筋トレを続ける技術〜マシュマロ・テストを攻略しよう

 

 

 なぜ、僕たちは筋トレを続けることができないのでしょうか?

 

 この問に、ハーバード大学の進化生物学者であるDaniell Liebermanはこう答えています。

 

 「そもそも、ヒトは筋トレをするようにはデザインされていない」

 

 約200万年もつづいた石器時代は、食料が不足した受難な時代でした。エネルギーが足りない中で、ヒトが行動する優先事項は、食べものを得るための狩猟、肉食獣からの逃避、子孫を残すための生殖活動でした。これらの活動にエネルギーを費やすために、余暇の時間はゴロゴロして余分なエネルギーを使わないように進化の過程で最適化されてきたのです。

 

 そのため、現代の僕たちがジムに向かおうとすると石器時代のままの心はこう語りかけます。      

 

 「ジムは明日にして、テレビでも見ながらゴロゴロしていいんだよ」      

 

 これが筋トレを続けられない理由です。余暇の時間に筋トレをしないで、ゴロゴロすることには進化論的な合理性があるのです。

『筋トレが続かない理由〜ハーバード大学が明らかにした答えとは?』

 

 では、進化の過程で構築されたゴロゴロしたいという強力な欲求を抑えて、筋トレを続ける方法はあるのでしょうか?

 

 今回は、発達心理学の知見から筋トレを続ける方法論について考察していきましょう。発達心理学は、筋トレを続ける秘策をこう述べています。

 

 「マシュマロ・テストを攻略せよ」

 

 

Table of contents

◆ マシュマロ・テストの結果がその後の人生を決める?
◆ イフ・ゼン実行プランを知っておこう
◆ 読んでおきたい記事
◆ 参考論文

 


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◆ マシュマロ・テストの結果がその後の人生を決める?
 

 筋トレを続けることができないのは、意志が弱いからでしょうか?

 

 この問に現代の社会心理学はこう答えています。

 

 「意志が弱いからではなく、意志力を上手にマネジメントできていないから」

 

 クイーンズランド大学のBaumeisterは、意志力はいわば筋力のようなものであるとして「意志力の筋力モデル」を提唱しています。疲労困憊までトレーニングをすると、いずれバーベルを持ち上げられなくなるのと同じように、意志力も負荷をかけ続けると消耗してしまい、少しの誘惑にも抗うことができなくなってしまうのです(Baumeister R, 2007)。

 

 つまり、意志力は無限にあるわけでなく、限りあるリソース(資源)なのです。

 

 仕事が忙しかったり、人間関係に疲れて意志力を使い切っていると、ジムに行く時間がきても、ついついテレビやスマホを見てゴロゴロしてしまうのは、意志力が消耗しているからなのです。

 

 そこで社会心理学は、さまざまな研究結果から筋トレを続けるためには、意志力が消耗していない休日や、早朝にトレーニングを行ったり、ダイエットのような他の意志力を消耗させる目標を同時にもたないことを推奨しています。筋トレを続けるコツは、意志力を強くするのではなく「上手にマネジメントする」ことなのです。

『筋トレを続ける技術〜意志力をマネジメントしよう』

 

 社会心理学の知見から、さらに具体的な方法論を提唱しているのが発達心理学です。

 

 飾り気のない部屋に研究者と子どもが入ってきました。椅子に座らされた子どもの目の前にはひとつのマシュマロが置いてあります。研究者は子どもにこう言い残して部屋から出ていきました。

 

 「そのマシュマロは食べて良いけど、私が戻るまでの15分のあいだに食べるのを我慢できたら、もうひとつのマシュマロをあげるよ」

 

 「もしマシュマロを食べちゃったら、ふたつめのマシュマロはお預けね」

 

 さて、子どもはマシュマロを食べたい欲求を我慢して、ふたつめのマシュマロを手に入れられるのでしょうか?

 

 これが有名な「マシュマロ・テスト」です。

 

 1970年、スタンフォード大学のMischelらは、幼稚園に通う子どもを対象にマシュマロ・テストを行った結果、3分の2の子どもが我慢できずにマシュマロを食べてしまい、残りの3分の1の子どもがふたつめのマシュマロを手に入れることができました。幼少期のころから意志力には個人差があったのです。

 

 さらに、Mischelらの追跡調査によって、テストの結果がその後の人生に大きな影響を与えることが明らかになる、マシュマロ・テストは一躍、有名になりました。

 

 2011年、デューク大学のMoffittらは、幼少期にマシュマロ・テストを受けた子どもたちを対象に、32歳になるまで追跡調査を行い、テストの結果で示された意志力の程度がその後の健康、経済的豊かさ、犯罪性との関連を検証しました。

 

 その結果、長い時間、我慢できた(意志力が強い)子どもほど、健康的であり、経済的に豊かであり、犯罪に関与しませんでした。逆に、すぐにマシュマロを食べてしまった(意志力が弱い)子どもほど、病気がちで、経済的に乏しく、犯罪に関与しやすいことが示されました(Moffitt TE, 2011)。


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Fig.1:Moffitt TE, 2011より筆者作成

 

 この結果から、幼少期の意志力がその後の人生に大きく関与することが示唆されたのです。

 

