれん、次いで律動性の間代けいれんを起す。
memo 強直期では、体幹四肢が強く突っ張る。全身の細かいふるえが出現し、次第に大きくなって、筋に強い、収縮と弛緩とが交互に起こり、手足がガクッガクッと大きく揺れるようになる。

5:ミオクロニー発作(全般発作)は、瞬間的に全身あるいは四肢,体幹の筋に強いけいれん(ミオクローヌス)が生じ、身体をびくっとさせ、手足を屈曲し、頸部を前屈する。
memo 意識障害はみられないことが多い

1. 間代発作は、ミオクロニー発作が律動的に出現するもので、意識障害を伴う。脳波では棘徐波や多棘徐波複合がみられる。

3. てんかんでは、性格の変化や知的能力障害、精神病状態など、発作間欠時にも精神症状がみられることがある

6. 生後3か月未満に発症する早期乳児てんかん性脳症は、生後3か月~1歲でWest症候群、1~4歳でLennox-Gastaut 症候群に移行しうる。これら3つのてんかん年齢依存性てんかんと呼ばれる。

1. West 症候群(乳児けいれん)は、生後6か月~1歲までをピークとし、乳幼児期にほぼ限定して生じる。
2. West 症候群は、通常の抗てんかん薬療法には抵抗を示す
3. West症候群の脳波では、ピプサリスミア(高振幅棘波が全般性に不規則に出現する)がみられる。
4. West 症候群は、一種の発作ではなく、ミオクロニー発作や脱力発作、強直発作などが合併した発作である。
5. West症候群は、脳に重篤な障害をもち、精神運動達遅滞がみられることが多い。

5: Lennox-Gastaut(レノックス-ガストー)症候群は, 3~6歳の小児に発症し, 発作の抑制は困難で,かつ多くは重い知的障害を残す原因不明の脳症である. てんかんの中でも, West 症候群とともに予後不良とされる.

1. 高齢初発てんかん患者は増加傾向にあり、原因は脳卒中症候性部分てんかんである. また高齢期のてんかんでは重積(発作が異常
に長引いたり意識が戻らないうちに再度発作が起こる状態) になることが多い。発作の治療には抗てんかん薬を用いるが、抗てんかん薬は脳卒中後の神経回復には抑制的に作用するので十分に注意する必要がある。

1. バルプロ酸は、強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作で第一選択となる。
3.ジアゼパムは、即効性で広い抗てんかん作用をもつ。てんかん重積状態の際に第一選択となる。
4. クロナゼパタムは、欠神発作、ミオクロニー発作、単純。複雑部分発作で第二選択となる。
5. カルバマゼピンは、強直間代発作、単純複雜部分発作などで第一選択となる。

上島国利·他(編) : 精神医学テキスト 改訂第4版, pp140-142, 南江堂, 2017. ②尾崎紀夫·他 (編) : 標準精神医学 第7版, pp. 486-497, 医学書院, 2018, pp. 486-497. ③上野武治 (編) : 標準理学療法学·作業療法学 精神医学 第4版, pp114-122, 医学書院, 2015. ②北川泰久他(監修), 飯森員喜雄, 他(編) : 神経, 精神疾患診療マニュアル, 日本医師会, p. 268-272. ③大熊輝雄 : 現代臨床精神医学, 改訂第11版, 金原出版, p. 217. ④奈良, 他(シリーズ監修), 上野武治(編) :標準理学療法学, 作業療法学 專門基礎分野, 精神医学, 第4版, 医学書院, p. 119-120. 

 

身体症状が前景にでるー仮面うつ病

 

1. 単極性うつ病女性が多く、男性の2倍

1. 全年齢層に認められる

1. 生涯有病率ー6.5-7.5%

1. 状況要因が誘発となって発症しることが多い

3. 単極性うつ病抑うつ症状には日内変動がある。症状は朝方に強く、タ方に向かうにつれて軽くなる傾向にある。

早朝覚醒、激越症状、妄想、昏迷、易刺激性

1:自殺(自殺念慮)という重い話題を打ち明けられた場合,根拠のない励まし,距離を置く,気分転換や原因究明を勧めてはならない.

2:まずその思いを自分に打ち明けてくれたことをねぎらうことが重要である。
5:精神科への受診より,まず本人の考えを聴くことが大事になる。

5.うつ病への対応=うつ病であることをきちんと伝え治療すれば必ず完治することを説明する。

6. 休養の重要性について、説明する。

うつ状態の原因:ノルアドレナリン·セロトニンなどの神経伝達物質通常の状態より不足する。
薬物療法:抗うつ薬(主としてうつ症状を緩和する薬剤)により,神経伝達物質を増加させる。

