形態構築アプローチって何?


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形態構築アプローチって何?


土屋元明(姿勢と歩きの専門家)
2018/03/20 07:54
 

 

セラピストであれば誰でも「ヒトの身体機能の改善を図りたい」ものです。

そのためには「身体機能のルール」を知る必要があります。

そのルールの1つを応用したのが「形態構築アプローチ」です。 

形態構築アプローチはヒトの形態を再構築することによって、運動機能の修復を図る技術です。 今回はそのアプローチの概要をご紹介いたします。

 


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人の身体機能について考えていくと、必ずどの人にも当てはまるルール(法則)が存在します。

その1つが「人は永遠に保持される機能は存在しない」というルールです。このルールに従い我々は、日々の臨床でたくさんのことを判断しています。

例えば、機能の再獲得が望めるのであればそれを目指し、機能の再獲得が難しいのであれば維持を目指し、機能が失われたのであれば受容等が必要になります。そして、これらを相手にうまく説明してサービスを提供するわけです。

しかし、この判断は簡単ではありません。皆さんはその人の機能をどう判断していますか?

 


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もちろん、機能を判断するには「機能を理解」する必要があり、機能についての「ルールを見つける」必要があります。

そしてそのルールの1つが「機能は形態と相関関係にある」ということです。

形態をみると機能を予測することができ、機能をみると形態を予測することができるということです。

美しい形態は機能としても完成されています。ではヒトの場合、機能として完成された形態はどのようなものなのでしょうか。

 


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機能をここでは運動機能として考えます。運動機能は筋力や関節可動域、平衡機能や持久力に分類できます。

そして、これら運動機能が発揮しやすい形態のヒントが「ヒトの自然立位」にあり、頭位や胴体、上下肢の位置関係をみることが重要となります。

 


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ヒトの自然立位の位置関係をこまかくみて、形態から運動機能を予測したのが、山嵜勉先生が提唱する形態構築アプローチとなります。

山嵜勉先生は「形態構築アプローチはヒトの形態を再構築することによって、運動機能の修復を図る理学療法技術である」と述べています。

 


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この技術で一番大切だと私が思っているのが、ヒトの自然立位を近くで観察するのではなく、離れてしっかり観察することにあります。

ヒトの形態全体をしっかり観察する事がまず第一歩となり、若い子とシニアの人と比べると様々な事に気づかされます。

 


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機能の原則に「機能は形態と相関関係にある」と述べましたが、機能として完成されたヒトの形態は左右わずかに非対称となっております。

この非対称は5㎜以下、5度以内と僅かであり、少し離れて観察しないと気づくことがありません。つまり何も気にせず観察したら左右対称に見えるということでもあります。

具体的に言うと胸骨柄の垂線と鼻梁の垂線を比べると頭位は5㎜以内の範囲で右に変位し、骨盤は右が後方回旋と挙上を伴っております。これは右の脛骨外捻が強い場合の自然立位を例に述べております。

 


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さて、人は永遠に保持される機能は存在しません。このため、機能は低下しますので、形態も様々な変化を伴います。

機能として完成された形態は一生続くことがなく、形態の変化は十人十色です。

 


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この様々な変化をしっかりと観察して、機能をある程度予測することができれば臨床の強い力になると思いませんか。私はこの考えのおかげで視野を広く捉えることが可能になりました。

あとは「だからどうするか」という「する技術」をもっともっと高めていければ、成長できると感じております。


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それでは、具体的に1つの例を挙げて機能予測をしてみましょう。写真の様に頭位が過剰に右に偏移していた場合、右に偏移させる理由は何でしょうか。

形態構築の考えからまず考えるのが、右下肢支持性低下を補うためか、左下肢の免荷として右に傾けているかの大きく2つを考えます。ここでは右脚の支持性低下から説明していくことにします。

何らかの理由で右下肢の支持性が低下すると、下肢の伸展機構を高めようと足部が内反優位となります。内反優位は底屈も優位となり、矢状面では股関節が屈曲しやすくなります。結果、バックマッスルを過剰に働かせて体幹を起こそうとします。写真では前額面の話のみをしてまいります。

足部内反優位となることで、相対的に見かけ上の脚長差が生まれ、さらに骨盤は後方回旋が優位となります。前額面上では骨盤を引き上げたような形となります。このため体幹としては左に偏移し、左荷重優位な姿勢になります。すると、相対的にバランスをとるために頭の重さを使って、右下肢に荷重をかけようとします。

このように考えた場合、右下肢の支持性が低下しているかを歩行や片足立位などの動作で確認していきます。動作で確認した内容が妥当であると考えたら、右下肢の支持性を高めるようなアプローチを行っていきます。

 


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形態構築アプローチにおけるアプローチ方法は足から、骨盤から、体幹から、手からなど様々な方法が存在します。

詳細はここでは紹介できませんので、書籍やこれから徐々に出していくノートをご参照ください。

評価から機能を予測し、動作で確認し、対応方法を考えて行い、また評価、予測、確認、対応…

この繰り返しで臨床を展開しますが、まさに技術が問われます。まだまだ技術のぎの字も語れませんが、こういった考えを広めて一緒に勉強できる仲間を増やしていければと思っております。

 

形態構築アプローチという考えに少しでも興味をもっていただいたり、再び興味をもっていただければ幸いです。一緒に学んでみたいという方、少し興味のある方は是非ご連絡ください(^^)/