 しかしながら、マシュマロを食べてしまった(意志力が弱い)子どもでも、日常生活のたいていの状況では自制をコントロールすることができていました。問題だったのは魅力的な誘惑に直面したときだけだったのです。

 

 そこでMischelらは、意志力が弱くても誘惑に負けないための方法論を検証し、提案したのが「イフ・ゼン実行プラン」です。

 

 

 

 

◆ イフ・ゼン実行プランを知っておこう
 

 Mischelらはたとえ意志力が弱くても、意志力をマネジメントすることによってマシュマロ・テストを攻略できるのではないかと考えました。

 

 そこでふたつ目のマシュマロを手に入れた子どもたちの実験の様子を注意深く見てみると、多くの子どもたちがマシュマロを気にしないように他のことに注意を向けていることに気づいたのです。

 

 実験中、ある子どもは無言のパントマイムを続け、別の子どもは置いてあったベルを鳴らすことなく持ち上げて移動させることに意識を集中していました。また別の子どもは壁を叩きながら、自分が立てている音に意識を集中していました。

 

 テストに成功した子どもたちは、マシュマロの誘惑を回避するために別の行動をとっていたのです。これに対して、テストに失敗した子どもたちは、じ〜っとマシュマロを見つめながら、その誘惑と対峙していました。

 

 ここからMischelらが考案したのが「イフ・ゼン(もし~したら、そのときには~)実行プラン」です。この効果を実証したのがミスター・クラウン・ボックス実験です。

 

 ミスター・クラウン・ボックスは木箱で作ったピエロの人形です。箱の中にはオモチャやお菓子が入っており、楽しげな音楽とともに子どもたちにこう呼びかけます。

 

 「いっしょに遊ぼう!とても楽しいよ!」

 

 作業をしていた子どもたちが楽しげなピエロの誘惑に抗うのは困難です。すぐに作業をやめて、ミスター・クラウン・ボックスと楽しく遊び始めてしまいました。そこで、研究者はひとつの子どものグループにこう指示しました。

 

 「もし、ミスター・クラウン・ボックスに遊びに誘われたらこう言ってみよう」

 

 「『仕事しているから遊べないよ』ってね」

 

 このような単純なルールを決めただけで、子どもたちはミスター・クラウン・ボックスの誘惑に抵抗できるようになり、作業を継続することができたのです。

 

 これは、誘惑に意志力を使って我慢するのではなく、あらかじめ「もし(If)誘惑に直面したら、そのときは(then)こう行動しよう」と決めておくだけで、意志力を使わずに誘惑を回避できることを示しています。

 

 イフ・ゼン実行プランの効果をさらに検証したのがニューヨーク大学のGollwitzerらです。

 

 Gollwitzerらは、女子大生を対象にクリスマス休暇に行おうとしている目標をアンケートで調査しました。クリスマスという甘い誘惑が多い時期に、学生たちはセミナーのための資料を作る、新しいアパートを探す、両親とのケンカを解決するといった目標をもっていました。またGollwitzerらは、その目標を達成するための明確なプラン(いつ、どこで)があるか否かを調査しました。

 

 クリスマス休暇を終えた学生たちにGollwitzerらは、目標達成についてのアンケート調査したところ、明確なプランをもっていた学生の62%が目標を達成したのに対して、プランをもっていなかった学生の達成度は23%にとどまりました。

 

 さらに、同じようにクリスマス休暇前にレポートの課題を与えました。今度は半数の学生には「レポートを書く時間と場所」といったイフ・ゼン実行プランを書くように指示し、残りの学生には指示を与えませんでした。その結果、休暇後にレポートが完成していた割合は、実行プランを作成した学生が71%であったのに対して、作成しなかった学生は32%にとどまったのです。


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Fig.2:Gollwitzer PM, 1993より筆者作成

 

 課題を達成できた学生たちは「教会に行ったら大好きなスイーツのあるカフェには寄らずに家に帰り、レポートをする」というような具体的なプランを事前に作成することにより、誘惑に抗うことなく、自動的に目標を達成することができました。

 

 これらの結果から、Gollwitzerらはイフ・ゼン実行プランを作成することにより、意志力が弱くても目標達成度を高めることが可能であると述べています。(Gollwitzer PM, 1993)。

 

 これらの研究結果をもとに、イフ・ゼン実行プランの有効性はさまざまな分野で報告されています。たとえば、健康診断のような後回しにしがちな行動の開始(Rutter DR, 2006)や、薬を忘れずに飲むといった記憶と行動(Chasteen AL, 2001)、お菓子を食べないようにする行動変容(Verhoeven A, 2013)にイフ・ゼン実行プランの有効性が示唆されています。そしてGollwitzerらは、これらの研究報告をまとめて解析したメタアナリシスにより、イフ・ゼン実行プランの有効性をエビデンスとして示しているのです(Gollwitzer PM, 2006)。

*メタアナリシスとは、これまでの研究結果を統計的手法により全体としてどのような傾向があるかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン。

 

 

 筋トレを続けるという目標を設定したとき、そこには多くの誘惑が待っています。仕事から家に帰って、ジムに行く前にソファーに座ると、目の前にはテレビがあり、手もとにはスマホがあります。そこで、ついついテレビを見たり、スマホSNSをしたり、そしてゴロゴロしているうちに時間が経過して、結局、「明日、行けばいいや」と言ってジムに行くのをやめてしまいます。

 

 しかし、これは意志が弱いわけではなく、そもそもヒトは筋トレするようにはデザインされていませんし、仕事で意志力を使い切っていれば、誘惑に抗うことなどできません。子どもたちがマシュマロを食べてしまうように、僕たちがマシュマロ・テストで不合格になるのは仕方のないことなのです。

 

 では、どうすれば良いのでしょうか?