薬物療法SSRI,SNRI(第一選択薬)ー三環系、四環系に比べ副作用が少ない

三環系、四環系ー副作用ー抗コリン作用ー口渇、便秘、排尿困難

対人関係療法認知行動療法

うつ病の治療に用いられる電気けいれん療法は、筋弛緩剤を用いて無けいれんで通電のみ行う修正型けいれん療法が普及している。

2. 重度の慢性閉塞性肺疾患や喘息、肺炎などの呼吸器疾患がある場合は、電気けいれん療法に際して高度の危険性を伴うため、適応になりにくい。
1. 緊張病の特徵である昏迷などを伴っている場合は、電気けいれん療法が適応となる。
3. 薬物療法に反応しない、薬物治療抵抗性うつ病の場合、電気けいれん療法が適応となる。
4. 身体疾患の合併や副作用の問題で薬物療法に耐えられない場合、適応となる。
5. 患者本人の希望がある場合は電気けいれん療法が適応となることがある。
①尾崎紀夫,他(編):標準精神医学、第7版、医学書院、p.367. 本橋伸高,他:電気けいれん療法(ECT)推奨事項、改訂版、精神神経学維誌、 2013、115(6): 586-600)1)根岸敬矩,土澤健一(編) : 保健,医療,福祉系学生のための臨床精神医学 第2版, pp78-79,医学出版社,2008.2)山川百合子,栗原加代(編著):看護术ケットマニュアル精神科, pp61-63,医学出版社,2012.

 

1:双極性障害の発症頻度に性差はほとんどない.

2:ほとんどが若い時期に発症する.

3: 双極性障害の生涯有病率は0.2~1.7%である一方,単極性うつ病は3~5%である。(うつ病より発症率が低い)

4:遺伝的素因の関与は高い.

3. 重度の操状態がみられるのはI型であり、Ⅱ型は軽操状態とうつ状態を繰り返す。

5. 同一個人では、 病気の経過中にI型で約1/3、 Ⅱ型で約半分が操病相を占めるとされ、 抑うつ状態の期間のほうが操状態よりも長い

5:双極性障害の方が単極性うつ病に比べて自殺率が高い。

2. 治療として、気分安定薬を用いた薬物療法が行われる。気分安定薬は、操病相·うつ病相の軽減·安定化のほか、病相の再発予防効果もある。また、不眠や興奮が著しい場合は、鎮静作用の強い抗精神病薬睡眠薬なども用いられる。
1)上野武治(編):標準理学療法学,作業療法学 精神医学 第4版,pp147-157, 医学書院,2015. 2)尾崎紀夫.他(編):標準精神医学 第7版. pp344-364,医学書院,

 

躁病相の基本的特微は、気分が高揚する、開放的になる、あるいは怒りっぽくなるといった気分の変化に、気力,活動性の増加などがみられる。
3:観念奔逸は、躁状態やアルコールなどによって抑制がとれているときにみられる。
memo 思考の進み方が速く次々と話すが、論理的な関連は薄く表面的となり、周囲の刺激で話がわき道にそれやすい。
5:行為心迫は多弁 多動で動き回るがまとまらない状態であり、躁状態でみられる症状である。
memo 次々と新しい意図や行為が現れ、行動の量や速度が増加する。

薬物療法ー炭酸リチウム
①上烏国利,他(編):精神医学テキストー精神隊害の理解と治療のために, 改訂第4版,南江堂、 2017, p88 p96.p 170-184. p189②上野武治(編) : 精神医学,第4版,標準学療法学,作乘療法学(専門基礎分野),医学書院, 2015.p25 p28. p32. p 155. pp 166-167.

 

1. パニック障害は、 男女比は1:2 で女性が多いとされる。

2. パニック障害の発症年齢の中央値は20~24歳で、小児期や 45歳以降の発症は少ない。

3. パニック障害が数年にわたって再発なしに完全寛解するのは稀である。

4. パニック発作は、 客観的には危険がない状態でも起こる。通勤中や睡眠中に生じることもある。

5. パニック障害でみられる予期不安は、 発作が反復することで、また発作が起こるのではないかという持続的な恐れが生じるものである。突然の強い恐怖や不快感の高まりそのものは、パニック発作である。

①尾崎紀夫·他(編) : 標準精神医学、第7版、医学書院、p.253-256.②奈良 勲·他(シリーズ監修)、上野武治(編) : 標準理学療法学·作業療法学 専門基礎分野、精神医学、第4版、医学書院、 p. 164-165

 

神経性大食症は、むちゃ食い、体重增加を防ぐための下剤の乱用や自己誘発性嘔吐などの代償行為、ボデイイメージの降害がみられることが特徴である。

1. 神経性大食症は活動性が低下することが多い。活動性が亢進するのは、神経性無食欲症である。

2. 神経性大食症、神経性無食欲症のいずれでも肥満恐怖がみられる。
3. 神経性大食症、神経性無食欲症のいずれでもボディイメージの障害がみられる。
4. 神経性大食症、神経性無食欲症のいずれでも自己誘発性嘔吐がみられる。
5. 自己誘発性嘔吐により、カリウム血症虫歯などの症状がみられる。

