股関節の機能解剖③~FAIについて~

 

前回は股関節の「つまり感」について機能的問題や軟部組織性の問題という視点からお話をしました。

 

股関節の機能解剖②~運動学的特徴~
今回は、構造的視点からも股関節のつまり感について考えてみましょう。

 

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FAIとは
FAIの診断指針
FAIの分類
まとめ
FAIとは
FAIとは、大腿骨寛骨臼インピンジメント(femoroacetabular impingement)のことです。

大腿骨頚部か寛骨臼のどちらか一方、もしくは両方に形態異常がある状態で、反復して動かしているうちに関節唇や関節軟骨を損傷してしまうという病態です。ですので、股関節痛の原因は様々ありますがFAIは骨形態異常によって股関節の動きに制限が生じることが特徴的ですね。

FAIの診断指針
FAIの診断には画像所見が必須条件ですが、臨床所見としては以下のようになります。

FAIの臨床所見

・前方インピンジメントテスト陽性

 (屈曲・内旋位での疼痛)

・股関節の内旋可動域低下

 (90°屈曲位における健側との比較)

・FABERテスト陽性
ちなみにFABERテストは屈曲・外転・外旋位における疼痛誘発テストですが、

Flex・ABduction・External Rotation」の略です。

実はFABERテストを習ってから数年後に気がつきました(笑)

  FAIの分類
FAIは以下の3つのタイプに大別されます。


①Pincer type

・臼蓋側の骨の増殖

・30~40歳代の女性に多いとされる

②Cam type

・大腿骨側の骨の増殖

・20~30歳代の男性に多いとされる

③Combined type (Mix type)

・①②の混合型
どのタイプが多いのかは報告によりばらつきがありますが、参考までに海外におけるリサーチをご紹介します。

Frankらは股関節症状のない2,114股を調べた結果、Pincer変形が67%に、Cam変形が37%に認められた、という報告をしています。

まとめ
FAIによるROM制限は構造的な問題によるものなので、運動療法による改善は難しいです。

ただし、それによって骨盤帯全体の機能低下につながっている可能性が高いので、それらは運動療法によって改善が可能です。

特に、疼痛が生じると関節に近いインナーマッスルは機能低下がしやすいので、運動療法による機能改善は必須となります。