 

 まず、ジムに行くのを拒む「誘惑となるもの」を明確にしましょう。この場合、ソファ、テレビ、スマホが誘惑のホットスポットになります。次にこのようなイフ・ゼン実行プランを書き出しましょう。

 

 「家に帰ったら、ソファには座らずに、コーヒーを入れる。コーヒーを飲んでるときにテレビはつけない。スマホをバッグから出さない。コーヒーを飲み終えて、時間が来たらウエアを持って家を出る」

『コーヒーが筋トレのパフォーマンスを高める〜その科学的根拠を知っておこう』

 

 これで無駄な意志力は使わずに、ただプランに従って行動するだけで、自動的にジムへ行くことができるのです。

 

 マシュマロ・テストを攻略することが、筋トレを続ける解決策になるかもしれませんね。

 

 

◇ 参考書籍 

マシュマロ・テスト 成功する子、しない子 (早川書房)

作者: ウォルターミシェル
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筋トレの重要なエビデンスをまとめた新刊です!

科学的に正しい筋トレ 最強の教科書

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◆ 読んでおきたい記事
シリーズ①:筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう

シリーズ②:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

シリーズ③:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

シリーズ④:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう

シリーズ⑤:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取を知っておこう

シリーズ⑥:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取の方法論 

シリーズ⑦:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう

シリーズ⑧:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)の実践論

シリーズ⑨:筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう 

シリーズ⑩:筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間について知っておこう

シリーズ⑪:筋トレの効果を最大にするトレーニングの頻度について知っておこう

シリーズ⑫:筋トレの効果を最大にするタンパク質の品質について知っておこう

シリーズ⑬:筋トレの効果を最大にするロイシンについて知っておこう

シリーズ⑭:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取方法まとめ

シリーズ⑮:筋トレの効果を最大にするベータアラニンについて知っておこう

シリーズ⑯:いつまでも若々しい筋肉を維持するためには筋トレだけじゃ不十分?

シリーズ⑰:筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう(2017年7月版) 

シリーズ⑱:筋トレとアルコール摂取の残酷な真実

シリーズ⑲:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう(2017年7月版)

シリーズ⑳:長生きの秘訣は筋トレにある

シリーズ㉑:筋トレの最適な負荷量を知っておこう(2017年8月版)

シリーズ㉒:筋トレが不安を解消するエビデンス

シリーズ㉓:筋肉量を維持しながらダイエットする方法論

シリーズ㉔:プロテインの摂取はトレーニング前と後のどちらが効果的?

シリーズ㉕:筋トレの前にストレッチングをしてはいけない理由

シリーズ㉖:筋トレの効果を最大にするウォームアップの方法を知っておこう

シリーズ㉗:筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間を知っておこう(2017年9月版)

シリーズ㉘:BCAAが筋肉痛を回復させるエビデンス

シリーズ㉙:筋トレの効果を最大にするタマゴの正しい食べ方

シリーズ㉚:筋トレが睡眠の質を高める〜世界初のエビデンスが明らかに

シリーズ㉛:筋肉の大きさから筋トレをデザインしよう

シリーズ㉜:HMBが筋トレの効果を高める理由~国際スポーツ栄養学会のガイドラインから最新のエビデンスまで

シリーズ㉝:筋トレの効果を高める最新の3つの考え方〜Schoenfeld氏のインタビューより

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シリーズ㊻:筋トレは心臓も強くする〜最新のエビデンスが明らかに

シリーズ㊼:プロテインは骨をもろくする?〜最新の研究結果を知っておこう

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シリーズ68:筋トレは疲労困憊まで追い込むべきか?〜最新のエビデンスを知っていこう

シリーズ69:筋トレで疲労困憊まで追い込んではいけない理由(筋力増強編)

シリーズ70:筋トレで筋肥大の効果を最大にする「運動のスピード」を知っておこう

シリーズ71:筋トレで筋力増強の効果を最大にする「運動のスピード」を知っておこう

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シリーズ75:筋トレによる筋肥大の効果は強度、回数、セット数を合わせた総負荷量によって決まる

シリーズ76:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取方法まとめ(2018年8月版)

シリーズ77:筋トレとHMBの最新エビデンス(2018年8月版) 