 

1. 神経性無食欲症では、活動性が亢進する。
2. 神経性無食欲症が女性に比べて男性に生じることは少い。
3. 神経性無食欲症では、極端な低体重であっても体重を増やしたくないと強く思う肥満恐怖がある。
4. 神経性無食欲症は、病識が乏しいことが多い。
5. 神経性無食欲症では、CTやMRI検査で脳の全般的萎縮をみることがあるが、可逆的である。

6. 体重が減少し,低体温低血糖,肝機能障害などの症状がみられることがある。
①尾崎紀夫, 他(編) : 標準精神医学, 第7版, 医学書院, p.396-397. ②北川泰久, 他(監修), 飯森眞喜雄. 他(編) : 神経, 精神疾患診療マニュアル, 日本医師会, p. 317-318. ③奈真勲, 他(シリーズ監修), 上野武治(編) : 標準理学療法学, 作業療法学 專門基礎分野, 精神医学, 第4版, 医学書院, p. 174-175. ④上野武治(編) : 標準理学療法学,作業療法学 精神医学 第4版. pp174-175, 医学書院, 2015. ⑤ 山根 寬 : 新版 精神障害作業療法 病いを生きる, 病いと生きる 精神認知系作業療法の理論と実践. pp293-294, 三輪書店, 2017.

 

1. アルコール依存症における睡眠障害では、 深睡眠の減少や浅睡眠の増加がみられるほか、レム睡眠潜時の短縮などがみられる。
2. アルコール依存症者は自殺行動に至ることも多く、生涯自殺率は7~ 15%程度とされる。

1. 男性に多い
3. 再飲酒を予防するために用いられる嫌酒薬は、 アルコールの代謝物であるアルデヒド代謝を阻害し、その有害反応を増強するものである。飲酒欲求自体を抑制するものではない。
4. Liepmann(リープマン)現象は、アルコール依存症の振戦せん妄の際に、患者を閉眼させて眼瞭上より眼球を圧迫することにより、暗示により人工的に幻視が誘発される症状である。

memo 振戦せん妄は、めちゃリアルな虫、小動物を幻視する。

小離脱ー2日以内ー精神運動興奮、不快感、幻覚、痙攣発作、粗大震戦(羽ばたき震戦)、自律神経症

大離脱ー3,4日後ー振戦せん妄、リープマン現象、見当識障害、不眠
5. 集団療法(断酒会)を用いることで、自身の問題を他の依存症者の問題の中に見出すことができるほか、断酒する仲間を得ることができる。

ウェルニッケ脳症(失調性歩行、動眼神経麻痺、意識障害)ーコルサコフ症候群(ウェルニッケ脳症の後遺症)、ペラグラ(イタリア語ー皮膚の痛み)脳症(皮膚炎、下痢、認知症)

 

1. ナルコレプシーは、夜間睡眠が浅く、中途覚醒が特徴がある。
2. ナルコレプシーの定型例では、驚きや笑いなどの情動によって誘発される情動脱力発作 (カタプレキシー)を生じる。ただし、生じないタイプもある。
3. ナルコレプシーで生じる睡眠発作は、仕事中などに耐え難い眠気に襲われ、数分から数十分眠りこんでしまうものである。ただし、強い刺激を加えると覚醒する
4. 入眠時幻覚は、眠る際に起こる現実感のある幻覚で、同時に睡眠麻痺を伴うことが多い。
5. 睡眠麻痺は、 覚醒と睡眠の移行期に全身の脱力を生じるものである。
大熊輝雄:現代臨床精神医学、 改訂第11版、
金原出版、p.300-301. 奈良 勲·他(シリーズ監修)、上野武治(編):標準理学療法学·作業療法学 専門基礎分野、精神医学、第4版、 医学書院、p. 176

 

身体表現性障害は、患者は身体症状を多彩に
訴えるが、それらに対する医学的根拠を見いだせず。医療者が説明しても納得せず、繰り返し症状を訴える障害の一群である。身体化障害、心気障害、持続性身体表現性疼痛障害が含まれる。

1:心気障害は、医学的原因を見いだせないのにもかかわらず、些細な身体症状にこだわり、不安におびえ、医療機関を訪ね歩く状態とされる身体表現性障害の1つである。

 

2:適応障害は、生活上のストレス因子によって生じる神経障害(ストレス関連障害)で、抑うつ、不安、行動の障害を呈し、社会的,職業的な機能に明らかな障害が生じる。

 

4:睡眠時驚愕症は、睡眠中に絶叫、激しい体動、自律神経興奮を呈する非器質性の(情緒的な原因を介する)睡眠障害である。

 

5:外傷後ストレス障害はストレス関連障害の1つで、誰にでも大きな苦痛を引き起こすような、日常の生活に比べて著しく脅威的,破局的な性質をもった出来事や状況(ストレス)に対する遅延、遷延した反応と表現される。

