股関節の機能解剖⑤~変形性股関節症~
本日は変形性股関節症についてお話いたします。
高齢化とともに変形性股関節症の患者さんも増加傾向にあると言われていますので、その病態や対応について確認していきましょう!
変形性股関節症とは
変形性股関節症とは、寛骨臼と大腿骨頭の関節軟骨が摩耗し、軟骨および骨に変形や増殖が生じる病態です。
病期によって、骨硬化や関節裂隙の狭小化、骨棘形成や大腿骨頭の扁平化、骨嚢胞形成などがみられます。
骨嚢胞とは?
骨嚢胞とは、軟骨損傷部から関節液などが骨に侵入することで骨が溶解され、空洞状態になったものです。
病期は変形の度合いによって、「前期」「初期」「進行期」「末期」に分かれます。
どの程度変形が進んでいるのかは、画像評価をもとに行われます。
一般的に、前期と初期では関節可動域制限は少ないと言われていますが、進行期になると股関節の可動域制限が著明になることが多いです。
・前期:関節裂隙は保たれているが、骨硬化像がみられる状態
・初期:わずかな関節裂隙の狭小化がみられる状態
・進行期:さらなる関節裂隙の狭小化、骨棘形成、骨嚢胞形成がみられる状態
・末期:関節裂隙は全体的に消失し、骨硬化や骨棘形成が顕著な状態
変形性股関節症の原因と対応
日本人における変形性股関節症の多くは二次性のもので、大半は臼蓋形成不全からの発症です。
そして、臼蓋形成不全がある場合、股関節の前捻角の増大が認められることが多いとされています。
変形性関節症の一次性と二次性の違い
一次性の変形性関節症とは、明確な原因がないということです。例えば、加齢変化や肥満、筋力低下などによって生じる変形を指します。
二次性の変形性関節症とは、明確な原因があるということです。例えば、股関節の場合は先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全が日本では大半を占めます。
臼蓋(寛骨側の屋根部分)の発育が不十分なため、大腿骨頭への被りが浅い状態
前捻角については下記をご参照ください。
股関節の機能解剖①~股関節の特徴と前捻角~
つまり、臼蓋形成不全などによる構造的不安定性が変形につながるということですね。
ちなみに、欧米では一次性変形性股関節症が大半を占めると言われています。
最近では高齢化に伴い、日本でも一次性の変形性股関節症が増加傾向にあるとされています。
臼蓋形成不全の評価に関しても画像評価が基本となりますが、前捻角評価が陽性の方にはエクササイズ指導において股関節への負担を考慮する必要がありますね。
それでは、どのような動きが股関節への負担が大きいのでしょうか。
深くしゃがむような動作は股関節への負担が大きいです。
そのため、例えばスクワットを行うにしても、深く行うことは避けた方が良いかと思われます。
ましてや、重いウエイトを担いだりしたら負荷倍増どころではないですからね(笑)
我々運動指導者は診断を下せる立場ではないですし、画像検査や血液検査など様々な検査を行えるわけでもありません。
そのため、疑わしいなと思ったら医療機関受診をすすめる、というスタンスが大切かと思います。
一方で、変形性股関節症の方が初診で医療機関を受診するのは、多くが40歳代~50歳代になってからです。ある程度生活に不自由が生じたり、痛みが強くなったりしてから、初めて医療機関に行くというパターンです。
そのタイミングでは、ある程度変形が進行しているケースもあります。
変形性股関節症というのは進行性の疾患ですので、運動指導者としては予防のために介入していくことも大切ですね。