シリーズ78:筋トレによる筋肉痛にもっとも効果的なアフターケアの最新エビデンス

シリーズ79:筋肥大のメカニズムから筋トレをデザインしよう

シリーズ80:筋トレの効果を最大にする週の頻度(週に何回?)の最新エビデンス

シリーズ81:筋トレ後のクールダウンに効果なし?〜最新のレビュー結果を知っておこう

シリーズ82:筋トレの総負荷量と疲労の関係からトレーニングをデザインしよう

シリーズ83:筋トレのパフォーマンスを最大にするクレアチンの最新エビデンス

シリーズ84:筋トレのあとは風邪をひきやすくなる?〜最新エビデンスと対処法

シリーズ85:筋トレのパフォーマンスを最大にするカフェインの最新エビデンス

シリーズ86:筋トレとグルタミンの最新エビデンス

シリーズ87:筋トレとアルギニンの最新エビデンス

シリーズ88:筋トレとシトルリンの最新エビデンス

シリーズ89:筋トレするなら知っておきたいサプリメントの最新エビデンスまとめ

シリーズ90:筋トレをするとモテる本当の理由

シリーズ91:高タンパク質は腎臓にダメージを与えない〜最新エビデンスが明らかに

シリーズ92:筋トレするなら知っておきたい食事のキホン〜ハーバード流の食事プレート

シリーズ93:筋トレを続ける技術〜マシュマロ・テストを攻略しよう

シリーズ94:スクワットのフォームの基本を知っておこう【スクワットの科学】 

シリーズ95:スクワットのフォームによって筋肉の活動が異なる理由

シリーズ96:スクワットの効果を最大にするスタンス幅と足部の向きを知っておこう

シリーズ97:ベンチプレスのフォームの基本を知っておこう【ベンチプレスの科学】

シリーズ98:ヒトはベンチプレスをするために進化してきた【ベンチプレスの科学】

シリーズ99:デッドリフトのフォームの基本を知っておこう【デッドリフトの科学】

シリーズ100:デッドリフトのリフティングの基本を知っておこう【デッドリフトの科学】

シリーズ101:筋トレを続ける技術~脳をハックしよう!

シリーズ102:腕立て伏せの回数と握力から心臓病のリスクを知ろう!

シリーズ103:筋トレは朝やるべきか、夕方やるべきか?〜最新エビデンスを知っておこう

シリーズ104:筋トレによる筋肥大の効果は「週のトレーニング量」で決まる!【最新エビデンス

 

 

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◆ 参考論文
Baumeister R, et al. The strength model of self-control. Current Directions in Psychological Science. 200716, 351–355. 

Mischel W, et al. Attention in delay of gratification. Journal of Personality and Social Psychology. 1970 16, 329–337

Moffitt TE, et al. A gradient of childhood self-control predicts health, wealth, and public safety. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Feb 15;108(7):2693-8.

Gollwitzer PM, et al. Goal Achievement: The Role of Intentions. European Review of Social Psychology. 1993 4(1):141–185

Rutter DR, et al. An implementation intentions intervention to increase uptake of mammography. Ann Behav Med. 2006 Oct;32(2):127-34.

Chasteen AL, et al. Implementation intentions and facilitation of prospective memory. Psychol Sci. 2001 Nov;12(6):457-61.

Verhoeven A, et al. Less is more: The effect of multiple implementation intentions targeting unhealthy snacking habits. European Journal of Social Psychology. 2013 43, 344–354.

Gollwitzer PM, et al. Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-Analysis of Effects and Processes. Advances in Experimental Social Psychology. 2006 38(6)

 
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形態構築アプローチって何?


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形態構築アプローチって何?


土屋元明(姿勢と歩きの専門家)
2018/03/20 07:54
 

 

セラピストであれば誰でも「ヒトの身体機能の改善を図りたい」ものです。

そのためには「身体機能のルール」を知る必要があります。

そのルールの1つを応用したのが「形態構築アプローチ」です。 

形態構築アプローチはヒトの形態を再構築することによって、運動機能の修復を図る技術です。 今回はそのアプローチの概要をご紹介いたします。

 


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人の身体機能について考えていくと、必ずどの人にも当てはまるルール(法則)が存在します。

その1つが「人は永遠に保持される機能は存在しない」というルールです。このルールに従い我々は、日々の臨床でたくさんのことを判断しています。

例えば、機能の再獲得が望めるのであればそれを目指し、機能の再獲得が難しいのであれば維持を目指し、機能が失われたのであれば受容等が必要になります。そして、これらを相手にうまく説明してサービスを提供するわけです。

しかし、この判断は簡単ではありません。皆さんはその人の機能をどう判断していますか?

 


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もちろん、機能を判断するには「機能を理解」する必要があり、機能についての「ルールを見つける」必要があります。

そしてそのルールの1つが「機能は形態と相関関係にある」ということです。

形態をみると機能を予測することができ、機能をみると形態を予測することができるということです。

美しい形態は機能としても完成されています。ではヒトの場合、機能として完成された形態はどのようなものなのでしょうか。

 


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機能をここでは運動機能として考えます。運動機能は筋力や関節可動域、平衡機能や持久力に分類できます。

そして、これら運動機能が発揮しやすい形態のヒントが「ヒトの自然立位」にあり、頭位や胴体、上下肢の位置関係をみることが重要となります。

 


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ヒトの自然立位の位置関係をこまかくみて、形態から運動機能を予測したのが、山嵜勉先生が提唱する形態構築アプローチとなります。

山嵜勉先生は「形態構築アプローチはヒトの形態を再構築することによって、運動機能の修復を図る理学療法技術である」と述べています。

 


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この技術で一番大切だと私が思っているのが、ヒトの自然立位を近くで観察するのではなく、離れてしっかり観察することにあります。