3:心的外傷体験を原因とするストレス症状に関する障害は、急性ストレス反応(acute stress disorder : ASD)とPTSD に大別されるが、PTSDの診断はストレス症状が1か月以上持続する場合になされる。

4:PTSDでは、①外傷的出来事の再体験、②回避ないし麻痺症状、③覚醒亢進症状の3つを中核症状としているが、心的外傷の重要な側面の想起不能(すなわち解離性健忘)も症状の1つとされ、心的外傷に関する部分的,選択的な健忘がみられる。

5:“心的外傷の遭遇”は大規模災害の被災者になる、交通事故の儀牲者になるといった当事者体験にかぎらず、大規模災害に巻き込まれている他者を目撃したり、他者の事故現場に遭遇したりすることでも起こり得る。

4. PTSD では、一般に、 自律神経の過覚醒状態がみられる。

1. アンヘドニアは、通常であれば楽しめる趣味や娯楽交流などに対し、喜びや楽しみの感情や興味が失われた状態である。うつ病統合失調症のほか、 PTSD でもみられる。

2:PTSDは日常的なストレスを著しく超えた過酷な心的外傷に遭いすることで引き起こされる。ただし、発病後の経過に伴い疾病利得の心理が生じ得る可能性があることには注意しておく。

5. PTSD に対する非薬物療法では、認知行動療法のなかでも持続曝露療法が推奨される。これは、トラウマに遭遇した場合の一般的な心理反応の教育をはじめ、トラウマへの馴化や恐怖記憶の置き換え、 認知再構成が行われることで、 症状を改善させる治療法である。一般的な曝露療法と異なり、 長期間のセッションを必要とする。
①尾崎紀夫,他(編):標準精神医学,第7版,医学書院,2018, pp 306-309. 2 American Psychiatric Association(橋三郎,他監訊): DSM-5精神疾患の診断、統計マ车Aアル,医学書院,2014,pp 139-144. ③)上島国利,他(編著):ナースの精神医学,改訂5版,中外医学社, 2019, p l08. ①大熊輝雄(「現代臨床精神医学」第12版改訂委員会編):現代臨床精神医学,改訂第12版,金原版,2013,pp 286-289.
上島国利,他(編):精神医学テキストー精神障害の理解と治療のために,改訂第4版,南江堂,2017. p179pp 191-192, p 233.②上野武治(編): 精神医学,第4版,標準理学療法学,作業療法学(專門基礎分野),医学書院, 2015.pp 167-172.

 

1. 適応障害は、重大な生活の変化や生活上のストレスの結果に対し、 個人が順応していく時期に発生する障害である。 ストレスなしに起こることはない。
2. 適応障害は、通常ストレスから1か月以内に生じ持続は6か月を越えない
3. 適応障害の症状は、主観的な苦悩情緒障害を特徴とする。
4. 小児における適応障害では、 夜尿症や幼稚な話し方などの退行現象がみられることがある。
5. 青年期における適応障害では、 攻撃的非社会的行動がみられることがある。
大熊輝雄: 現代臨末精神医学、 改訂第11版、金原出版、p.281. 奈良 勲 他(シリーズ監修)、上野武治(編):標準理学療法作業療法学 専門基礎分野、精神医学、 第4版、 医学書院、 p. 168

 

1:強迫性障害の発症に男女差はない.

1. 強迫性障害平均発症年齢は、19.5歳とされ、35 歳以上の発症は稀である。

2:強迫性障害患者は,自分の強迫症状が不合理なものと認識していることが多いが,重症になると認識できなくなることもある.

3:治療には薬物療法と精神療法の両者が有効で,後者には曝露反応妨害法といった方法が用いられる。

5. 強迫性障害に対する薬物療法では、セロトニン再取り込み阻害薬や非定型抗精神病薬が用いられる。

5:強迫性障害は,他者に害を与えることを過度に恐れる(加害恐怖)ことから,火の始末や戸締り,車の運転などで確認に戻るなどの行為がみられる

2.強迫性障害は、強迫行為や強迫儀式により日常生活や職業的機能などを障害する。
3. 強迫観念は、多少とも不安を伴い、押さえつけようとすると不安はさらに増加する。
1)尾崎紀夫,他(編):標準精神医学 第7版,p177.
pp259-263, 320-321,医学書院, 2018. 2)上野武治(編):標準理学療法学,作業療法学 精神医学 第4版,p129.pp166-167,医学書院,2015. 3) 渡辺雅幸:理学療法,作業療法専門基礎分野臨床につながる精神医学、pp86-92.医歯薬出版,2016.

 

1. 保育所などに行くときに、母親と別れたり、別れそうになるときに不安になり泣いたりするのは普通のことだが、分離不安障害はこの程度がひどい場合である。幼児期に多い。
2. 吃音症は話の流暢さが著しく障害され、どもる状態である。学校で他人の前で話す、読むなどの不安や緊張をきっかけにどもり、一度どもると予期不安や緊張によってさらに増悪する。
3. チック障害にみられるチックは、ストレスで増悪し、睡眠中は消失する。
4. 脱抑制性愛着障害は、乳幼児期から施設で育てられた子どもに起こりやすい。正常児の愛着は両親などに選択的に向けられているのに対し、脱抑制性愛着障害では愛着の対象が拡散しすぎた状態となる。
5. 反応性愛着障害は、他者への恐れと過度の警戒、友達との交流が乏しいなどの社会的関係の異常である。身体的、心理的虐待やネグレクトなどの扱いを受けた幼児にみられやすい。
①奈良 勲,他(シリーズ監修)、上野武治(編):
標準理学療法学,作業療法学 專門基礎分野、精神医学、第4版、医学書院、 p. 216-219. ②大熊輝雄 :現代臨床精神医学、改訂第11版、 金原出版、p. 401-403

 

従来、 引きこもりは“日本特有の現象”として取り沙汰されたように、依然として他の国より日本のほうが圧倒的に多い。

3:引きこもりは、 原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づく引きこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とされている。ただし、 実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くなく、その他にも多彩な精神障害が関与し
ている可能性がある点には注意しておく。

4:不登校や引きこもりの支援では、当事者自らが率先して相談·治療の場に出向くのが難しいこと、 またこれらの当事者に対する一歩踏み込んだ介入が必要な場合があることから、家庭訪問を中心とするアウトリーチ型支援が
有効な支援の1つとして期待されている。

5:厚生労様々な要因の結果として、社会的参加(義務教育を含む就学、 非常勤職員を含む
就労、家庭外での交遊)を回避し、原則的には6か月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている状態を厚生労働省では、引きこもりを「(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を示す現象概念」と定義している。
(文献)①尾崎紀夫·他(編) : 標準精神医学,第7版, 医学書院。2018. p201.②樋口輝彦·他(編):今日の精神疾患治療指針。第2版、 医学書院, 2016, pp 335-338. ③上島国利·他(編著):ナースの精神医学,改訂5版、 中外医学社, 2019, p163, p309. p323. ④厚生労働省ホームページ: ひきこもり対策推

 

統合失調症は思春期、青年期に発症すること
が多く、陽性症状(幻覚、妄想、自我障害など)、陰性症状(感情鈍麻、自発性減退、思考貧困化など)、認知機能障害(注意,記憶,遂行機能障害など)を呈する。予後の関連因子として発症年齢、様式、病前性格、病型、精神症状の特徵、経過類型などがあげられている。

1. 統合失調症発生率に明らかな性差はみられない

1. 男性は予後不良、女性は予後良好

1. 若年者での発症は予後が悪い

1:急性発症の方が、緩徐に発症する者よりも予後良好とされる。
memo ただし急性発症であっても、思考,感情障害などが顕著な場合は予後不良となる。

2:発症年齢が高く、社会経験を有する者の方が、学業途中で早くに発症する者よりも予後良好とされる。

3:病前性格として、社交的で快活、情味のある循環気質の方が、非社交的で内気、鈍感などの続合失調症気質の者よりも予後良好とされる。

与後良好 : 緊張>妄想>破瓜

4:自閉,感情鈍麻などの陰性症状が強いと予後が悪く、陰性症状が前景に出る破瓜型は、慢性に無為,自閉の経過をたどる予後不良の型として知られる。

3. 破瓜型は、思考形式障害と感情の障害が顕著な病型である。陰性症状が早期に生じ、予後不良である。

2. 妄想型(30歳)は、被害妄想が症状の中心で、被害的内容の幻聴を伴うことが多い。また、妄想はしばしば体系化する。

4. 緊張型(20歳)は、カタレプシー、反響言語(おうむ返し)、反響動作、拒絶症などがみられる。興奮と昏迷(意識はあるが、自発的な行動はない)の間を交替するのは緊張型である。

5. 統合失調症の慢性期にも幻覚や妄想はしばしばみられるが、急性期に比して不安や恐怖などの感情反応は伴わない。

前駆期(幻聴、妄想がみられる前)聴覚過敏

急性期(幻聴、妄想がみられる時期)

消耗期(抑うつ、思考平板化)

回復期(意欲向上)

5:家族による感情表出(expressed emotion: EE〉が高いと統合失調症の再発率が高くなるとされる。
memo 家族による批判的コメント、敵意、感情的な過度の巻き込まれが強い場合を高EEと呼ぶ。

4:自分の考えが他者からの声になって頭の中
で聞こえるという幻聴は,思考化声といわれ,統合失調症の症状である.