ヒトの形態全体をしっかり観察する事がまず第一歩となり、若い子とシニアの人と比べると様々な事に気づかされます。

 


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機能の原則に「機能は形態と相関関係にある」と述べましたが、機能として完成されたヒトの形態は左右わずかに非対称となっております。

この非対称は5㎜以下、5度以内と僅かであり、少し離れて観察しないと気づくことがありません。つまり何も気にせず観察したら左右対称に見えるということでもあります。

具体的に言うと胸骨柄の垂線と鼻梁の垂線を比べると頭位は5㎜以内の範囲で右に変位し、骨盤は右が後方回旋と挙上を伴っております。これは右の脛骨外捻が強い場合の自然立位を例に述べております。

 


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さて、人は永遠に保持される機能は存在しません。このため、機能は低下しますので、形態も様々な変化を伴います。

機能として完成された形態は一生続くことがなく、形態の変化は十人十色です。

 


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この様々な変化をしっかりと観察して、機能をある程度予測することができれば臨床の強い力になると思いませんか。私はこの考えのおかげで視野を広く捉えることが可能になりました。

あとは「だからどうするか」という「する技術」をもっともっと高めていければ、成長できると感じております。


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それでは、具体的に1つの例を挙げて機能予測をしてみましょう。写真の様に頭位が過剰に右に偏移していた場合、右に偏移させる理由は何でしょうか。

形態構築の考えからまず考えるのが、右下肢支持性低下を補うためか、左下肢の免荷として右に傾けているかの大きく2つを考えます。ここでは右脚の支持性低下から説明していくことにします。

何らかの理由で右下肢の支持性が低下すると、下肢の伸展機構を高めようと足部が内反優位となります。内反優位は底屈も優位となり、矢状面では股関節が屈曲しやすくなります。結果、バックマッスルを過剰に働かせて体幹を起こそうとします。写真では前額面の話のみをしてまいります。

足部内反優位となることで、相対的に見かけ上の脚長差が生まれ、さらに骨盤は後方回旋が優位となります。前額面上では骨盤を引き上げたような形となります。このため体幹としては左に偏移し、左荷重優位な姿勢になります。すると、相対的にバランスをとるために頭の重さを使って、右下肢に荷重をかけようとします。

このように考えた場合、右下肢の支持性が低下しているかを歩行や片足立位などの動作で確認していきます。動作で確認した内容が妥当であると考えたら、右下肢の支持性を高めるようなアプローチを行っていきます。

 


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形態構築アプローチにおけるアプローチ方法は足から、骨盤から、体幹から、手からなど様々な方法が存在します。

詳細はここでは紹介できませんので、書籍やこれから徐々に出していくノートをご参照ください。

評価から機能を予測し、動作で確認し、対応方法を考えて行い、また評価、予測、確認、対応…

この繰り返しで臨床を展開しますが、まさに技術が問われます。まだまだ技術のぎの字も語れませんが、こういった考えを広めて一緒に勉強できる仲間を増やしていければと思っております。

 

形態構築アプローチという考えに少しでも興味をもっていただいたり、再び興味をもっていただければ幸いです。一緒に学んでみたいという方、少し興味のある方は是非ご連絡ください(^^)/

きゃっとばっく

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きゃっとばっくやり方
目的
エクササイズの理論的背景
よく見られる代償


きゃっとばっく

こんにちは。

imok株式会社の古城です。

今回ご紹介するエクササイズは「きゃっとばっく」です。

 おなじみの「きゃっとばっく」ですが、腹斜筋や前鋸筋、僧帽筋下部線維を促通し、骨盤の後傾、脊柱の屈曲、肋骨の内旋を行うのに最適です。

 それにより、オープンシザースシンドロームによって、外旋している肋骨を、内旋させるのに効果的です!

 また、肩甲胸郭関節のモスタビリティを高めるのにも効果的なエクササイズですので、ぜひご活用ください。

 

やり方

  1. 股関節の下に膝、肩の下に手を付き、四つ這い姿勢をとります
  2. 骨盤を後傾し、腰椎から1つずつ分節的に脊柱を屈曲させます
  3. 脊柱を屈曲させる際は、しっかりと息を吐き、腹筋を感じていきます
  4. 前鋸筋や僧帽筋下部をより促通したい時は、前に荷重した状態で行います
  5. 1つずつ分節的に脊柱をコントロールし、四つ這いに戻ります


目的

腹筋群の促通
前鋸筋、僧帽筋下部線維の促通
コアおよび肩甲胸郭関節の安定化
ZOAの獲得
骨盤から脊柱の分節的なコントロールの獲得


エクササイズの理論的背景

 骨盤の後傾、脊柱の屈曲、肋骨の内旋を行い、腹筋群、前鋸筋、僧帽筋下部線維の促通を行います。
 
 オープンシザースシンドロームで肋骨が外旋位で固定されていると、背部筋は短縮しやすくなりますが、腹筋群を収縮することで相反抑制によって背部筋が伸長しやすくなると考えられます。屈曲筋群を活性化し、脊柱起立筋などの伸展筋群を抑制するこのエクササイズを行うことでリブフレアの改善につながります。
 