2:離人症状は、自分の知覚、感情、行為などに生き生きした実感がないと訴える症状をいい、うつ病統合失調症離人症候群でみられる。

1. 両価性は、同一の対象に対し、、愛と憎しみなど、相反する感情が同時に存在する状態である。

2. 関係妄想は、周囲の些細な出来事や他人の身振り、言葉などを自己に関係づけるものである。嫌がらせや当てつけなど被害的にとらえることが多い。

3. 妄想知覚は、正常な知覚がある場合に、それに対して突然了解不可能な特別な意味付けがなされ、それが強く確信されるものである。

「犬が自分に向かって前足を上げたのは天の啓示である」
4. 連合弛緩は、会話の文脈がまとまらず、次第に主題からそれて、筋が通らなくなることである。

memo 思考を構成する観念の間に関連性が弱く、話はだいたいわかるがまとまりがい状態である。

もっとヤバイー言葉のサラダ

薬物治療ー従来型ーハロペリドールクロルプロマジン(陽性症状改善、陰性症状強化)

 

副作用ー錐体外路障害ーパーキンソニズム、ジストニアアカシジア

②大熊輝雄:現代臨床精神医学、改訂第11版、金原出版、p.92-93, 340①上島国利,他(編):精神医学テキストー精神障害の理解と治療のために,改訂第4版,南江堂,2017, pp 144-164,p276.②岩波明:やさしい精神医学人門,角川学芸出版,2010, pp 122-124,③上野武治(編): 精神医学,第4版,標準理学療法学,作業療法学(專門基礎分野),医学書院, 2015,pp 125-144.①尾崎紀夫,他(編):標準精神医学、第7版、医学書院、p.321, 330-333. ②加藤進昌,他(編):TEXT 精神医学、改訂3版、南山堂、p.204-225

 

抗精神病薬には、定型抗精神病薬(第一世代あるいは従来型)と、は新世代)がある。非定型抗精神病業は、抗精神病業非定型抗精神病薬(第二世代あるいと比較してバーキンソニズムなどの副作用は少ないが、まったく出現しないということではない。

1:肥満も非定型抗精神病薬に特徴的な注意すべき副作用とされるが、これはヒスタミンH,受容体やセロトニン5-HT&遮断に伴うものであり、投与後早期には出現しない。

2:水中毒は多量の飲水により著明な低ナトリウム血症をきたし、様々な中枢神経症状(惠心、嘔吐、意識障害など)を呈する病態であり、定型抗精神病薬の副作用として生じる。3: 悪性症候群は身体衰弱時に抗精神病薬を投与することで発熱、頻脈などの自律神経症状、筋強剛、意識障害を主症状として生じ
るもので、定型抗精神病薬の副作用として多い。

4:アカシジア《着座不能症》は足がムズムズして落ち着かない症状をいい、非定型抗精神病薬の投与後早期から出現する副作用として頻度が高い(急性アカシジア)。急性アカシジア自体は原因業剤の投与開始か增量後、6週以内に症状が発現するとされるが、実際の報告では3日から2週以内の発現が多い。

5:遅発性ジスキネジアは口や舌、顔面の筋肉などが不随意的に動いてしまう症状をいい、定型抗精神病薬の6か月以上の長期服用でみられる。

 

認知症は変化する】

1. MCIでは基本的な日常生活動作は可能であり、このことは診断基準の1つでもある。

1. 12-15%がアルツハイマー型に移行

1. Alzheimer型認知症への移行(コンパート)、は平均年間10%である、

2. 意識障害の有無は認知症の診断上重要であり、意識が正常なもとで診断されれる(意識は清明でなければならない)。

2:本来、典型的な認知症は不可逆的で治療困難な神経変性疾患をいうが、なかには早期治療で劇的に認知機能が回復するものがある。この"治療可能な認知症(treatable dementia)の1つが硬膜下血腫であり、その他にも正常圧水頭症HIV脳症などがこれに含まれる。

3:Alzheimer型認知症では海馬·側頭葉内側面を中心に大脳皮質の萎縮、脳溝・脳室の拡大を認めるが、 頭部CTやMRIなどの形態画像で明確となるのは症状がある程度進行した典型例であり、発症初期での診断は難しい。

 

初期ーPET,SPECT

Alzheimer 型認知症とは、変性疾患に属する
原因不明の認知症疾患である。脳の全般的萎縮がみられ、神経原線雑変化、アミロイド沈着を特徴とする老人斑、神経細胞の脱落などを認める。

1, 女性に多く 発症するのはAlzheimer型認知症である。

Alzheimer型認知症ー徘徊

錐体外路症状

1. Alzheimer型認知症は、海馬や側頭葉、頭頂葉の萎縮が目立つ。

1. 皮質のびまん性萎縮はAlzheimer型認知症に特徴的である。
2. Alzheimer型認知症は、遺伝性の有無により、家族性と非家族性(孤発性)に区別される。家族性は約1割とされる。

 

Alzheimer 型認知症の中核症状は

①記憶障害、

失見当識障害、

③失認・失行・失語、遂行機能障害

他は周辺症状

2: Alzheimer型認知症では記憶障害が進行していくと、物のしまった場所を忘れたにもかかわらず誰かに盗られたと騒ぐというような、物盗られ妄想を呈する。

早期ー時間の見当識末期ー人物の見当識が障害されやすい

1. Alzheimer型認知症見当識障害は,

始めに①時間の見当識障害が現れる。そのため出来事の前後関係が分からなくなる。

次に②場所の見当識障害が現れ、自分の都屋やトイレの位置関係が分からなくなる.

最後に③人物の見当識隊害が現れる、自分の家族も認識できなくなり、

最終的には④自分が何者なのか分からなくなる自己見当識障害となることもある。

1.幻覚症状妄想、精神的興奮などAlzheimer 型認知症の特徴的症状である。幻覚や妄想にとらわれて器物を破損したり、他人に危害を加えたり何らかの問題を起こす場合も少なくない。

3: Alzheimer型認知症では、初期は人格水準は保たれる。後期には人格の崩壊が顕著で、表情は乏しく、言語の理解も障害される。

5: Alzheimer型認知症は、記憶障害を中心とした認知症症状が緩徐に進行性の経過をたどり、末期には高度の知能低下と人格の崩壊を特徴とする。
上島国利 他(編) : 精神医学テキストー精神障害の理解と治療のために, 改訂第4版, 南江堂, 2017, pp 111-130. ②上野武治(編) : 精神医学, 第4版, 標準理学療法学, 作業療法学(専門基礎分野), 医学書院, 2015, p 74. ③尾崎紀夫, 他(編) : 標準精神医学, 第7版, 医学書院, 2018, pp 413-428.

 

Lewy小体型認知症の中核症状は、

①注意や覚醒レベルの変動を伴う認知機能の動揺,

②現実的で詳細な内容の幻視が繰り返される

③REM 睡眠行動障害である。

④パーキンソニズム

⑤転倒, 失神, 自律神経症状などを呈す

4:繰り返される幻視はLewy小体型認知症の特徵とされる。替え玉妄想、嫉妬妄想

3. Lewy 小体型認知症は、大脳皮質に出現するLewy小体を特徴とする。認知能力障害は変動しやすい
4. Lewy 小体型認知症やParkinson 病では、交感神経障害により、MIBG (メタヨードベンジルグアニジン)心筋シンチグラフィーの集積低下が認められる。


前頭側頭型認知症は、連合野の障害による症状が前景に出る。これによりみられる問題行動のために、日常生活は大きく障害されるものの、記銘力障害は目立たないことが多い。

1: Pick 病(前頭側頭型認知症)は原因不明であるが,前頭葉や側頭葉に著しい萎縮が認められる。

1. 前頭側頭型認知症は,

前頭葉と側頭葉の萎縮と

②行動障害(脱抑制,無為,無関心,他者への共感性,同情の欠如,常同行動,時刻表的生活,滞続言語,食行動の変化,等)が特徴である。

1:時刻表的行動は、病的な繰り返し行動として前頭側頭型認知症にみられる。
memo決まった時刻にワンパターンのコースを歩き回ったりする。進行するまで道に迷うことはない。
4,5:初期より人格変化,問題行動,滞続(たいぞく)言語(何に対しても「同じ返答,同じ言葉,同じフレーズ」をどんな状況でも繰り返してしまう言語症状)などが認められるが,視空間認知障害は認められない.

考え無精

①上野武治(編) : 標準理学療法作業療法学 精神医学第4版,pp74-81,医学書院,2015.

 

脳血管性認知症は、血管領域に行くはずの血流が、梗塞や塞栓、出血により滞るために皮質が障害され、後遺症として発症する認知症である。

1. 男性に多く発症する

段階的に増悪

脳血管性認知症は、病識は保たれる場合が多い

錐体路徴候あり

5. 血圧の変動に伴って血流が変化し、それにより覚醒レベルが変動しやすくなり、強制泣きや強制笑いなどの感情失禁が起こりやすくなる。ただし人格変化は少なく道徳感情は保たれやすい
下仲順子(編):現代心理学シリーズ14老年心理学、改訂版、培風館、p. 38-43.細田多穗(監修): シプル理学療法学シリーズ高齢者理学療法学テキスト、9堂、p.63-65.福井圈彦(監修)、前田眞治:老人のリハビリテーション、第8版、医学書院、p. 240-246

 

進行性核上性麻痺は、易転倒性(特に後方に)と垂直性眼球運動障害(核上性注視麻痺),前頭葉認知症が特徴である。

2. 進行性核上性麻痺は歩行、眼球運動、構音嚥下障害などが特徵。

1:進行性核上性麻痺は40歳以後,特に60 歳代に多く,性別は男性に多い。

 

皮質基底核変性症の中核症状は,L-Dopa に反応しないパーキンソニズム,非対称性の無動,筋強剛,皮質型ミオクロースス.他人の手兆候(自己の意思とは無関係に左手が無目的に動くこと)なとである。

 