 
 更には、四つ這いでの屈曲動作を行うことで、先述の様に前鋸筋群を促通して肩甲帯を安定させると共に、肩甲骨を固定点として僧帽筋下部線維を使い、脊柱の屈曲および肩甲骨に肋骨を引き付けることができ、それによって日頃圧迫されている後縦郭を拡張できると考えられます。
 
 後縦郭が拡張をすることで、交感神経の圧迫なども解放される為、日頃、胸椎伸展および肋骨が外旋し、後縦郭が圧迫されているオープンシザースシンドロームの方には、ぜひ行って頂きたいエクササイズです。
 

よく見られる代償

  • シュラッグ

屈曲する際に過剰にシュラッグを起こすと、肩甲胸郭関節が安定しないため、上腕を外旋させるようにして肩甲骨を適切なポジションに保ちましょう。

 オープンシザースシンドロームの姿勢が長く続き、脊柱の伸展、肋骨外旋が強い状態では、肩甲胸郭関節の安定性が失われている為、「きゃっとばっく」を行うと思っても、上手く丸まることが出来なかったり、肩甲胸郭関節が安定せずにシュラッグをしてしまうことが多く見られます。

 そうした方の場合、先ずは「バタフライ」やリフォーマーを活用した「ラウンドバック」など、伸展に関わる筋群を抑制した後に行うと効果的です。

以上、「きゃっとばっく」のご紹介でした。

それでは、次のエクササイズでお会いしましょう!

90-90ヒップリフト

今回は「90−90ヒップリフト」というエクササイズをご紹介します。

 

Contents [hide]

90−90ヒップリフトやり方
目的
エクササイズの理論的背景
よく見られる代償


90−90ヒップリフト

「ヒップリフト」あるいは、ピラティスなどを学んでいる方は、「アーティキュレーションショルダーブリッジ」というエクササイズ名でご存知の方も多いかもしれません。

 今回ご紹介するエクササイズの「ヒップリフト」は、90-90のポジションで、ハムストリングスを使って骨盤を後傾し、骨盤から脊柱を1つ1つコントロールしながらエクササイズです。

 ヒップリフトを行う際に、体幹を固めて一枚の板の様に持ち上げるストレートブリッジなどのやり方もありますが、今回は「ソフトコア」なエクササイズとして、椎体を1つ1つ分節的にコントロールしていきましょう!

 

やり方

  1. 仰向けに寝ます
  2. 脚を椅子やバランスボールなどにのせ、90-90の状態にします
  3. 椅子やボックスに踵を押し付け、ハムストリングスを使って骨盤を後傾します
  4. 骨盤の後傾をキープしながら、みぞおちのあたりまで背骨を一つ一つ床から持ち上げます
  5. 剥がしたシールを元に戻す様に、1つ1つ背骨を地面に付けていきます

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目的

 

エクササイズの理論的背景

 骨盤の後傾、脊柱屈曲、肋骨の内旋という様に、屈曲の活性化を行います。また、骨盤を後傾させ、背骨を一つ一つ持ち上げていくことで、股関節ー骨盤ー脊柱の分節的なコントロールを獲得します。

 そして、ハムストリングス、内転筋、大殿筋などの股関節伸展筋群を協調的に使いながら、股関節の伸展を行うことを学習できます。

 更には表層の筋肉によって体幹を固めながら行うのではなく、深層の筋を使い、体幹のソフトコアなエクササイズとして、椎体を1つ1つコントロールします。

 

よく見られる代償

多い代償動作は以下の3つです

  • リブフレア、チンアウト

脊柱を伸展させる時に、リブフレアをして伸展を出そうする方やアゴが上がってしまう方がいます。

その場合は口頭での修正が可能な場合、キューイングにより修正を行います。胸郭の可動性や過剰な緊張の問題であれば、先に伸展のスイッチを切るエクササイズや胸郭のモビリティを確保するエクササイズを行いましょう。

  • 胸腰椎移行部での過剰伸展

このエクササイズの目的は、屈曲の活性化および脊柱の分節的なコントロールなのですが、「お尻を上げること」が目的となってしまい、上げることを意識するあまり胸腰椎移行部で伸展しまう方がいます。

その際は上げ過ぎず、コントロールできることからまずは行いましょう。
 

 以上、「90−90ヒップリフト」のご紹介でした。

それでは、次のエクササイズでお会いしましょう!

機能改善の為の介入方法

こんにちは。

imok株式会社で活動している理学療法士の中北貴之です。

いつもimok academyのサイトを通じて、各部位ごとの機能解剖を中心にお話をさせて頂いていますが、今回は全身のどこの部位にも共通する”機能改善の為の介入方法”がテーマです。

他の記事をご覧頂いていて、結局どうすれば改善するの?

といった疑問が生じた際は、この記事を確認すれば大丈夫!という内容のつもりです(笑)

なお、あくまでも弊社で行っている介入の考え方であり、絶対的な正解だと言い張るつもりはございませんので悪しからず!

 

レーニングピラミッド

機能改善を図るうえでは、身体の土台となる部分から介入していくことが大切です。f:id:uta-huuta-maro-ojyou:20200617205908j:image

例えば、片脚スクワットなどの機能的動作パターンの改善(下から4段目)を図るのであれば、その土台となる「神経系のリセットやアライメントの改善」「適切な呼吸パターンの獲得や関節可動域制限の改善」「モスタビリティ(自動運動で安定して関節を動かすことができる)」といったことが必要です。

現代人の多くは運動不足や栄養の質不足、日々のストレスやデジタルデバイスの過用などによって、中枢神経系の機能低下から過緊張な状態になりやすいと言われています。

そのため、感覚システムの正常化などの神経系のリセットや、アライメントの改善といった介入から行います。

 

神経系のリセットについてはまた別の機会に詳しくご紹介できればと思いますが、要点としては感覚器を刺激して適切なインプット情報を脳や脊髄といった中枢神経系に送り、それらの情報を中枢神経系が適切に統合できるようにすることです。

なお、下記セミナーでは姿勢改善をテーマにして感覚器や中枢神経系の評価、Bodyworkによる改善アプローチをご紹介しています。

https://www.facebook.com/events/2530133870548512/

 

介入のStep1~Step4

それでは、本題に戻って介入の流れを確認していきましょう。

 

”Step1”では、過緊張になっている筋肉の抑制を行います。具体的には脊柱伸展や骨盤前傾に作用する広背筋や脊柱起立筋群、股関節屈筋群などの抑制です。方法はストレッチでもマッサージでも何でもOKですので、皆さんが得意なことや、お客様がリラックスしやすいものを選択してください。

 

”Step2”では、脊柱屈曲や骨盤後傾に作用する腹筋群や前鋸筋、ハムストリングス、大内転筋の伸展内旋線維、中殿筋前部線維などを活性化していきます。

【動画】90/90ヒップリフト https://imok-academy.com/90-90hip-lift

【動画】ベアラウンド https://imok-academy.com/bear-round

↑おすすめのエクササイズの一例です♪

 

“Step3”では片側ずつでも体重を支持できる状態を作っていきます。ヒトはそもそも内臓の位置が非対称ですし、脳機能にも左右差がありますので、荷重にも左右差が生じます。

その差は必然と言えますが、左右差が大きくなり過ぎると障害などにも繋がりますので、ある程度整えることも大切です。

【動画】ZOAきゃっとばっく https://imok-academy.com/resistance-zoa-catback

ピラティスリフォーマーが無い方は床でもOKです!

 

“Step4”ではモスタビリティの獲得ということで、多様な肢位で四肢の分離運動などを行っていきます。前述のトレーニングピラミッドで考えると、機能的動作の一歩手前の段階にあたります。例えばベアーポジションでコアを安定させたまま対角の上肢と下肢を動かすなどです。

 

機能改善の為の介入の流れ

①過剰な緊張の抑制

②屈筋群の活性

③左右荷重の活性

④モスタビリティの獲得

 
基本的には上記のような流れで介入すると、効果的が出やすいかと考えております。

後はエクササイズの変数として「ボリューム」「強度」「複雑性」などでお客様に合わせていきますが、Bodyworkであれば複雑性のコントロールになることが多いですね。

さすがに具体的なエクササイズを全てご紹介しきれませんが、随時本サイトでもエクササイズをアップしていきますので乞うご期待ください!

また、弊社で行っている「imok’s Mentorship 」や「機能解剖セミナー」でも様々なエクササイズをご紹介しておりますので、よろしければご活用ください!

 

imok'sセミナー
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

imok株式会社

中北貴之

胸郭の機能解剖③~肋骨と脊柱アライメントの関係~

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今回は脊柱のアライメントと肋骨の関係についてお話します。

前回の内容から、今回に関わる部分だけを簡単に復習しましょう。

 

肋椎関節の「締まりの位置」と「緩みの位置」

・肋骨外旋位(後方回旋して開いている状態)=締まりの位置

・肋骨内旋位(前方回旋して閉じている状態)=緩みの位置


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関節の締まりの位置では関節の適合性が良くなるので安定性が高まりますが、可動性は低下します。緩みの位置はその逆です。

   
そして、肋椎関節は「肋骨」と「胸椎」が構成する関節ですので、当然ながら胸椎のアライメントの影響を受けます。

今日は脊柱のアライメントとの関係についてお話をしていきたいと思います。

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脊柱の生理的弯曲
肋骨と脊柱の関係
脊柱可動性の評価

 

脊柱の生理的弯曲

ご存知のとおり、脊柱には弯曲があります。

頚椎は前弯、胸椎は後弯、腰椎は前弯ですね。

それぞれのカーブの頂点は第4頚椎、第7~8胸椎、第3腰椎になります。

これを生理的弯曲といい、脊柱全体で負荷を分散するうえで重要な構造的な特徴です。

加齢とともに椎間板の変性や椎間関節の変形が進行し、生理的弯曲が崩れていくのは自然なことですが、若い世代の方でも生理的弯曲が崩れている方が多くいます。

特に多い崩れ方が、胸椎後弯の頂点が通常の第7~8胸椎よりも上方になっているケースです。

いわゆるスウェイバック姿勢になり、骨盤が前方に偏位して上半身を後ろに倒すような形で姿勢を維持している方は、胸椎後弯のバランスが崩れやすくなります。

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スウェイバック姿勢
 

肋骨と脊柱の関係

肋骨は胸椎に付着します。

胸椎が伸展位になると肋骨も前方回旋し、いわゆる肋骨外旋位になります。

肋骨外旋位は、肋椎関節締まりの位置になりますので、胸椎の可動性は低下します。

そのため、胸椎本来の後弯を取り戻すことは脊柱全体の機能としても大切です。

 

さてさて、ここで思い出して頂きたいのが、肋骨外旋位だと横隔膜のZOAも低下するということです。

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   さぁ皆さん、これまでの胸郭の機能解剖①~③が繋がってきましたね!?