1. 回想法は、認知症患者が古い記憶を維持しているという原則に基づき、残存する記憶を適切な場面、状況で再認する訓練である。
2. マッサージは、 認知症患者に対する刺激に焦点を当てたアプローチである。
3. アロマセラピーは、認知症患者に対する刺激に焦点を当てたアプローチである。
4. バリデーション療法は、 認知症患者の徘徊などの問題行動の抑制を目指すものである。患者の失敗や問題行動を責めるのではなく、正しい行動をほめることにより強化し、適切な行動を誘発しようとする方法である。
5. リアリティオリエンテーション (現実見当識訓練)は、見当識などの質問を繰り返し行い、日常生活で当たり前に行ってきた動作を通じて、対人関係や協調性を取り戻したり、残存機能に働きかけたりする。
①奈良勲·他(シリーズ監修)、 大内尉義(編):標準理学療法学·作業療法学 専門門基礎分野、老年学、 第4版、医学書院、 p. 185-186.②(公財)長寿科学振興財団:リアリティ·オリエンテーションhttps://www.tyojyu.or.jp/ net/byouki/ninchishou/reality.html)

 

認知症高齢者に対応するときには高齢者に対
する配慮だけでなく、 認知障害に対する配慮を加えて接することが基本となる.

1:Alzheimer型認知症の中核症状に記憶障害があり,出来事全体を忘却してしまう。そのため,周りには事実に反する内容でも,本人にとっては事実であるため,その訴えを否定せずに理解を示すことが重要である.

2:言語の理解力が低下している場合も多く,その場合には会話において長文を使用するの
ではなく,日常的な簡単な用語や短文を用いて会話をする。

3:身体拘束は❌高齢者虐待防止法で高齢者虐待に該当すると解釈されている。かかわる人の対応の仕方により暴力が減るということが知られており, 暴力を起こさないようなケア内容に努めるべきである。

4:何度も同じ話をすることがあるが,それを指摘したり,怪訝な顔をしたりしてしまうと,失敗経験と捉え自信を喪失することにつながる。

5:記憶が低下していても若年期に覚えた言葉は残っていることが多い.高齢者になじみのあ
る古い言葉,用語はコミュニケーションを図るうえで重要である。
①島田裕之(総編集):高齢者理学療法学、医歯薬出版,2017.pp477-481,

 

1.手続き記憶の利用する。侵されている機能にばかり注目し, その機能へ働きかけをするよりは, ある程度保たれている機能に注目し, その残された機能をうまく活かす働きかけが必要である.運動動作の場合、手続き記憶を活用する (昔やっていた武道·体操,自転車こぎ,楽器,女性なら編み物,台所·家事動作)。
アルツハイマー認知症では, 日常生活場面
で無意識下に行えることが,指示では行えなく
なる(失行).無意識下での運動は, 手続き記憶
の取り出しに(障害されていない) 補足運動野
が関与する. ところが,意識して運動を組み立
てようとすると, それは頭頂葉の関与するとこ
うとなり, 動作が組み立てられない, したがっ
て、アルツハイマー認知症では,その人の生活してきた慣れ親しんだペースで, 構えをつくらせない、意識的状況に追い込まないよう, 無意識に運動動作を行わせる工夫が必要である。

①黒川幸雄(編集):高齢者の理学療法, 第2版、三輪出版2012,p29.

 

1. 身体依存(身体が薬に慣れてしまい薬がなくなると離脱症状が生じる依存状態)

身体依存+精神依存モルヒネ(痛み止め・アヘン抽出)、 アヘン類、ベンゾジアゼピン(睡眠薬)、

 

1. ヘロインは、身体依存+精神依存+耐性のいずれもみられるうえ、急速に形成される特徵がある。
2. LSD などの幻覚剤は、身体依存はなく、精神依存も他の依存性薬物よりは軽いとされる。耐性の形成は認められる。
3. コカインは、身体依存や耐性はみられない。ただし、多幸感や陶酔感が出現するため、強い精神依存が形成される。
4. 大麻は、身体依存や耐性はみられない。精神依存は、アルコールや覚醒剤と比較すると弱いが、形成される。
5. メタンフェタミンなどの覚醒剤は、身体依存はみられないとされるが、精神依存や耐性は形成される。
大熊輝雄:現代臨床精神医学、改訂第11版、金原出版、 p.247. 奈良,他(シリーズ監修)、上野
武治(編):標準理学療法学,作業療法学 専門基礎分野、精神医学、第4版、医学書院、p.107-111

 

バルビツレート(睡眠薬)

バルビツール酸系薬物で、睡眠薬,抗不安薬などがこれに含まれる.これらは身体依存を形成する.身体依存の形成は神経抑制薬で認められる。
1)尾崎紀夫,他(編):標準精神医学 第7版.pp506-
510,医学書院, 2018. 2)坂田三允(総編集):精神看護工クスペール14 アルコール.物依存症の看護, p93, 97,中山書店,2005.