 

胸郭の機能解剖のおさらい

・横隔膜のZOAが大切

・肋骨外旋位だとZOAは低下する

・正常な胸椎の後弯がなくなると肋骨外旋位になりやすくなる

・肋骨外旋位は胸椎の可動性低下も招く

様々なエクササイズをするうえで、呼吸や脊柱の可動性は大切になります。

 

脊柱可動性の評価

脊柱可動性の評価方法の一例をご紹介します。

脊柱の評価においてのポイントというよりかは、どの部位の評価においても共通しますが、「抗重力or従重力」「自動運動or他動運動」「関与する関節の数」を変数として評価していくことが大切です。

脊柱で考えても、立位・四つ這い・臥位に近い肢位、によって「重力方向」や「関与する関節の数」が異なりますので、評価する対象も異なります。

 

立位

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屈曲
~チェックポイント~

①つま先を触れるか

②脊柱の曲線が均一か

③骨盤が後方へ移動しているか


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伸展
~チェックポイント~

①ASISがつま先を超えているか

②脊柱の曲線が均一か

③肩関節の屈曲角度が170°を維持できているか


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回旋
~チェックポイント~

①回旋側の肩が見えるか(写真だと右肩)

②胸郭と骨盤が同じくらい動いているか

③過度に膝関節を屈曲していないか

※屈曲・伸展・回旋ともに過剰な労力を要さないようにする

 

四つ這い

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屈曲


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伸展~屈曲・伸展のチェックポイント~

①脊柱の曲線が均一か

②肩甲帯は安定しているか(翼状肩甲、シュラッグの有無など)

 

上位胸椎の可動性

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1stポジションでの回旋
~チェックポイント~

①45度~50度回旋しているか

②側屈で代償していないか

 

下位胸椎の可動性

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パピーでの回旋
~チェックポイント

①30度回旋しているか

②側屈で代償していないか


上記のような評価を用いて、脊柱の可動性の制限因子を推測していくことも可能です。

例えば、

立位で屈曲に制限がある→四つ這いではどうか?

四つ這いならOKであれば、立位の姿勢制御に何か問題があるのか?

立位で回旋に制限がある→パピーではどうか?

パピーでOKであれば、上位胸椎や股関節に問題があるのか?


などなど、評価の一部をご紹介しましたが、変数を用いて制限因子の鑑別をしていく感じです。

 

加えて他動・自動で評価していくことで、構造的な問題なのかモーターコントロールの問題かを鑑別していけますね!

 

詳しく学びたい方は下記をご覧ください。

 

imok'sセミナー
それでは、最後におススメのピラティスリフォーマーエクササイズをご紹介します!

その名も「ヒップリフト/ピラティスリフォーマー」

詳しくは下記をご覧ください!

 

90−90ヒップリフト

カールアップ

カールアップ
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Contents [hide]

カールアップやり方
目的
エクササイズの理論的背景
よく見られる代償


カールアップ

こんにちは。

imok株式会社の古城です。

今回ご紹介するエクササイズは「カールアップ」です。

 

やり方

  1. リフォーマーに仰向けになります
  2. ショートループに手を通します
  3. 肩関節を伸展させながら上半身をキャリッジから浮かせます

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  目的

  • 脊柱のエロンゲーション及び屈曲
  • 上肢と脊柱の連動
  • 頚部のモスタビリティの向上


エクササイズの理論的背景

 頚部の安定化の為には、横隔膜と骨盤底の平行化→インナーユニットの活性→骨盤、胸郭の安定化→肩甲胸郭関節の安定化→舌骨及び頚椎の安定というように、頚部単独ではなく、コアや脊柱との連動が重要になります。
 
リフォーマーによるカールアップではショートループを介してスプリングによる軽い負荷が加わることで、肋骨を内旋させる腹斜筋や腹横筋、肩甲胸郭関節を安定させる前鋸筋が促通された状態で、胸椎、頚椎の屈曲を学習することができます。


よく見られる代償

  • 頚部のみの過度な屈曲

脊柱の延長線上に頭部が来ることが望ましいが、カールアップを行う際に頚部の屈曲が過剰になる場合があります。エロンゲーションを意識させて頭部の位置を整えるようにしましょう。 

  • チンアップ

日頃のデスクワークなのでフォワードヘッドが強い場合、胸鎖乳突筋が短縮し、過緊張を起こしていることが多く、カールアップをする際に顎が上がった状態でカールアップを行いやすいので、頚部のアライメントチェックを行いましょう。

チンアウトが強い場合は、ヘッドレストの高さを挙げて、頚部のアライメントが整うポジションで実施しましょう。

 

以上、「カールアップ」のご紹介でした。

それでは、次のエクササイズでお会いしましょう!